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余命二年と宣告されたのでマイナースキルを授けられた私は聖獣と共に寿命を集めながらスローライフを楽しみます!  作者: 相木ふゆ彦
邪神の使徒、現る

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第34話 アンネリーゼと紫外線②

「紫外線というのは、太陽に含まれるもので……。予防しないで太陽の光を浴びると、日焼けしたり、しわやたるみなんかの、肌の老化が起きるんです。若いうちはいいんですが、何もしないとあとでシミになったり……」

 

 私のつたない説明に、バーバラさんが肌を抑える。

 

「太陽の光を浴びるだけで……!?」

「ちなみに、室内にいてもガラス越しなら紫外線に当たってるんですよ」

「そんな!」

 

 とどめだったようで、バーバラさんの体勢が崩れる。

 どこの世界も、やっぱり女性は美容が大事だね。

 

「でも、アンネリーゼのポーションを飲んだだけで、ロザリーさんはシミが消えてたじゃないか」

「そうだね、だからアンチエイジングポーションはもっと効き目があるはずなんですけど……」

 

 フェルは男の子でまだ十歳。

 肌もつるつるだし、バーバラさんの恐怖がいまいちわからないみたい。

 

 我がチームは最年長がランスロットさんだけど、二十歳くらいだし、見たところ肌トラブルとは無縁だ。

 男性でも、にきびなんかに悩む人もいるだろうけどランスロットさんには、まったく見当たらない。

 なので、ポーションを飲んでもメンバー内はいまいち恩恵が分からないのよね。

 

「アンチエイジングポーションも化粧水も、金貨1枚でも売れますわ! 売りましょう、フランク!」

「き、金貨1枚!? まあ、お貴族様にすりゃ問題ないんだろうが……それでも下流貴族にはちと高くないか?」

「バーバラさん落ち着いてください! アンチエイジングポーションはたまに飲めばいいわけですし、化粧水は逆に毎日使うものですから……」

「そ、そうね! アンチエイジングポーションを金貨2枚に……!」

 

 駄目だ、バーバラさんが紫外線情報から大混乱。

 ランスロットさんが、お茶のおかわりを入れて回ってなんとか場を鎮めようとしている。

 

 失敗したタルトをもう一個勧めてから、少し考える。

 私もフェルもコハクも貴族の懐具合は詳しくない。

 

 ランスロットさんと、あとは貴族とビジネスしているフランクさんとバーバラさんのほうが詳しいとは思うけど……。

 

「ランスロットさんは子爵の方でしょう? アンチエイジングポーションはたまに飲むものとして、毎日使う化粧水に金貨2枚って常識的な金額ですか?」

「うーん。子爵といっても、土地持ちか、息子が騎士になって収入がより多いか、娘が王宮で働いているか否かでまた、違ってきますからね。高額だと、夫人が欲しがっても、夫がお金を出さない場合もあります。なので、継続的に売るならば化粧水は手数料を抜いて大銀貨3枚ほど。アンチエイジングポーションは大銀貨7枚ほどでどうでしょう?」

 

 ランスロットさんの提案もかなり高いけど、子爵家のランスロットさんを信じるしかない。

 それに、アンチエイジングポーションは効果がどれくらいなのか実験出来ていないもんね。

 

 一週間なのか、数日なのか……。

 人によっては買い占めたいかたも多いかもしれない。

 

「美容品ってのは冒険者ギルドにはあまりなじみがないが、ランスロットさまがそういうならそれでいいんじゃないか?」

「確かに富裕層にはお手軽ですけど……もっとアンネリーゼさんが取っても問題ない気がしますけれど……」

「私は、充分いただいてます」

 

 だって、元手の素材はほとんど庭で取れるもの。しかも回復できるから幾らでも取れる。

 あとは、皮を剥く手間とかがあるくらいで……。

 

 それに、基礎的な生活さえできれば、私は商人になって儲けるために生まれたわけじゃないし。

 あくまでも、エヴァリディアス様の使徒としてお仕事するのがメインだ。

 

