第3話 アンネリーゼの家
太陽の光で、広い家の中は明るい。
私は、家の中を探検することにした。
コハクは、私の後ろをくっついてくる。可愛い。
「広いねぇ……」
『狭いほうがいい?』
「ううん、そうじゃないけど」
ずっと病院の四人部屋に慣れちゃってたからね……。
一階は最後にするとして、まず階段をのぼる。
なんと、この家、三階だて!!
階段をさくさく登れることにうっとりしながら、三階にあがるとそこは屋根裏部屋になっていた。
見たことない文字が袋に書いてあるけど、”小麦粉”と読める。
これって、やっぱり異世界ファンタジーだよね。
他にも、じゃがいもや人参、たまねぎなんかもある。
基本は、物置きなのかな?
小さな窓もあって、外が見下ろせる。
正面からは気づかなかったけど、家の裏には畑が広がっていた。
そうか、食べ物は大事だもんね。
「じゃあ、二階に行こうー!」
『お~!!』
元気よく、下に降りる。
やっぱり、体が思い通りになるってサイコーだ。
視界は低くなったけど、快適さがたまらない。
これだ、私の求めてた自由は!
「二階は……寝る場所だね」
『ぼくのベッドもある~』
子供用のベッドに、コハクサイズのかご。
かごの中にある布を押すと、ふんわりしていた。
ベッドもなかなか快適そうだ。
意味もなくジャンプして乗ると、ゴツンと音がした。
……思ったより固かった。
まあ、現代日本と異世界を比べちゃいけないよね。
おでこと膝がまあまあ痛い。
「それにしても、もう一台ベッドがあるねえ」
『う~ん。予備とか~?』
コハクもエヴァリディアス様がやることを全部、知ってるわけじゃないのかな。
でも、二台のベッドを置いてもあまりある部屋。
これは、掃除が大変そうだ。
「じゃあ、一階に戻ろうか」
『リストのご飯食べないと~』
そういえば、ご飯は作るしかないよね。ある程度は、知ってるけどほとんど病院生活……。
グルメ漫画とかでしか知識がない。
これ……自分の料理スキルで餓死しないよ、ね……?
『アンネリーゼ、冷蔵庫があるよー』
「ほんと? って、冷蔵庫??」
異世界に冷蔵庫……ある、のか。
今まで読んできた中で……あったかな?
冷蔵庫を開けると、ちゃんとひやりとした風がくる。
中にはチーズやバター、トマトやレタスなんかが入ってる。
私にわかるものが多いから、食べ物は地球のもとそう変わらないのかな
。
キッチンは大人サイズで、私でも届くように台があった。
三口コンロに、オーブン。
小さな鍋も揃っていて、ひとまず困らなそう。
『アンネリーゼ、こっちこっち~』
コハクが発見したのは、浴室とトイレ。
トイレはよくてボットンかな……と思ったけど、きちんとした水洗式。
異世界……便利すぎじゃない?
「コハク、この世界の文明ってすごいんだね」
『アンネリーゼはエヴァリディアス様の使徒でしょ~? 他にも地球から色んな神が使徒として連れてきてるからね~、便利な魔導具は多いよ~』
「魔導具?」
「魔力で動く道具。大体、魔石が入ってるよ~」
魔石……覚えておこう。
魔導具は家電の代わりだね。
そうこうしていたら、私は全身が映る鏡を見つけた。
……これが、今の私。
ちょっと美少女すぎじゃないですか? びっくりしちゃう。
桃色の髪に、薄むらさきの瞳。
白いワンピースが、より異世界チックな外見が映える。
八歳児らしく、幼児体形だけどまぎれもなく美少女。
右を向いたり左を向いたり、しばらく私は鏡の前で遊んでいた。
『アンネリーゼ、ご飯食べないの~?』
コハクに突っ込まれて、はっとした。
危ない危ない、見慣れないこの顔もそのうち見慣れるでしょう。
コハクはダイニングテーブルの上に乗っていて、そこには料理があった。
よいしょ……。
子供用の椅子になんとか上ると、温かいスープにパン、湯気の出ているミートボールが置いてあった。
小さなメモがついていて”初回限定サービス”と書いてある。
コハクの方も、同じ料理だ。
聖獣でも、普通の人間のご飯でいいんだね。
「じゃあ、いただきます!」
『いただきま~す!』
何十年ぶりだろう。
流動食以外の食事!
スープは、野菜もお肉もたっぷりでうまみがたっぷり。
自分の歯で、シャキシャキした野菜を噛める喜びと言ったら!
固めのパンも、久しぶりで涙がでそう。
ああ、転生して良かった。
『アンネリーゼ、食べたら明日のご飯の準備もやらないと~』
「わかってるよー。今は喜びを噛み締めさせて~」
冷蔵庫には、調理されたものは入ってなかったしね……。
パンも小麦粉から作るのか……不安。
おいしいミートボールを味わう。
でも、頭はフル稼働だ。
リストにないこともやらなきゃダメだよね……。
ほぼ入院してたとはいえ、私は本来二十二歳!
自立しないとね。
今日がおいしいご飯の最後かもしれない……。
味わって食べていても終わりがくる、ご馳走様をしてコハクの分の食器も下げた。
「これ、洗剤かな……?」
『分からないものは、鑑定するといいよ~』
そうだった、私、魔法もってたんだ!
じっと、洗剤らしきものを見つめる。
……なにも起こらない。
「こ、コハクー? 魔法ってどうやって使うのー?」
『魔力を流すんだよー』
コハクは、テーブルの上で自分の手を優雅になめている。
聖獣さん、それじゃ説明になってないよー!
異世界初心者で、今日は一日目。
私、なにも分からないんだから。
「魔力って……どこにあるの……」
『今までと違って、力の流れがあるはずだよ~』
そんな、感覚論いわれても。
私は、そもそも健康体になったの初めてだし!
「ふう……」
深呼吸して、体の内側を意識する。
確かに、なんかこれかな? というものはあった。
意識をこらして――。
「鑑定!」
”ココノアの液体洗剤:泡が立ちにくい。”
説明が見えた!
自分ではやったことがないけど、ゲーム配信は見てるから、ゲームっぽい画面にはあんまり驚かない。
さすが、異世界。
初魔法、使えたよ!
よーし、どんどん使って体で覚えよう。
せっかく、健康な体になったんだからね!




