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余命二年と宣告されたのでマイナースキルを授けられた私は聖獣と共に寿命を集めながらスローライフを楽しみます!  作者: 相木ふゆ彦
第一章 新しい命

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第15話 アンネリーゼの使命

 お留守番をくらった聖獣さまは、椅子の上でぐーぐー寝ていた。

 

 まさか、ずっと寝てないよね……?

 私がつつくと、もふもふの子狐は大きなあくびをした。

 

『やっと帰ってきた~。ボクは一階も全部浄化して綺麗にしたし、薬草畑も拡張してきたし、充実した時間だったよ~』

 

 すごい働いてた!!

 危ない危ない、ずっと寝てたの? って聞いちゃうとこだったよ。

 

「こっちも、色々売れて色々買ったよー」

『はやくお昼にして~』

「すぐに野菜とってくるよ」

 

 フェルは、帰ってきたばかりなのにすぐに外に出て行った。

 私はまだ少し、人ごみで疲れてる。

 

『アンネリーゼ、疲れてるの? どうせならポーション飲んでみたら?』

「そっか、疲労回復だもんね」

 

 確かに、コハクのいう通りだ。

 そもそも、売りに出すまえに自分が飲むべきだったんじゃ……!

 

 鑑定を信じて出したけど、謎の”美”はついてるし、なるべく毎日のもう。

 まあ、そもそも私の力の元はエヴァリディアス様だから変なことはないと思うんだけどね……。

 

 テーブルに、フェルがお金と残ったポーションを置いてくれたので、一個だけ開けてみる。

 口にいれると、ほのかに甘い。

 薬草が入ってるから、苦いイメージがあったけどそうでもないんだ。

 

「アンネリーゼ、ポーション飲んでるのか?」

 

 ドアが開いて、じゃがいもやたまねぎを抱えたフェルが戻ってきた。

 

「なんか、体が軽くなったかも。フェルも飲む?」

「飲む!」

 

 ギルドに売れなかったポーションの10本のうち2本はロザリーさんに。あとの2本は私とフェルで飲んだから、手持ちは6本か。

 明日はポーション作らずに、匂い消しポーションと魔力ポーションに専念すべき?

 

 でも、品質ランクは作った回数が影響するって言ってたっけ。

 だったら、売れなくても毎日作らなきゃダメだね。

 

「アンネリーゼ、これうまいぜ! 前に一度だけ飲んだ下級ポーションは草の味がしたぞ。やっぱりアンネリーゼのは売れるんじゃないか?」

「え? ほんと? 味が違うの?」

 

 それってむしろやばいのでは……?

 

『魔力水の問題じゃないのー? あれだってアンネリーゼの流水で作ってるでしょ?』

「あ、そうか」

 

 ここでも、流水問題!

 そうかぁ、日本の水って偉大だったなー。

 

「けっこう上級の冒険者はお抱え薬師とかいるしなー。アンネリーゼもそうなるんじゃないか?」

『フェル、それはダメだよ、アンネリーゼは旅をしないと」

 

 フェルがじゃがいもの皮を剝き始め、私も急いで玉ねぎに取り掛かる。

 

「アンネリーゼ、玉ねぎはオレがやるから人参やってくれ。人参なら目にしみないだろ」

「ありがと、フェル。でもいいの……?」

「いいんだよ」

 

 フェルがイケメンすぎる……。

 孤児院でも、モテただろうなぁ。

 

 私は、人参の皮を剥き始めたけど、そういえばあの人ごみ酔いもなおってる……?

 ポーションのお陰か、時間がたったせいかわからないけど。

 

「旅かぁ。旅して、エヴァリディアス様を布教するんでしょう? うまく出来るのかな」

『ただ旅するだけじゃないよ。今回、アンネリーゼの前に使徒になったのが、百年ぶりの邪神の使徒なんだ。世界に悪い影響を与えるから、アンネリーゼはそれを阻止してくれないと』

 

 フェルが、冷蔵庫から鶏肉っぽいものを出してバターで炒めている。

 そこに、人参をいれようとしていた私は、コハクに振り返った。

 

 邪神? 阻止? 聞いてないよっ!