 これから旅が続くなら、確かにお金は必要だし。

 タルトやケーキや、お菓子を作るならば小麦粉をたくさん買わないといけない。

 

「じゃあ、それで支払いを――」

「ちょっとお待ちください。実は、初回の今回、俺に多めに売ってほしいんです」

 

 ランスロットさんが、切り出した。

 そういえば、王族に献上するから多めに欲しいって言ってたね。

 

「でも、商業ギルドとしても――」

 

 なにか言いかけたバーバラさんとフランクさんの耳元で、ランスロットさんが何事かをごしょごしょと囁く。

 美青年に囁かれて少し嬉しそうだったバーバラさんも、途中で顔色を変えた。

 

 ……何を言ったんだろう。

 

「どうぞ、どうぞ。ランスロットさまが好きなだけお買いくださいませ」

「こちらとしても、問題ありません」

 

 二人がきりっとしてしまったので、何を言ったか分からないけど。

 でも、王族に優先して渡したいと言われたら、庶民感覚の私としても、どーぞどーぞってなるよね。

 

「では、清算をします。一個大銀貨7枚のアンチエイジングポーションが100本。一個大銀貨3枚の化粧水が60個、一個大銅貨6枚のポーションが100本――大金貨8枚、金貨8枚、大銀貨6枚になります」

「大金貨……っ」

 

 金貨10枚で大金貨だから、金貨88枚以上を儲けたことになる。

 美容系、怖い……。

 

 私とフェルは、思わずお互いの手を握り合った。

 異世界にきてから無一文だった私が、金貨88枚……。

 金貨2枚のマジックバッグを目指してたのに、余裕で買えちゃうし……。

 

「では、俺がアンチエイジングポーション50本と、化粧水30個を買い取ります」

 

 私とフェルが、なんなら足をがくがくさせてるのに、ランスロットさんがさらっと発言した。

 これが貴族なのか……! 貴族パワー怖い。

 

 そういえば、化粧水にはタルトをつけるんだった。

 あまりの大金に意識を持っていかれる中、フェルをつつくと真っ青な顔で「なに?」と言う。

 

 直前までタルトを作っていたのに、大金パワーでしっかり者のフェルも忘れ去ったらしい。

 

「タ・ル・ト」

「あ、あぁ、おまけのアレな……」

 

 フェルが震える手でタルトのはいった瓶を出している間に、ランスロットさんの支払いが終わった。

 フランクさんが、残った商品を袋型のマジックバッグらしきものにアンチエイジングポーションたちをしまっていく。

 

 このお値段だと、店頭には出せないし劣化も怖いよね。

 あと、純粋にタルトが長持ちするのが助かる。

 

「そういえば、アンネリーゼはマジックバッグが買いたいんだよな? 色んな形があるぞ」

「え、ホントですか?」

『待ってよ、オークとオークジェネラルの解体と、ホーンピッグの買い取りもあるんだよー』

 

 フェルがいまだに、頭の上に”大金貨……?”という衝撃を受けているせいか、コハクが催促する。

 コハクとしてはオーク肉が目当てなのよね。

 

「では、私がマジックバッグの案内をしましょう。フランクは、引き続き買い取りを」

 

 バーバラさんが請け負ってくれて、席をたつ。

 手を繋いだままのフェルは、フェザーバードを置くと私についてきた。

 まあ、ランスロットさんがいれば大丈夫だよね?

 

「こちらがリュック型、こちらがポーチ型、これなんか可愛らしいじゃない?」

 

 おすすめされたのは、斜めかけの赤いショルダーバッグ。

 大人には小さいけど、八歳の私にはちょうどぴったり。

 薬草を摘んですぐいれられるし、お金の出し入れもできる。

 

「美の女神、フォロラディアの貴色だけど、エヴァリディアス様も赤みががってるしな。なによりアンネリーゼによく似合ってる」

 

 フェルはいつも私を褒めてくれるな。

 虚言看破のスキルがなかったら、孤児院でハーレムが出来てたかもしれない。

 

