表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
余命二年と宣告されたのでマイナースキルを授けられた私は聖獣と共に寿命を集めながらスローライフを楽しみます!  作者: 相木ふゆ彦
邪神の使徒、現る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/35

第32話 アンネリーゼとフルーツケーキ

 小麦粉に、砂糖に、卵に……。

 アンチエイジングポーションと化粧水を作ったので、私は錬金窯に材料を入れていく。

 

 イメージはバッチリ。

 お姉ちゃんが何回ケーキを作っていたことか。

 

 今回は、異世界素材としてシャムの実に、パニーカの花を入れる。これでばっちりバニラの匂いがするはず。

 ただ一つ問題なのは、たぶんケーキは錬金窯の上に出来てしまう。

 

 どーしたら解決するだろう。

 あれこれ悩んだ末に、私はランスロットさんに錬成で光った瞬間にお皿をスライドしてくれるように頼んだ。

 

 フェルもやると言ってくれたけど、私と同じく台座にのっている状態だと危ないと思う。

 コハクはご機嫌で、もうテーブルの前で待機だ。

 うまくいくといいな……。

 

「ランスロットがそんな機敏なコト出来ンのかぁー?」

「失礼な。ケーキくらいは耐えられるよ」

 

 言い合ってる二人は、相変わらず仲がいい。

 材料を全て入れ終えて、あとは私のイメージだけ。

 

 一応、エヴァリディアス様のスポンジケーキのレシピは参考にしてるけど。

 ぐちゃぐちゃになって出てこないよね?

 めいいっぱい想像しながら、私は魔力を流した。

 

「――我が元に具現化せよ! 再構築リコンストラクト

 

 赤と白のコントラストが綺麗なフルーツケーキ。

 生クリームが綺麗にトッピングされていて、甘くてみずみずしいケーキになーれ!

 いつもの錬成の光が光って、ランスロットさんがお皿をかぶせる。

 

「おっと……!」

「アブね!」

 

 ランスロットさんがお皿にどっさりと乗った大きなケーキに、よろめく。

 フェルが台座から飛び降りて、そんなランスロットさんを支えた。

 10号以上はあるケーキがいきなりお皿に出現したら、体のバランスは崩れると思う。

 

「すげぇ、豪華なケーキ!」

「王宮でもめったに見たことがないんじゃないですか?」

 

 ケーキは私のイメージ通りに出来た。

 見た目は完璧。

 

 あとは味だけ……!

 フェルが底を支えるようにして、ケーキは無事にテーブルに乗った。

 

 私は紅茶を淹れて配ったけど、誰も砂糖を入れない。

 フェルは多分、お茶に砂糖なんて贅沢だと思ってるだろうしランスロットさんは無糖派なのかな。

 

 でも、ケーキが予想通りにできていれば、ストレートティーでいいのかもしれない。

 ケーキをカットして、どきどきしながら配る。

 コハク以外は、食の神のテティスさまへのお祈りをして、ケーキにフォークを入れる。

 

「……なんだこれ」

 

 生地から香る微かなバニラ。弾ける苺とシャムの実の芳香と、口の中の感触。

 生クリームも、甘すぎずもったりせず、スポンジと絶妙のマッチしてる。

 

 紅茶を一口のむと、またケーキの味が深くなる。

 みんなが無言で、ケーキに集中した。

 

「「おかわり!」」

 

 コハクとフェルが口の周りに生クリームをつけて、ケーキをカットにかかる。

 食べたことはないけど、高級菓子店で出てきそうな味になった。

 これなら、タルトもいい感じでは……?