 

「邪神って……闇の神、ノクス・ザヴィエラさまか?」

『そう! 人のこころに闇をもたらすからね。大きな神様だから、他の神々は手出しできない。だから使徒で食い止めるんだよ』

「そんなー、私一人でどうこうできることなの!?」

 

 ふぅ、とコハクは生意気なため息をついた。

 

『勿論、ぼくらの後にも他の神様が使徒を選んだはずだよ。そのうち、旅してたら会うかもね~』

「オレは、闇の神様の使徒からアンネリーゼを守るのが仕事だな」

 

 フェルが、野菜を鍋に放り込みながら不敵に笑った。

 空色の髪の美少年は、それだけで映える。

 

 私より先に、フェルの覚悟が決まるなんてー。

 こういうのも、使徒のあるあるなのかなぁ。

 

 私に何ができるんだろ。

 そうじゃなくても、寿命ゲージ伸ばしていかなきゃいけないのに。大丈夫かな。

 

「アンネリーゼ、流水を頼む」

 

 少し牛乳をいれようかな、と思ったけどまずはここの純粋なカレーの味が知りたいから、やめとこうか。

 流水で鍋に水を入れると、フェルはかき混ぜてから蓋をした。

 

 それから、朝に私が剥くのを諦めたアグーレの残った実を剥き始めた。

 フェルは働き者すぎる。

 

「邪神の使徒と出くわしたくないなぁ……」

『泣き言いわないの。戦うとなったら、ボクが頼りになるしー』

「オレも戦うぞ! 午後はフェザーバード狩りでもしようかな。アンネリーゼのポーションの売り上げに頼り切りもよくないし、フェザーバードの羽毛は売れるからな」

 

 フェルさん、人生何回目?

 私、二度目だけど向上心が足りてないのかな。

 

 そう……! アグーレの実の中身でデザートを作ろう。

 せめて、食生活は豊かにしてみないと。

 匂い消しポーションをたくさん作るなら、絶対に皮はいるしね。

 

「匂い消しポーションの素材は……魔力水、アグーレの皮、ティニーの葉っと」

『ティニーの葉なら、薬草畑にあるよー』

「ほんと? じゃあ、午後は匂い消しポーションを作ろうかな」

 

 魔力は……まだ余裕があるね。

 作り溜めしたいし、どんどんやれることをやろう。

 

 フェル用のフードローブも作らないとだし。

 いきなりすごいことをやろう、じゃなくて、やれること一歩一歩から始めよう。

 

 私は、布を漁りにいった。

 フェルが出かけるまえに、好みの色を聞いとかないとね。

 勝手に白いローブとか作って、あとから「それ回復職ヒーラー専用!」とかになっちゃうかもしれないし。

 

「フェル―、ローブはどの色がいい?」

「んー、黒かなー」

 

 時々鍋をかき回しているフェルからはそう言われたけど、黒がない。

 濃いグレーならあるんだけど。

 

「黒がないんだけど、この色でもいい?」

「ん? 全然問題ないぜ」

 

 良かった、このグレーので作ろう。

 錬金術頼みだけど、うまくいきますように。

 

 あ! カレーなんだから、付け合わせにサラダでも作ればよかった。

 野菜畑にいくと、トマトがしっかり植わっていた。

 二個ほど取って、レタスも取る。

 浄化して戻ると、お皿三つにカットしたサラダを盛る。

 

「ドレッシングがない……!」

 

 作ればいいんだけど、私の頭はサラダと思った瞬間タマネギドレッシングが浮かんで張り付いている。

 フェルはもう鍋にカレールーを入れてしまったし、もたもたしてる時間がない。

 

『そういうときこそ、想像魔法だよ~。具体的に想像しながら、念じてみて。あ、大きなものだと魔力がもたないからね』

 

 あ、あの想像魔法って文字通りだったんだね。

 具体的に……玉ねぎがトロトロで、ベーコンの油がたっぷりで、あとオリーブオイルとコショウに、醤油とレモン汁……!

