ファミレスにて
皆とのプールを満喫した晃輔たちは、プールを出て少し歩いた先のファミレスに移動して来た。
ファミレスに着いて最後に店に入ったななが晃輔の隣に座る。何故晃輔の隣かと言えば、残るメンバーの陰謀である。
居酒屋ではない限り一度に十人も座れる席なんて無いので、四、三、三に別れて座り、晃輔とななと昌平、希実で一グループ。
石見、筋乃、土井で一グループ。
泰地、高絋、順哉で一グループとして別れて座った。
流石に高校生と言えど数時間も遊べば少しばかり疲れるもので、皆は少し疲れた顔をしていた。
そんな中、思っていたよりも体力があるらしい希実はプールの時と同じテンションで声を上げた。
「楽しかったね〜!」
「そうだな。楽しかったなー」
テンションが変わらない希実のお陰で場の空気が少し明るくなった。
「そうね。楽しかったわね。こんなにたくさん遊んだのは久しぶりかもね」
「あれ?海では遊ばなかったの?」
「遊んだわよ。けど、途中から晃輔とあおいが全力で遠泳勝負し始めて……置いてきぼりになった」
正面に座る希実に海での出来事を尋ねられたななは、晃輔の方にちらりと視線を向けてきた。
「ごめんって」
晃輔が謝ると昌平や高絋が大笑いしていた。
「海の時は悪いと思ってるんだ。あおいに言われて、あの時はちょっと久しぶりに全力で泳いじゃって……」
「全力で泳いでななの事を放置したんだ……」
晃輔がそう告げると土井がジトッという視線を晃輔にぶつけて来た。
「うわー、楠木さん可哀想ー」
晃輔の目の前に座る昌平にもそんな事を言われる。
周りを見渡すと、皆から晃輔を責めるような視線を向けられていた。
何故ただ海で泳いだだけなのにこんなに責められないといけないのだろう。
「……なぁ何で俺そんな責められないといけないの?」
「そりゃあ、ななと遊んであげない晃輔が悪いでしょ?ねぇ?みんな」
希実が皆に尋ねると、なな以外の全員が首を縦に振って希実の意見を肯定していた。
「ええっ……」
「悪いな晃輔。流石にそれはフォローしてやれない」
「だな」
「ああ。俺たちは楠木の味方かな」
晃輔が困惑していると泰地たちが口々にそう告げた。
「何か俺への扱い酷くね?」
「気のせい気のせい」
適当を言う昌平を軽く睨みつけると、晃輔は大きくため息をつく。
すると石見が晃輔に尋ねてきた。
「ねぇ藤崎君。今日はちゃんとななと遊んであげた?」
「お、おう……」
「遊んであげないとななが可哀想だよ?」
石見の問いに晃輔が困惑しながら答えると、筋乃も追い打ちを掛けるようにそんな事を言ってくる。
すると、海の話題が始まってから晃輔の横で静かにしていたななが顔を真っ赤にさせながら口を開いた。
「………………ねぇ、あの……そろそろ止めてもらえないかしら?すっごく恥ずかしいんだけど……」
晃輔がななの方を見ると、ななは耳まで赤くさせてぷるぷる震えていた。
どうやらよっぽど恥ずかしかったらしい。
確かに晃輔もななと同じ立場なら相当恥ずかしいだろう。
「ごめんね~なな。つい、ななが可愛くて」
石見は愉しそうに笑いながらそう告げた。
「ところでさ〜ねぇなな」
「うん?」
「ずっと気になっていたんだけど……なな、あの水着にしたの?」
「あの水着?」
「え?だって、ななはもう一つ買った黒色紐ビキニのみずっ」
正面に座る希実が最後まで言おうとすると、途中でななの掌で口を塞いだ。
席に座ったまま、軽く腰を浮かせて希実に手を伸ばしているななは、晃輔の視線を感じたのか一度ぴたりと静止した。
「えっと……」
「……何でもないからこっちを見ないで下さい」
