第2話 アンネリーゼとしてのスタート
『アンネリーゼ』
そう、新しい私の名前。
……を、さっきから呼ぶのは……。
『ボクだよ、アンネリーゼ。コハクだよ』
目の前の銀色のきつねから、声がする。
こつんと首をかしげて、私の顔を覗き込んでいるけど……。
「コハク……が、しゃべってるんだよね?」
異世界転生といえば! って感じだけど、まだ転生したてで頭がついてこない。
足ったり座ったりが、自在にできることが新鮮で嬉しくて、周りにまで気が回らないよ。
『そうだよ、ボクは聖獣だからアンネリーゼとおしゃべりできるの』
「すごい……触ってもいい?」
『いいよー!』
そうっと手を伸ばす。
ふわっふわの毛並みは簡単に顔が埋もれる。
もふもふだーー!
手をだすと、コハクはお手までしてくれた。
憧れの肉球を、嗅いだり押したり触ったり。
きもち・いい~~~~。
ずっとぶにぶにしていると、コハクから呆れたような感情が伝わってきた。
『アンネリーゼは、自分に関心がないの~?』
「な、ないわけじゃないよ!? ただ、コハクの魅力が凄すぎただけで……」
『ふふふ、そんなにボク魅力的~?』
こんな魅力的なもふもふに勝てるものなんてない。
ツヤサラふわふわ、お日様の匂いだったし!
『今のアンネリーゼは、八歳だよー?』
はっっ八歳!?
そういえば、コハクを触ってたときもなんか自分の手が小さいなぁとは思ったけど……。
ペタペタと自分の体を触る。
もともとない胸もさらにない。
髪の毛は、ショートカットとボブの間くらい。
しかもピンク色!
足も手も小さい。
そういえば、エヴァリディアス様が最初に八歳で――とか言ってた気がする。
八歳……。
小学二年生くらい……?
そんな子供でも……元の私よりは生きていけるよね!
だって、走ったり動いたりできるんだもの。
杏奈の時でも、小学校低学年までは弱弱しいながら通院で済んでいた。
中学からは入院生活まっさかさまで……。
私の知識は、アニメやドラマや小説なんかでしか知識がない。
あとは、背景が病院の毎日だ。
異世界転生したんだもの。
寿命は二年だけど、頑張って生活して伸ばすぞーー!!
『アンネリーゼ、そのすまほを開いて。最初のうちは、エヴァリディアス様がやることリストをくれるよ。ステータスも』
「コハク、スマホの充電ってどうなってるんだろう?」
『アンネリーゼの魔力で動くんだよぉ~』
コハクが、肉球をにぎにぎしながら教えてくれる。
ああ、あとでまたモフモフしよう。
スマホを持つと、杏奈の時代に使っていたものと外見はたいして変わらなかった。
チャットに、ToÐoリスト、家の画面のアプリ、本のマーク、ステータスと書かれたアプリなど。
見慣れないアプリが多いかな?
とりあえず、ToÐoリストを開く。
□ ToÐoリスト
①家の確認
②ご飯を食べる
③ステータスを確認する
「あんまり難しいこと書いてないね?」
『最初だからね! アンネリーゼが無理なく動けるリストなはずだよ~』
エヴァリディアス様、優しい!!
どうやら、難題で四苦八苦することはなさそう。
そのまま、私はステータスのアプリを押した。
体力:20
魔力:50
攻撃力:5
防御力:5
俊敏性:5
器用:20
幸運:100
寿命:2年
信仰:命の神エヴァリディアス
空間収納(生)、錬金術、生活魔法、身体強化、想像魔法、結界魔法、鑑定魔法
鑑定魔法は、ここではレアなのか定番なのかわからないけど、とりあえず便利だよね。
身体強化も、結界魔法も多分、想像してる通りなら分かると思う。
錬金術っていうのは、名前通りだよね……? 錬成して、色んなものを作るクラフトスキル。
生活魔法も、まあ読んだ漫画にあったし……。
分からないのは、空間魔法(生)と、想像魔法。
空間魔法はわかる。
収納とかアイテムボックス! みたいなのだよね。でも、(生)って?
想像魔法は……もしかして、想像したものが出来ちゃう感じ? 凄いスキル??
攻撃力、防御力、俊敏性が5っていうのは、弱弱しいけど……エヴァリディアス様は戦わなくっていいって言ったもんね?
幸運は100もあるんだし、あとは寿命を延ばせばいいだけ!
『アンネリーゼ、大丈夫そう~?』
「わかんないこともあるけど、多分使っていけばわかる、よね?」
ToÐoリストに戻ると、ステータス確認の欄が白文字からグレーに変わってる。
これは、達成するとグレーになるのかな。
「あとは……家の確認……家ってこの家?」
目の前に、赤い屋根に茶色と白のおしゃれなレンガな家が建っている。
家の周りは柵で囲まれていて、なにより目を引くほど大きい大樹が家より大きくそびえていた。
ここ……で、いいんだよね?
「コハク、この家でいいのかな?」
『ここだよ~! 世界樹の木が立ってるもんね』
世界樹? なんかさらっと出てきたけど、世界樹ってすごい木じゃないの??
家の前に生えてていいの、それ??
家の前にたつと、柵が自動で開いた。
私とコハクが入ると、自動で閉まる。
オートロック??
「お邪魔しま~す……」
木のドアを開けると、リン! と鈴の音が鳴った。
恐る恐る、足を踏み入れる。
今日から、ここが私たちの家だ。
ただいま、って言葉がすぐに馴染むといいな。




