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余命二年と宣告されたのでマイナースキルを授けられた私は聖獣と共に寿命を集めながらスローライフを楽しみます!  作者: 相木ふゆ彦
邪神の使徒、現る

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第28話 アンネリーゼの使徒デビュー

 森の小道を歩きながら、私はローブをしっかり着たフェルを見た。

 

 昨日、フェルは何度もこの道をいったりきたりしている。

 疲れてないのかな。

 

「フェルは、疲れてない?」

「よく寝たし、問題ないぜ。アンネリーゼは?」

 

 私も、疲労はそこまで残っていない。

 ポーション140本も作って、あれだけ動いたにも関わらず元気な今の体は、ほんとに嬉しい。

 

「私も、よく寝たから元気!」

 

 世界樹の葉入り魔力ポーションは凄くて、今も使えばすぐ回復してくれる。

 

「良かった、そのうち身体強化魔法の練習もしような」

「そうだね、使えたら便利だもんね」

「一番便利なのは、アンネリーゼのあの張り付く結界だな。あれ、無敵じゃん――なんだよ、ランスロット」

「いや別に? 楽しそうだなあと思って」

 

 なんだか含みのある言い方だ。

 フェルも藍色の瞳を鋭くする。

 

「コハクさま、なんかこいつに言ってくれ」

『え~なにを~?』

 

 使徒解禁ということで、今回はコハクも一緒だ。

 街についたら、フェルは少し離れた距離で見守るらしい。

 

「しかし、フェルはなんでそんなに姿を隠してるんだい?」

「ランスロットがそれを言うか。前に盗人の使用人とかをオレが見抜いたのを知って、オレを襲ってくる連中がいるんだ」

「それは申し訳ないね……。オンディーヌ子爵家とディレクトリ侯爵家のことは、こっちでなんとか手を打とう。今日は俺の横で堂々としていればいい」

 

 ランスロットさまは、空間収納から何かの魔導具みたいな道具を出した。

 オンディーヌ子爵……ディレクトリ侯爵?

 そこが、フェルが使用人の嘘を見破った家?

 

 どうりで追っ手の身なりがいいわけだね。

 でも、侯爵家の問題を子爵家の四男のランスロットさまがどうにか出来るのかな……?

 

「アンネリーゼちゃんがきたよ!」

 

 大通りにでた瞬間、ロザリーさんの大声がはじける。

 そのとたん、通りに凄い歓声が響いた。

 

 熱い熱狂の声に、耳元がぐわんと鳴った。

 な、なに……?

 

「アンネリーゼちゃん、ありがとう!」

「アンネリーゼの嬢ちゃん、助かったぞ、ありがとう!」

「助けてくれてありがとう!」

 

 右を見ても左を見ても、たくさんの人が手を振ってる。

 時々、ランスありがとう、とかロットもありがとうという言葉も聞こえるけど、ロットって誰?

 

 って、フェルのこと!?

 偽名が、ランス+ロット? なんだか、兄弟みたいでおかしい。

 

 せっかくコハクもついてきたけど、熱狂のうずと位置がランスロットさまに被っていて、周囲のひとたちには見えてないみたい。

 冒険者ギルドまでの道を、私たちは凱旋した王様みたいに見送られてギルドに入った。

 

「こちらが、コールドポーションで皆を治し、栄養満腹ポーションで討伐のサポートをなさったアンネリーゼさまです。諸事情で名乗られませんでしたが、アンネリーゼ様は命の神のエヴァリディアス様の使徒さまです。みな、エヴァリディアス様に祈りましょう」

 

 冒険者ギルドはいつにもまして人がいっぱいだった。

 ごちゃごちゃしないようにと、ランスロットさまが華麗に一言で紹介してくれる。

 

 フランクさん以外のひとたちは、どよめいたけど誰も跪いたりしなかった。良かった。

 ギルド一体が「偉大なる命の神のエヴァリディアス様よ。あなたの御力に感謝を。あなたの御恵みに感謝を。

その御加護が我らと共にあらんことを」と一斉に唱える。

 

 エヴァリディアスさま、届いたかな?

 私、使徒の仕事できたよね?

 

「こんにちは、初めましての方も多いと思いますが、命の神のエヴァリディアス様の使徒のアンネリーゼです。どうぞ、ただアンネリーゼと呼んでください。こっちが聖獣のコハクです。コハクもいっぱい助けてくれました」

 

「町長のオクタムといいます。アンネリーゼさん、聖獣さま、この度はソレビの街を救っていただきありがとうございました。冒険者ギルド、商業ギルド、生産ギルドを代表して挨拶させていただきます」

 

 フランクさんと、その隣の上品なマダムっぽい方、髭をたくわえた大柄なおじさんが頭を下げる。

 特にフランクさんは申し訳なさそうな顔をしている。

 

 もしかして、あの憤怒状態で言ったこと気にしてるのかな。

 気にしてないよ~悪いのは邪神の使徒だよ~!