「何で敬語?」
「何でもないからこっちを見ないで下さい」
突然ななが壊れたラジカセみたいになってしまった。
顔を真っ赤にさせて俯くななに、少し興味を持った晃輔は尋ねてみた。
「もう一つあったんだな……」
「……希実あんた後で覚えておきなさいよ?」
「酷い!!」
「まぁ、でもあれを公衆の面前で……というか人前で着るのは結構勇気いるよね……」
「普通に恥ずかしい」
「ちょっと!梨香子!藍子!」
追い打ちを掛けるように告げる石見と土井を見て、筋乃や男子たちは苦笑いしていた。
ここで余計な事を言わないのは英断と判断したんだろう。
「それに……こぼれそうだしね、あの水着。何が、とは言わないけど」
「希実はあんたは黙らなきゃ駄目」
「ふぁい」
「今度、ななと二人っきりの時、ななに見せてもらえば?」
「藍子!!」
ななの正面に座る希実と違って、ななに口を塞がれる事が無い土井が良いたい放題言う。
「でも、晃輔に見せてほしいって言われたら見せるでしょ?」
「そ、それはその……どうしてもって言われたら……」
希実の質問に、ななは顔を赤らめる。
ななは手をもじもじしながら、晃輔の顔をちらちらそう答える。
そんな態度をされると、こちらまで恥ずかしくなり晃輔の頬が内側から熱くなっていくのを感じる。
「の、のん、そのへんにしようぜ。楠木さん怒らしたらお泊りさせてもらえなくなるから」
「ええーそれは困るー」
昌平がそう告げると、希実は大人しく引き下がってくれた。
どうやら、今回はちゃんと昌平がブレーキ役をやってくれているようで安心した。
「いやー、でも楽しみだよなー。この後二人の愛の巣でお泊り出来るんだから」
笑いながらそんな事を言う昌平の脛に、晃輔は思いっ切り蹴りを入れてやった。
「……晃輔痛い」
「知らん。自業自得だろ」
「でも、正直楽しみではあるんだよ?」
それぞれの席で頼んだ料理が届いた晃輔たちは、頼んだ料理に集中するためそれぞれのグループで話をする。
「あのさ……」
「な〜に?晃輔」
「なにっていうかさ……ああいう連絡はもっと早くにするもんだろ……何でこう……」
晃輔は顔を顰めながらそう告げた。
今日の、晃輔たちのこれからの予定は……希実たち八人が晃輔とななが一緒に暮らす家にお泊まりに来るのだ。
そして、その連絡が来たのが、昨日の昼。
十人いるグループの中に希実がメッセージを入れてきたのだ。
『明日、みんなでプールに行きたいんだけど……皆どぉー?』
『明日?ずいぶん急だね?』
『あと、もし可能ならプール終わったらななと晃輔の愛の巣に泊まりに行きたいんだけど……』
『ななたちの家に?大丈夫なの?急に?』
『個人的には行きたいけど、ななも藤崎君も大丈夫なの?』
『晃輔たちの都合次第じゃね?』
『多分ななや藤崎君なら大丈夫じゃない?』
『そうだな。多分大丈夫だろ』
『じゃあ決まりかな?明日』
『おい』
『ちょっと待ちなさい』
夏休みの宿題中に異常な数の通知音がして晃輔となながスマホを見ると、何か、とんでも無い晃輔とななの都合全無視の無茶苦茶な会話をグループ内でしていたのだ。
晃輔は昨日の昼の事を思いだして小さく頭を抱えた。
「次からは、もっと前に連絡してくれよ?俺たちにも準備ってもんがあるんだからさ」
「そうよ。こっちの身にもなりなさい」
「はーい。すいませんでしたー。次からはもっと早くに連絡しまーす」
そう言いつつも、全然反省の色が見えない希実に晃輔は頭を抱える。
恐らく、これ以上何を言っても希実には無駄だと思い、晃輔は諦めて少し冷めたパスタを食べるのだった。




