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ナンパという名の悪魔


「……これだから女子だけにしたくなかったんだよな」


 泰地が苦々しい顔をしながらそう呟いた。


 流れるプールやウオータースライダーなどが設置してある場所からミストなどが移動して少し。


 流れるプールを堪能した晃輔とななは、皆と合流して二十五メートルプールやウオータースライダーを気が済むまで遊んだあと、もう一つのミストやバブルプールが設置してあるゾーンにやって来た。


 ウオータースライダーがあるゾーンからバブルプールがあるゾーンに移動してから少しして、尿意を催した男子たちは、面倒事対策の為に一応昌平を残して一旦お手洗いに立った。


 そして、用を済ませてお手洗いから帰ってきた晃輔たちがプールに戻ると、女子たちが何処ぞの男性グループに絡まれていた。 


「……昌平はどこ行ったんだよ」

「吉橋のやつも」


 絡まれている女子たちを見ると、残る、と言ったはずの昌平と希実が消えていた。


「「……」」


 しかも、よく見るとななたちと男性グループとで揉めているようだった。


「あの人たち、女子が嫌がってるのわかんねーのかな……」

「わかんねえから、ああいう事ができんだろう」


 高絋と順哉は顔をしかめながらそう告げる。


 確かに高絋や順哉の言う通りだと思う。

 ななが男物のラッシュガードを着ている時点で察せないのだから、読み取る力が欠如しているのだろう。


「面倒事になる前にさっさと助けに行くか」

「ああ。行くぞ二人とも……って、どおした?」


 順哉は明らかに怒りを滲ませいる二人を見て驚いた。

 晃輔と泰地はナンパしている奴の……その後ろ姿に見覚えがあったのだ。


「あいつ……!」

「晃輔……落ち着けよ……!」

「……泰地に言われたくは……ねぇよ」


 注意してきた泰地をちらりと見ると、泰地も晃輔と同じぐらいに顔を歪ませていた。


「……なんでもない」

「……大丈夫だ。早く助けないと」


 晃輔と泰地はそう告げると足早にななたちの方へ向かった。

 晃輔たちが近くに行くと、ななが怒りの表情でそのナンパしようとしている男性たちに対応していた。


「いい加減にして! 遊ばないって言ってるでしょ!」

「へえ、やっぱ威勢が良いなあ。やっぱり俺たちとーー」


 男性グループの一人が筋乃に手を出そうとしてななが身構えた瞬間。


「なぁ、いい加減にしてくれねぇか?」


 今までの泰地からは聞いたこともないような低い声で男性グループに告げた。

 これには、高絋と順哉、女子たちも皆驚いているようだった。


「あ?」


 女子たちに手を出そうとしてた男性グループの一人がこちらを振り返った。

 そして、泰地や晃輔の姿をじっと見ると、嘲笑うかのようにして告げた。


「はん。誰かと思えば泰地と……なんだ、こうすけじゃねえか……」

「……」

「……なるほどな。今日は高校のみんなと遊びに来ていたってわけか」

「……くっ」

「そういうことだ。ななたちは俺たちの連れだ。手を出さないでもらおうか……関原(せきはら)!」

「おー、怖い怖い」


 男性グループの一人、関原、と泰地に呼ばれた人間はにやにやと笑いながらたしなめるように晃輔たちを見てくる。


「関原、相変わらず、中学の時からその趣味の悪さは変わらないな。天野、湯本!」


 泰地は怒りの表情を隠す事無く、思いっ切り関原たちに怒りをぶつける。


 その男性グループ……晃輔となな、泰地と同じ中学出身の三人。

 派手な水着と小太りが特徴の関原健太(せきはらけんた)、牛蒡みたいな細さの天野龍征(あまのりゅうせい)、中背中肉の優男風に見える湯本篤(ゆもとあつし)は余裕そうな、どこか楽しそうな表情で泰地を見てきた。


「はは。久しぶりにあった友人にずいぶんだな……誰も助けられない可哀相な部長さんと……誰にも助けてもらえない可哀相な正義の味方(ヒーロー)さん?」


 ななや高絋たちは、関原の挑発に反応して思いっ切り三人を睨む。

 関原は安い挑発を向けてくるが、晃輔や泰地はそんなものには乗らない。


「ふん。どうすんだよ?」

「力づくで俺たちを退かしてみるか?ふん、何も出来ないカスどもがーー」


 天野に続いて湯本が趣味の悪い事を言おうとした瞬間、何処かに行っていた昌平と希実が戻って来た。


「すいませんー! 係員さーん! ここです!ここで友達が変な人たちに絡まれてー」


 よく通る希実の声が聞こえたと思ったら、昌平と希実に連れられて係員さんがやって来た。


 このプールは安全管理もしっかりしているので至るところにこうした見張りが居る。

 基本的に水辺でのおふざけを注意したり水難から守ってくれる人達ではあるが、もちろん不審者が居ないかどうかも見ているのだ。


 どうやら、昌平たちはトラブルの予兆感じて係員さんを呼びに行ってくれたらしく、おかげで助かった。


 希実の声を聞いた関原たちは、特に慌てた様子も無く「チッ」と小さく舌打ちをすると晃輔と泰地に向かって悪態をついた。


「何も出来ない……カスが」

「カスで結構だよ……でも、俺は今こうしてお前たちよりもいい高校に行けて楽しくやってる。お前たちよりも幸せにやってる……だから、別にお前たちから見たらカスでも結構だ」

「はぁ? 何言ってんだ?」

「てめぇ、調子に乗りやがって。ふざけんなーー」


 天野と湯本が怒りの表情で近付こうとすると、関原が腕を伸ばして二人を静止した。

 そして晃輔と泰地を睨みつけながら告げた。


「ふん、あの頃と比べて……俺たちにイジメられてた時と比べて少しはマシな顔になったみたいだな……」


 そうして関原たち三人は睨むように晃輔を見る。


「行くぞ。流石に今、問題事はゴメンだ」


 そう言って関原たちが大人しくその場を去ると、ななたちが近付いてきた。


「ごめん」

「いや、こちらこそだ。悪かったな」

「いや、助けてくれてありがとう……」

「怖かっただろ」

「うんまあ……でも、ありがとう」


 土井と筋乃と高絋、順哉と石見がそれぞれ話している側で、ななは関原たちをにらみ続ける晃輔と泰地に声をかけた。


「晃輔、泰地。大丈夫?」

「俺は大丈夫……晃輔は?」

「……平気だ。皆、悪かったな。嫌な気分にさせた」


 そう言って晃輔が頭を下げると、皆は慌てた様子で晃輔に告げた。


「ちょっと! 何で晃輔が謝るのよ! 晃輔は何も悪くないんだから!」


 なながそう告げると、他の皆も同じ様に言ってくれて……晃輔は心が暖かくなった気がした。


「皆、ありがとう……昌平と希実もありがとな」

「全然大丈夫!」

「俺もたまには役に立つだろ」

「ああ……そしたら、まだ時間あるしもうちょっと遊ぼうか」


 若干涙目になった晃輔がそう告げると皆嫌な顔一つせず同意してくれた。

 本当にいい友達を持ったな、と思った晃輔は気持ちを切り替えて時間まで皆とプールを堪能した。



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