 そんな念をこめて笑い返すと、少しほっとした表情になった。

 

「アンネリーゼちゃん、僕たちはフェニックスの羽という冒険者パーティーだ。このたびの魔物の討伐に、大量の匂い消しポーションと栄養満腹ポーションをどうもありがとう。今朝、討伐隊は解散したところだが、空腹を解決してくれたこと、特に感謝している。しかも、匂い消しポーションを飲んだもの、栄養満腹ポーションを飲んだ者は男女含めて全員が五歳以上若返ったように肌がきれいになった。あれもあなたのお陰かな?」

 

 そうだった、基本私が作るポーションについてくる”美”……。

 そんなに効果がでたんだ。

 

「実は私の末のいとこのロザリーが、あなたのポーションでシミも消えてたいそう綺麗になっていました。ロザリーも、あなたのお陰だと」

 

 ロザリーさんのいとこ!

 そういえば、フェルがなにかの間に話してくれたっけ。ロザリーさんが喜んでたって。

 

「綺麗になれるポーションの噂も広がっています。町長として、どこのギルドでもいい。アンネリーゼさんのポーションをたくさん買い取りたいのです。それに、100本以上のコールドポーションのお金をお支払いせねば」

「アンネリーゼはマジックバッグを欲していました。冒険者ギルドとしては、この騒動のお礼としてマジックバッグをお渡ししたいと思っています」

 

 オクタムさんとフランクさんに言われて、私は困ってしまった。

 マジックバッグは確かに欲しい。

 でも、今回って使徒のお仕事をしただけだよね?

 

「あの……出来れば、マジックバッグは自力で買いたいんです。お気持ちは嬉しいんですけど……コールドポーションで、たくさんお金が溜まればいいなーって思ってます」

『それに、アンネリーゼはずっとここにはいられないよ。闇の使徒がまた悪いことをしたら解決しなきゃいけないんだ。ずっとここでポーションを作ってるわけにはいかないよ』

 

 コハクの言葉に、冒険者ギルドの中は少しざわざわした。

 私がずっとここに居ると思ってガッカリした人もいたみたい。

 

「ポーションであれば、他の支部のギルドでも空間転移の魔導具でこちら宛てに送ってもらえばすむじゃないですか。オクタム町長と私の署名入りの手紙を預ければ済むことです。アンネリーゼが……良かったらですが」

 

 空間転移? さすが異世界、そんなものもあるんだ。

 ランスロットさまがかがんで、そっと耳打ちしてくれる。

 

「空間魔法の使い手が作れる魔導具の一つでしてね。普通はギルドの間で情報を送るのに使うけど、ポーション瓶くらいなら一緒に送れるのです」

 

 ふんふん、なるほど。

 そしたら、他の街に移動してもギルドに申し込めばこのソレビの街にもポーションは送れるんだ。

 

「マジックバッグはアンネリーゼが自分で買うって言ってるけど、コールドポーション136本はいくら払ってくれるんだ?」

 

 フェルが、ローブを脱いだまま前に出る。

 ランスロットさまがなんとかしてくれるって言ってたけど、望むなら私は念押しでこのことを頼みたい。

 

「私が欲しいのは、フェルの安全です! フェルを追いかけまわす人たちをやめさせてほしいです」

「ああ」

 

 私の言葉が即座に分かったのはフランクさんだった。

 他のギルドの人たちは、事情を知らない。

 

「俺のほうからも止めるが、フランクも顔は知っているだろう。いっそのこと、冒険者ギルドで見張りながら、働かせてやってはどうかな」

「そうしましょう。腕っぷしなら負けません」

 

 街から追い出されたりしたら、さらについてきそうだけど、フランクさんが見張ってくれるなら安心だね。

 これで、フェルも顔を隠して歩かないで済む。

 

「コールドポーションなのですが……1本銀貨5枚でどうでしょう?」

 

 オクタム町長が、おそるおそる発言した。

 銀貨5枚!? 高すぎるよ!!