 

「想像!」

 

 ポンっと、某メーカーさんのドレッシングが出た。

 どっと疲れた。というか、魔力が抜けてった。

 これ、間違っても連発しちゃダメなやつだ。

 

「これが、アンネリーゼの前の世界のドレッシングか?」

「うん、時間かければ作れるんだけどね。今日は特別ってことでね」

 

 フェルはキャップを開けたけど、何の匂いもしないことに不思議そうだ。

 そうだよね、まさか内蓋もあると思わないよね。

 中の蓋を開けて渡すと、フェルは匂いをたっぷり嗅いだ。

 

「中身の想像できねえな」

「醤油とかも入ってるからね。そうだ、大豆も買えば作れるんだった……」

「明日、買うか?」

「うん、そうしようかなぁ」

 

 フェルに味見を頼まれて、カレーの味見をする。

 おお、すごい、ちゃんとカレー! 市販ルーとインドカレーのあいのこって感じだけど。

 けっこうしっかりスパイスの味がするから、甘口で正解だったね。

 

「いいよ、フェル。完璧!」

「じゃあよそうか」

 

 大皿に、それぞれお米をよそう。

 コハクの分は、私が盛ったけど。

 

「今更だけど、コハクって玉ねぎとか大丈夫?」

『聖獣なんだよー、ペットじゃないんだからー』

 

 良かった良かった、それなら基本的になんでも食べられるね。

 魔導炊飯器から立ち上るお米の匂いを満喫しつつ、コハクの分と自分の分をよそった。

 

「アンネリーゼ、少なくないか?」

「どれくらい、今の自分が食べられるかわからないから……」

 

 エヴァリディアス様のご褒美で、ジャンクフードはもりもり食べてしまったけど。

 八歳児の腹八分目がわからない。

 

「「食の神、ティティスよ。あなたの御力に感謝を。 あなたの御恵みに感謝を。その御加護が我らと共にあらんことを」」

 

 今度は、フェルのお祈りを追いかけて、私も祈ってみる。

 確かに私はエヴァリディアス様の使徒だけど、エヴァリディアス様と話したりしてるし、神様がいるってことは分かってるんだから敬意は払わないとね。

 

 夜も、エヴァリディアス様にお祈りしよう。

 新しい命に感謝したいから。

 

「カレーうんま! アンネリーゼの料理は店が出せるぞ!」

『おいしー!』

「えへへ、流水のお陰だけどね」

 

 カレーもほぼ、フェルが作ったようなもんだし……。

 サラダにフォークを刺すと、ドレッシングは記憶の中よりおいしかった。

 醤油さえ手に入れば、想像魔法にも頼らないですむ。

 

「このドレッシングもうまいな! 玉ねぎが甘くて、でもレモンでしっかり味がひきしまって……柔らかい肉のうまみもあるし、普通の野菜なのに手が止まんねぇ!」

『カレーも、野菜の甘味が溶けて、お肉もやわらかーい! アンネリーゼの流水で、しっかりうまみが出てるね~』

 

 一人と一匹が、食レポをしている途中、私はすぐにおかわりに立った。

 育ち盛りには、やっぱり少なすぎたみたい。

 

「オレもお代わり! ルーもっと買えばよかった」

『ボクもー! ボクのもあるー?』

 

 カレーはみんなに大人気。

 次は、ゆで卵を添えてもう少し豪華にしてみようかな。

 

 こうして、みんな大満足でお昼は過ぎた。

 甘いものを作ろうかって聞いたけど、みんな満腹。

 

 さーて、午後はフードローブを作って匂い消しポーションの作成だ。

 魔力が残れば、冒険者ギルドにもっていく甘いものも作らないとね。

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― 新着の感想 ―
カレー美味しそう!私も食べたいな。
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