 

「ランスロットさん、今回の化粧水を購入した方にこのケーキをタルトにしたものを付けてもいいですか?」

「いいと思いますが……お菓子単体でも充分売れますよ?」

「ランスロット、食べないとこの旨さはわかんねーよ。最初はおまけで、リピート客には売ればいいんじゃねーか?」

 

 もりもりと新しくよそったケーキを食べながら、フェルが鋭いツッコミをいれた。

 そうなんだよね。

 

 見た目がおいしそうでも、作り手が使徒といえど、いきなり高値のケーキは買わないと思う。

 化粧水を作るうえで、シャムの実の皮はたくさん必要になる。

 

 魔力ポーションも、はちみつとゆずとオレンジが混ざった味のアグーレの皮が必要となる。

 と、なるとこの三人と一匹――しかも二人は11歳以下――となると、いくら空間収納がっても消費できない。

 

 シャムの実とアグーレのタルトでもいいし、アグーレと苺のタルトでもいい。

 なんなら、苺もシャムもアグーレも全のっけとか。

 三種類以上のパターンは出来るから、お客さんもすぐには飽きないと思う。

 

「まずは食べてみろ、ですか……確かにいいかもしれませんね」

「ランスロット、アンチエイジングポーションと化粧水っていくらになりそうなんだ?」

「ん? そうですね……。アンチエイジングポーションは1本銀貨5枚以上でしょうか……。化粧水は大量生産に向かないこともあるし……大銀貨1枚でしょうか?」

 

 ええ……そんなに?

 それじゃ、目標の金貨2枚のマジックバッグが2個くらい買えちゃうのでは……?

 

「そうか……」

 

 コハクが、銀の毛並みの耳をぴくりとさせた。

 

『この家のすぐ近くにワイバーンの気配がある! 竜騎士かな』

「なんと。多分、俺の知り合いでしょう。ちょっと会いにいってきます」

 

 ランスロットさんは、そそくさと席を立った。

 ランスロットさんの知り合いで、竜騎士の方は貴族の方かな?

 騎士の身分がよくわからない。

 

「アンネリーゼ、タルトっていうのは、これとはまた違うお菓子なのか?」

「材料はかなり似てるんだけど、底が小さくて食べられるんだよ。アグーレと苺とか、シャムとアグーレとか、シャムと苺とか、色んな味のパターンにしよっかなって」

「ふうん……」

 

 なんとなく、ランスロットさんからアンチエイジングポーションの値段を聞いてからフェルの元気がない気がする。

 お代わり無限ループに入ったコハクは、ワイバーンの気配の正体が分かるとまたおかわりに戻っていった。

 

「フェル、ケーキ気に入った?」

「すんげーうまかった。アンネリーゼは天才だと思う」

 

 藍色の瞳が、私を見つめる。

 嘘をきらうフェルの、真剣な気持ちがまっすぐ伝わってくる。

 

「タルトも食べてみる? もうお腹いっぱい?」

「まだまだ食える!」

 

 ランスロットさんがまだ戻ってこないけど、タルトはクッキー入れ用の瓶生成魔導具でなんとかなりそう。

 それとも、お貴族様向きなら、別の入れ物がいいかな……?

 

 錬金窯に材料を入れ、コハクの空間収納からカスタードを取り、まだ山のようにあるシャムと苺を入れた。

 錬成すると、タルトの生地はしっかりしていたし、カスタードもしっかり敷かれていたけど……。

 

 なんていうか、フルーツが均一すぎて逆に見栄えが悪い。

 杏奈時代にインスタでみたような、美しい盛り付けとはなんか違う。

 

「うーん……どうしよう」

「これがどっか悪いのか?」

 

 お試しだったから作ったのは10個だったからいいけど、大量に作ってなくてよかった。

 フェルはタルト生地が気に入ったみたいで、さっそく一個食べ切った。

 

「うん、なんていうか、こんな感じにね? トッピングのバランスなんだけど……」

 

 お皿にフルーツを重ねてみたけど、下にカスタードを敷いていないので一瞬で崩れてしまった。

 それでもフェルは、たったそれだけで言いたいことが分かったらしい。

 

「アンネリーゼ、タルトだけ作れるよな?」

「うん、勿論」

「オレがトッピングしてみる」

「そっか、そこから手動でもいいんだ! やってみよー」

 

 今度はタルト生地だけたくさん錬成して……。

 出来たタルトに、フェルとカスタードを塗って……いったけど。

 

「……アンネリーゼも、さすがに完璧じゃないか」

 

 フェルが苦笑いする、私のクオリティ。

 イメージはしっかりしてるんだよ!

