第4話 アンネリーゼの錬成魔法
食器を洗い終わると、私は部屋の反対側にある鍋に気が付いた。
キッチンとは別で、大鍋はどちらかというと魔女が使うような雰囲気……。
これ、なんだろう。
鑑定!
”錬金釜:錬金術で使用する。”
あ、これ、鍋じゃなくて釜なんだ……。
でも、魔女鍋に見える……。
そういえば、私には錬金術があったっけ……。
でも、何を錬成するのかな……?
「コハクー! 錬金術って、なにすればいいのかな?」
『錬金は錬金だよー』
くっ、この感覚派!
それで分かれば苦労しないよ。
もっとヒントがないかなぁ。
こちとら異世界ビギナーだよ。
『んーっと。すまほにレシピがあるはずだよー?』
「待って、見て見る」
スマホを開けると、ToÐoリストは全部グレーに変化していた。
達成したってことだね。
レシピか……この本のアプリかな?
ポーションの作り方に、マジックポーションの作り方……。
あ、カテゴリが薬品になってた。食品も見てみよ。
パン!? パスタ、うどん! コンソメ? 豆腐!? 醤油に味噌!?
それって料理じゃないの?
発酵とか、手がかかるものは時短できるってことかな……?
だいたい、異世界って和食に飢えた転生者が苦労して生み出すものじゃないの?
いいの? こんな気軽? に出来て。
「コハク、大豆さえあれば味噌や醤油が錬成できるみたい……」
『買ってもいいんじゃない? 日本人の使徒は何故か多いからね、和食はあるよー』
え、あるの? 和食……。
異世界じゃなくて、夢の世界すぎない?
『それより、アンネリーゼー。今日のご褒美を決めて~』
それよりって、それどころじゃないよ!
ポーション作ってみたい!
ザ・異世界って感じじゃない?
材料は……魔力水、月光草、カナル草――うん、分からん!
畑にいってみようかな。
鑑定魔法を使えば、何があるのか分かるよね。
「コハクー、先に畑に行こう?」
『アンネリーゼは元気いっぱいだね。いいよ、いこう』
外にでると、いつのまにか夕方になっていた。
大きな夕日に、ため息が出る。
外の風を感じながら、綺麗な夕焼けを見れるなんて、なんて贅沢。
走るコハクを追って、畑に行くと野菜畑と薬草畑がある。
とりあえず野菜は置いといて……薬草、薬草っと。
これが、月光草でこっちがカナル草。
鑑定魔法にも、少し慣れたかな。
『アンネリーゼはうっかり怪我しそうだから、確かにポーションがあったほうがいいかもねー』
「ちょっと、コハクさん。どういう意味?」
『だって、服に泥ついてるー』
はっ……そういえば、白のワンピースを着てたんだった。
薬草に興奮して、膝ついて畑に体を突っ込んでたよ……。
反省、反省……。
そういえば、さっき錬成レシピにも服があったっけ。
あとで、布地がないか探してみよう。
「あとで洗うからいいの! 薬草はとったし、家に戻ろう」
『目が離せないなぁ~アンネリーゼは』
子狐に心配される私って……。
でも、しばらくはこの健康な体で色々やらかしそう。
まえは、何もできなかったからね……。
家に戻ると、日差しが消えて家の中が暗く感じる。
そういえば、明かりをつけるものを見てないや。
『照明!』
コハクが唱えると、家がぱっと明るくなった。
小さな明るい球体が、上に浮かんでる。
これ、魔法だ!!
「コハク、魔法が使えるの!?」
『そりゃあ聖獣だもん。アンネリーゼだって、使えるでしょ、生活魔法』
そ、そういえばステータスで見たかも。
これが、生活魔法か……便利。
『火をつける、”発火”。明かりをつける、”照明”、飲み水や手洗いに、”流水”、汚れ落としに”浄化”が生活魔法だよ』
「じゃあ、さっきの泥の汚れも……?」
『そう、”浄化”で綺麗になるよ。体に使えば、体も綺麗になるし』
ええええ、便利すぎない?
歯磨きとか、お風呂とかなしで綺麗になるの?
でも、この家はお風呂があったような……。
『使徒のみんなは、お風呂が好きだからお風呂があるけど……普通の家庭にはないよ?』
コハクに思考を見抜かれた……。
でも、とりあえず錬成はやるよ!
浄化は最後にしよう。
「問題は魔力水か……」
『一番の基本だね! ”流水”で釜を満たして、その水に魔力を注ぐんだ』
でた、魔力!
けど、ポーションのレシピは見た感じどれも材料に魔力水って書いてある。
やるだけやってみよう!
「”流水!”」
手の先から、水がドバドバと流れだした。
怖い、タネのないマジックみたい……。
でも、思ったよりは疲れないね、生活魔法。
大きな釜が、私の水で埋まった。
私は、水に手をつっこまない程度で恐る恐る魔力を流す。
――これ、けっこう大変かも。
流水とは違って、疲労感がでてきた。
ぴたっと魔力が入らなくなって、鑑定もこの水を魔力水と認めてくれた。
透明な水が、今は青く光ってる。
「あとは、月光草、カナル草っと」
スマホのレシピを広げたまま、釜に素材を入れた。
レシピには、そのまま入れるって書いてあるし。
「――我が元に具現化せよ! 再構築」
釜に手をかざして、魔力を流す。
釜の中の魔力水は、水色から緑へと光りながら変化する。
初の錬金術ってけっこう疲れたな……。
”ポーション:ランクE。体の傷や疲労を軽く軽減する。美”
「び??」
空間収納(生)に続いて、謎の文字が……。
「コハク、鑑定の文章が、美で止まってるんだけど……」
『錬成も鑑定も、使わないとレベルが上がらないよ~。悪いことが書いてないんならいいんじゃない?』
この、もふもふ聖獣、実は適当では……?
だけど、他に頼りにできる者がいないからね!!
『アンネリーゼ、その目つき、なんかやだ……』
「なんのことかな~?」
さてと、このポーション。このままにしておくわけにはいかないよね。
釜の横には、何百という空のポーション瓶が並んでいるので私は、どんどん流し込む。
瓶といっても、試験管みたいな感じだけど、まあ飲み干すものだしね。
それに、やっぱりポーションと言ったら携帯できないとね!
「そうだ、空間収納!」
だんだん、魔法にも慣れてきた。
空間収納……出せた。けど。
歪んだ空間が、収納なのはわかる。
でも、ポーションが入らない!
すかすかっとして、ポーションがすり抜けてしまう。
えーー! どういうこと!?
問題は、やっぱり空間収納(生)の、生!?
私は、たくさんのポーションと共に途方にくれた。
難しいよっ、(生)!




