第7話 アンネリーゼ、挑戦と出会い②
どうしよう……。
いやいや、落ち着け私。
見た目は子供、中身は大人なんだから、なんとか知恵を絞るんだ!
それに、使ったことはないけど私には結界魔法がある。
いざとなったら、結界を張ろう。
「いたぞ! ここだ!」
「……ん? 見た目が全然違うし、女じゃねぇか。どこみてんだ、このタコ!」
ならず者かと思ってたけど、少年を追いかけてきたのはそれなりに身なりがいい男のひとたち。
泥棒、じゃないっぽい?
でも、目つきになにか暗いものがあって、感じ悪そう。
「おい、嬢ちゃん! この辺で水色の髪の子供を見なかったか?」
「見てませんけど……どうしたんですか?」
大人っぽい対応を捨てて、私は目をうるうるにしてあどけない女の子を演じる。
こんなかわいい子、暴力はふるえまい!
「見てないんならいい。こんな紛らわしいとこに、子供一人で何やってんだ」
男のひとたちは、手にそれぞれ武器を持っていた。
ロングソードに、槍にロープ。物騒だよ……。
こんな武器で、あの男の子追っかけまわしてたの?
「エイムの森にうろつくガキなんて、あいつくらいかと思ったが……いないんなら、いくぞ」
「ああ、反対方向に回ってみるか」
私の質問には、答える気がないみたい。
別にいいけどね。
突然襲われることは避けられたし。
トコトコと、私は家に戻った。
アキネの花は置き去りだけど、後で拾いにいこう。
……新鮮じゃなくなるかもだけど。
オートロックの柵を越えて、はっとした。
しゃべる聖獣に、この子を会わせていいのかな?
魔物とまちがえられたり、しない?
不安になって、家の中に入らずに空間収納(生)を開ける。
「ぶはぁ、あいた!」
男の子が、転がり出てきた。
いきなり、閉ざされた空間にしまいこまれたら怖いよね……。
「ごめんね、追われてるって聞いたから、とっさに……」
「助かったよ、ありがとう。こんなスキル持ってるんだな、お前」
お、おまえ~?
あ、そうか。今の私は八歳児だ。
目の前の少年は、もう少し大きそうだから”おまえ”なのか。
「私、アンネリーゼ。初めまして。八歳よ」
「俺はフェル。十歳だ。冒険者をやってるんだ……Fランクだけど……」
「冒険者? 凄い!」
へへっとフェルは、鼻をこする。
十歳でもこの世界は、冒険者になれるんだなー。
私は、戦う力がないし……あるとしたら、商業ギルドとか生産ギルドかな? 将来は。
「アンネリーゼの、あのスキルはなんて言うんだ?」
「えっとね……」
空間収納(生)って変だよね……。
たぶん、エヴァリディアス様のオリジナルスキルって多分これだし……。
「あ! いいんだ。人に言いたくないスキルだってあるよな。悪ぃ」
「ううん、なんかマイナーなスキルだと思うんだけど、空間収納(生)っていうの」
フェルの気遣いが嬉しい。
この子は、優しい子だ。
思わず、私はスキル名を口にしてしまった。
「ナマ? 空間収納は大体誰でも持ってて、いきものは入れられねぇけど……」
「何故か、いきものしか入らないんだ……」
「そ、そうか……そういうスキルもあるんだな」
良かった、変に思われなかった!
どうやら、きっとこの世界は色々変わったスキルがあるんだな。
「しっかし、この辺に家なんてあったんだな……。行きに通ったときはなかった気がすんだけど」
「み、見落としたのかもよ~?」
もしかして、あの家ってエヴァリディアス様の力で見えなくしてた系かな~~~?
招かれないと見えないとか、よくある設定だよね。
「まあ、広い森だしな……。アンネリーゼはエイムの森で、一人で何しに来たんだ? この辺、魔物出るぞ」
「魔物……やっぱりでるんだ……。えっとね、アキネの花を拾いながらジャムの素材になる果物とかないかなって」
「じゃあ、オレ手伝うぜ! 助けてくれたし、あいつらも同じ場所にはいないだろうし」
「うん、反対側に行くって言ってた」
エイムの森かー。
そして魔物かー。
うーん、聞きたくなかった。
「フェルは、なにか武器持ってるの?」
「コレしかねぇけど……小さな魔物くらいは倒せるぞ」
フェルは、空間収納からショートソードを取り出す。
これが本来の空間収納だー!
「お金、全部使っちまったけど……その前は石で倒してたからな」
石!?
原始的だけど、何も武器がなかったらそれしかないよね。
「さっきのところまでは、魔物がいなかったけど……出たらフェルに頼っていい? あ、私も結界魔法は使えるから危ないときはそれでカバーする!」
「いいぞ! まだそこまで森の奥じゃないし、出たとしてもフェザーバードやレッドラットなら勝てる」
羽根鳥に、赤いネズミかぁ。
でも、異世界モンスターだし油断しないようにしないと。
こんなことなら、コハクに預けてたポーション、一個くらい持ってればよかったぁ。
びくびくしながら、フェルと一緒にアキネを落としたところまで戻る。
森は静かで、さっきの物騒な男の人の気配はない。
「あ、アキネの花が落ちてる」
「ホントだ。でも、アキネの花なんて、何に使うんだ? 薬草だろ。アンネリーゼの年じゃ、ギルドに納品できないし」
「あのね、錬金術が使えるから自分で魔力ポーションを作る気だったんだー」
「え、すげぇな! じゃあ、二年後には生産ギルドに登録か!」
「どこに所属するかは決まってないけど……戦闘スキルがないから、多分そうなるね」
アキネの花を拾いながら、フェルはナチュラルに自分の空間収納にしまってくれる。
本当は私もそれをやってみたかったな~。
いやいや、転生できただけでもありがたいんだもの。
エヴァリディアス様には感謝しなきゃ。文句をいうのは罰があたる。
「ジャムに出来る果物なぁ……ワイルドベリーとか、アグーレの実だよなぁ」
アグーレは知らないけど、ワイルドべり―はきっと分かる。
こまめに鑑定しながら、フェルの後ろをついてくぞ!
『アンネリーゼー! ボクを置いてなにやってるのーー!!』
背後から、コハクの声がして、肩にドスンと衝撃がくる。
ど、どうしよう……!
フェルになんて説明したらいいの……!?