 

 でも、手がついてこない。

 お姉ちゃんが作業してるのは、何度も見てるのに……。

 

 タルトからはみ出るカスタードは、どう頑張ってもガタガタしてる。

 フェルのほうは、職人のように均一ではみでてもいない。

 同じ初心者のはずなのになぁ。

 

「よし、このままトッピングするぞ」

 

 私はお役御免になり、タルト生地作りオンリー担当になった。

 フェルはどの組み合わせも、自由自在にカスタマイズしながら盛り付ける。

 地下デパのショーウインドウにあっても、違和感がないタルトが完成していく。

 

「もうタルトのトッピングはフェルの担当だね」

「へへっ。……よかった」

 

 フェルの言葉は、振り返るほど重い。

 手にはけを持ったまま、フェルは複雑な表情で笑った。

 

「なんかさ、マジックバッグが手に入ったらオレの空間収納は必要ないし……アンネリーゼに寄生してるみたいな、なんか無力というか、無意味っていうか……役に立てない気がしちまったんだ。でも、こうやって役にたってるよな、オレ」

「フェルのバカ――そんなこと、気にしなくていいのに……」

 

 とっさに、涙がこぼれた。

 フェルの感情は、杏奈の私がよく知っている。

 

 病気で入院するだけの私。手間とお金がかかるだけの私。生きてるだけで、家族に負担をかけ続ける私。

 何回も、その感情に飲み込まれた。

 

 自分がいてもいいのか、こんなに迷惑をかけていいのか。

 邪魔なのではないか。

 不安で、怖くて、口にできなかったその感情。

 

「いいんだよ。そんなこと二度と考えちゃダメだよ。フェルはもう私の家族なんだから! 野菜とってきたり、狩りにいったり、料理手伝ってくれたり、既に充分助かってるし、家族はそこに価値を求めなくていいんだよ!」

 

 そうじゃなきゃ、杏奈はなんだったっていうの。

 いらないお荷物? 邪魔な死にかけ?

 

 そうじゃない。家族は、きっとそんなふうに思ってなかったはず。

 私は、フェルに価値があるからいてほしいんじゃない。

 

 フェルだから、いてほしい。

 そこに、損とか得とかいう感情はない。

 

「うん……ありがとうな、アンネリーゼ」

 

 ぽたりと、私のピンクの髪に涙が散る。

 私を抱きしめたフェルは、顔を見られたくないんだろう。

 カスタードとバニラの匂いに囲まれて、私はフェルを抱きしめ返した。

 

 もう、孤独が戻ってきませんように。

出てきていないだけで、実はこれだけの神がいます。

春の神、ストルラディー  

夏の神、ガネンダン

秋の神、キルケルネー

冬の神、ダンエル=ノイ

雪の神、

土の女神。ヴェルデア

食の神、テティス

収穫の女神、オーリオン

空の神ティル=ナ=ノア

芸術の神、ミュリオス

月の女神、アニマド

風の神、エアリス

川の女神リフレア

海の女神、アドヴァイン

泉の女神、エラールン

氷の女神、ツェーリア

水の女神、フロリネ 

山の神、ディグダール

情熱の女神、ハーディネイヤ

火の神、ファームドラ

星の女神、キューシュリ

木の神、バンドルド

命の神、エヴァリディアス

太陽の神ディヴァリオン

石の神、デスティリ

闇の神、ノクス・ザヴィエラ(邪神)

商売の女神、アビリーネ

導きの神、シャドリエル

鍛冶の神、シャテリーヤ

武神の神、グラディウス

花の女神、フローロ=ル

恋の神、ライネア

美の女神、フォロラディア

魔力の神、ルミナス

知恵の女神、セレスティア

成長の神、アグニーッシュ

狩猟の神、ウェイディル=アノー

契約の女神、イアールテ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
美味しそうなケーキとタルトが出来ました。私もお茶の時間に呼んで欲しかったなぁ。それにしても神様っていっぱいいるんですね。覚えられそうにないけど
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