 

「いくらなんでも高すぎますよ! いつものように大銅貨1枚とかでいいです」

「しかし、あんな大量の品を短期間で用意してくださったわけですし……」

「どうだろう、銀貨1枚で双方手を打たないかな?」

 

 ランスロットさまが口を挟んでくれたけど、それも高すぎるよ……。

 

「アンネリーゼさま、どれだけ魔力が豊富な薬師でも、あの量をすぐに用意するのは不可能です。そんな顔をしないで受け取ってやってください」

 

 たとえば杏奈の時代で……。私がちょっと特別な薬が作れるとして……。

 インフルエンザみたいなものが大流行して、一日中作り続けたとすると……。

 

「ご飯をなかなか食べられない事態ってよっぽどだぜ? あとは、オレやランス……の働きも考慮してくれなきゃ」

 

 フェルに言われて気が付いた。

 そうか。作ったのは私だけど、搬入や配布は二人のお手柄だし、コハクだってたくさん働いた。

 そう思うと、銀貨1枚はそんなに安くないのかも?

 

「フェルたちだけ特別に別料金で……」

「ちょっとまて、そしたら今までの食費とかカレーや牛乳のお金を、アンネリーゼがおごったってことか?」

 

 あああ、確かにそうなっちゃう……。

 

「オレたち相棒だろ。財布は一緒で構わねえよ」

「そしたら、フェルの欲しいものもあとで買いにいかないとね?」

「オレはアンネリーゼの横にいるだけで、充分贅沢してるさ」

 

 ランスロットさまも、澄ました顔をしている。

 貴族のランスロットさまなら、お金はたぶん困ってないよねえ?

 

「俺なら、アンネリーゼさまの秘密のお菓子で手を打ちますよ?」

 

 安上がりだ……。

 いいのかな、それで……。

 

「で、では1本銀貨1枚として、コールドポーション136本のお金として……金貨1枚、大銀貨3枚、銀貨6枚になります」

 

 とうとう金貨が出てきちゃった。

 残金と合わせると――金貨1枚 、 大銀貨6枚 、 銀貨3枚、 大銅貨9枚 、 銅貨9枚ってこと?

 これは、金貨2枚のマジックバッグが見えてきたよ。

 

「それに、アンネリーゼさんのポーションをもっと高く買い取りたいのです。ただのポーションならいざ知らず、飲めば美肌になれるとあっては、この先貴族からもたくさん買い取りがあります」

 

 むむむむ。

 貴族用に高くしちゃったら、せっかく喜んでくれたロザリーさんたちはどうなるの?

 

 露店商人は買えない品ってなるのは悲しい。

 確かに、でも過去大人だった私としては美肌を求める気持ちはわかる。

 単価をあげないで、でも貴族の人も庶民の人も手に入るもの――あっ!

 

「アンチエイジングポーションというものがあります。普通のポーションより美肌になるはずです。それに化粧水も作れます。一般の人はポーションを。貴族の方にはアンチエイジングポーションを高めに売ればいいと思います」

 

 区別化すれば、ロザリーさんたちはポーションを普通の値段で買えるはず。

 あとは私が作りまくれば大丈夫!

 

「なんと! それは最上級薬師でもなかなか作れないものを……!それでも、ポーションも、元の値段よりは値上げさせてくださいね?」

「はい……」

 

 普通の低級ポーションと、美肌効果のあるポーションが同じ値段にするわけにはいかないよね。

 さすがにそれは分かる。

 それに、中には美肌はいらないって人もいるだろうしね。

 

 色んな話をつけて、冒険者ギルドを出るとそこには荷物の山が出来ていた。

 

「街のみんなが、アンネリーゼへと感謝のしるしに置いていったものですね。アンネリーゼ、フェル、あのときはおかしかったとはいえ、本当に済まなかった」

 

 フランクさんが謝る。

 いくらもういいよーとリアクションしても、直接謝りたい気持ちがあるのがやっぱりフランクさんだな。

 

「平気ですよ。本気にしてません」

「オレも、もう気にしてねーよ。……アンネリーゼ、これ、味噌だ! 醤油もある!」

 

 フェルはもう気にしてないみたい。

 フランクさんが邪神の使徒のポーションでおかしくなったときは、少し傷ついて見えたけど。

 フェルってほんとに大人だな。

 

「フェルと俺で回収しましょう。帰って、少しのんびりしませんか?」

 

 如才なくランスロットさまに言われたけど、そういえば今日のエヴァリディアス様のToÐoリストまだ確認してない!?

 こうして、私たちは災難の通り過ぎた街から森へ戻ることにした。

 

 せわしないけど、これも私が欲しかった忙しさ。

 

 さあ、今日の課題はなにかな?

これでフェルの追っ手問題は解決しました。

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― 新着の感想 ―
フェルがこれで逃げまわらなくても良くなったのは何よりよかったぁ。美肌効果のあるポーション、私にも作ってくれないかなぁ
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