 でも、虚言看破のスキルで苦しめられたのが今のフェルだ。心の中とはいえ、勝手なことを言うのはダメだね。

 

「じゃあ、これにします」

「じゃあ、あとの清算も含めてあっちでお会計しましょう。似合うものがあってよかったわ」

 

 フランクさんたちの元に戻ると、オークの解体費用も払い、ホーンピッグなどの話も終わっていた。

 マジックバッグの支払いも済ませると、残金は大金貨8枚 、金貨8枚、大銀貨4枚 、銀貨4枚 、銅貨4枚。

 

 めちゃめちゃお金持ちである。

 買ったばかりのマジックバッグに手を入れると、マジックバッグが小さく光った。

 

「登録完了だな」

「これで私以外は出せない設定に……。マジックバッグも、空間収納と同じで中に入れたら時間は進まないんですよね?」

「勿論。時間が進むマジックバッグなんて聞いたことがないな」

 

 そうか。異世界ものによっては、空間収納は時間経過がなくて、マジックバッグはじゃっかん時間が進む設定が多いけど、ここではそうじゃないみたい。

 

 なら、痛むものとかもどんどん収納できるね。

 けど……。

 

「フェル、お金半分持たない?」

「オレのが怖いわ! そうだな……銀貨までなら持ってもいいぞ」         

「全然妥協してないよ、それ……」

 

 大金貨って日本円でいくらになるんだろ……。

 とりあえず子供が持ち歩く値段じゃないよね。

 

 でも、この半分以上の値段を実際払ったのはランスロットさんなわけで。

 何食わぬ顔をしてるけど、こんな大金持ち歩いてたんだ……。

 

「ところで、フェル。アンネリーゼちゃん。コハクさま。二日ほど留守にしますが、旅に出るのをすこーし待っていただけませんか?」

『いいけど、二日だよ? あんまり離れると邪神の使徒の気配が薄くなるからね』

「わかりました。その前に必ず戻ってきます」

 

 コハクと約束して、ランスロットさんは先に出て行ってしまった。

 これから王族と会う約束を取り付けるのかな?

 

「旅かぁ、寂しくなるなあ」

 

 フランクさんが呟いたのは、きっとほとんどフェルに向けてだと思う。

 

「邪神の使徒の騒ぎが落ち着いたら、また寄りますね!」

「待っているよ」

「私も、またお会いしたいです」

 

 少し早い挨拶をしていると、扉がノックされてオークの解体が済んだと告げられた。

 大きな魔石3個と、たくさんのお肉を回収した。

 けど、オーク肉って……冷蔵庫で見たお肉とかなり似てるなぁ。

 

「フェル、オーク肉って生姜焼きのときのお肉に似てない?」

「だって、魔導冷蔵庫の肉だってオーク肉だろ? 同じだよ」

 

 えーーー!!

 私もうオーク食べてた!?

 あとからの衝撃……でも、今日一番の大金貨ほどではない、かな?

 

「じゃあ、明日もまた来ますね。何が欲しいですか?」

「やはりポーションだな。美肌の効果の噂が、もうあちこちに流れてるからこの先もっと売れるだろうから。あとはクッキーが大人気でとっくに売れ切れてる」

 

 匂い消しポーションとかはいいのかな……?

 でも、あれも美肌効果ついてるし正規のお値段よりきっと高くなっちゃうんだろうね……。

 

「分かりました! では、また明日に来ますね」

 

 オーク肉に浮かれるコハクが、るんるんと外にでる。

 

「そうだ、忘れてた。フェル、薬師の店にいきたいなー。化粧水をつめる道具がないか、見に行きたい」

 

「じゃあ行こう! マジックバッグも買えたし、必要な分は買い足そうぜ」

 

 いざ、お金持ちになってからのお買い物だー!

バーバラさんは、既にポーションを飲んでいます。


次回、最終回です。

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― 新着の感想 ―
え~次最終回って!冒険の旅は?ランスロットはまだ謎のままだよ。邪神の使徒は?
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