眠い
「えーとですねーへやのーわりふりをーしましょうー」
眠気を誘うようなスローテンポな声が丹澤の向かって行った階段付近から聞こえてきた。
「紫苑ちゃん仕切ってる……」
理雨流が驚きを表にして目を見開く。
「あのーわたるさんとーりうるさんもーきてもらえますー? 」
きっと紫苑の舌は一般の人の舌の半分程度しかない。
「うん! 」
理雨流が紫苑にやはり明るく返事をする。
「あ……あぁ」
理雨流にワンテンポ遅れて俺も同意を示す。
歩き始める理雨流の横について歩く……とは言っても人だかりとの距離は10m程しかないのだが。
「へやわりですー」
紫苑が念を押す。しかし、いつからこの娘はまとめ役になったのだろう。
「へやはーここにおいてのーいっかいではーじゅうはちへや。にかいではーにじゅうにへやありまーすー」
「俺達は全員で23人だから、大分部屋が余るよな」
「う〜ん確かにそうやな、逆に多いんやったら理雨流ちゃんと一緒の部屋で寝れたんやけど〜」
俺の発言に乗ってきたのは丹澤だ。また理雨流から叩かれたいのだろうか。
「何で私の名前知ってるの? 」
理雨流が当然の疑問を嫌々そうに口にする。
「愛の力や! 」
「…………」
周りに大勢人がいる中で理雨流のその問いに、ここまで大胆に答えられる丹澤は度胸があるというよりは単に馬鹿なのではないだろうか。空気が重量を増した今となっては口を開こうにも重くてかなわない…が例外はいるものであるわけで。
「な、なんやこの空気! わいかてな、こんな空気嫌いなんやで〜」
理雨流は冷徹な表情、犯罪者を見る目で丹澤を見ている、というか睨んでいるに近い。
『しかしなぁここに来て喋ってんのって俺と理雨流と紫苑、そしてノリノリ丹澤しかいなくないか? 』
「あのーはやくーきめましょーう」
紫苑は何故か早く部屋割りを決めたいようだ。
「紫苑、なんか焦ってるようだけど……どうかした? 」
俺は紫苑の大きな瞳を見ながら彼女に話しかける。
「うっ! ……ねむたいーんですよー。だーかーらはやくーきめたいなーってー」
『 そんな理由! 聞いてなんか損した気分がするけど、でもそんな事で音頭をとるとは中々侮れないな、紫苑! 』
「じゃーさっさと決めちゃいましょう! 私は渉と同じ部屋ね! 」
「……っえ! 」
突然の理雨流の大胆発言に俺は困惑してしまう。丹澤はびっくり仰天やで〜とか今にも言いそうな顔をしている。紫苑はいつもニコニコそれは今も変わらない。
「冗談だよージョーダン! あっでもどうしてもって言うならいいよ! 」
有り難いお言葉だがここは遠慮しなければいけないだろう。やっぱりコモンセンスが俺の夢を邪魔する。
「いや、あのそれはさ、なんかあれだから……うん! そうだ、俺は理雨流の隣の部屋ってことでいいかな? 」
我ながらテンパってしまう。まぁ仕方ないのだろうが。
「ふむふむ、良いでしょう」
理雨流が小さい顎を左手で触りながらわざとらしくそう言ってくれた。
何か勝手に自分の部屋とか決めてしまった気がするがいいのだろうか……まぁ場所はまだ決まっていない訳だが。
何にも喋ろうとしない者が多数のこの状況をどう紫苑は切り抜けるのか。上手くまとめてくれ、そう俺は思う。そしてこれ以上丹澤に異常に重い空気をつくらせないでくれと切に願う。




