3.国会が紛糾する
宇宙飛行士OB会の記者会見から数日後、その波紋は国会全体を揺るがしていた。与野党の議員たちは、この問題で国民の関心を惹きつけようと、テレビ中継される予算委員会で激しい議論を繰り広げた。
まず口火を切ったのは、野党のベテラン議員、大野だった。彼は、会見で述べられた宇宙飛行士たちの言葉を引用し、政府を厳しく追及した。
「総理、宇宙飛行士OB会が指摘した、食料自給率の低下と温暖化対策の遅れについて、どうお考えですか? 彼らは、この目で地球の危機を見てきたと訴えている。政府は、彼らの真摯な警告を、ただの『根拠のない憶測』として切り捨てるつもりか!」
大野の言葉に、会場はざわついた。
首相は、落ち着いた様子で答弁に立った。
「大野議員の質問にお答えします。宇宙飛行士の皆様が、宇宙から地球を憂慮されていることには敬意を表します。しかし、政府の政策は、科学的根拠と専門家の知見に基づいて立案されたものであり、感情的な訴えだけで判断することはできません。減反政策は、食料の安定供給と農家の経営安定を図るためのものであり、温暖化対策についても、国際公約を確実に果たすべく、全力で取り組んでおります」
首相の答弁は、教科書通りの模範的なものだった。しかし、大野はそれを許さなかった。
「科学的根拠? 専門家の知見? 総理、あなたの言う専門家とは、あなたの都合のいい数字だけを並べる、机上の空論を語る者たちではないのか! 宇宙から見れば、あなたの言う『模範的な政策』が、この国を、そして地球を滅ぼす、愚かな政策であることは明白だ!」
大野は、さらに声を荒げた。
「国民は、あなた方の言葉ではなく、宇宙から真実を語る英雄たちの言葉を信じている! あなたは、この国を、そして国民を欺いているのだ!」
与党議員の反論が始まる。
野党の追及が続く中、今度は与党の若手議員、高橋が反論に立った。彼は、冷静に、しかし、鋭い視線で野党議員と、そしてカメラを見つめた。
「大野議員にお答えします。宇宙飛行士の皆様の言葉には、重みがあります。しかし、彼らは政治の専門家ではない。彼らの言葉を、政府の政策を批判するための道具として利用するのは、彼らに対する侮辱であり、極めて政治的な行為です」
高橋の言葉に、野党議員から「政治利用しているのはお前たちだ!」と野次が飛ぶ。
「政府は、宇宙飛行士の皆様の提言を真摯に受け止め、今後の政策に活かしていく所存です。しかし、政策は、冷静な議論と、客観的なデータに基づいて行うべきであり、感情的な言葉に流されてはいけません。我々は、この国と国民の未来のために、責任ある政治を追求します」
国会の混乱は続く。議論は、もはや政策論争ではなく、罵り合いに発展していった。
「国民を煽動しているのは、どちらだ!」
「責任ある政治とは、国民を欺くことか!」
議員たちの怒号が飛び交い、議場は騒然となった。議長は、何度も休憩を告げるが、議論は収まらなかった。
この国会での激しい対立は、国民に「政府は真実を隠しているのではないか?」という疑念を抱かせた。そして、この混乱の裏で、宇宙飛行士OB会と政府、そして田中飛行士の運命が、複雑に絡み合い、新たな局面を迎えようとしていた。




