女子会(なな視点)
少し出掛けてくる、と言って晃輔が出掛けて行き久しぶりに何も予定が無く暇をしていたななは、夏休みが始まってから一切手を付けてなかった宿題を片付けようと机に向かおうとすると、二人の住む家に思わぬ訪問者が現れた。
「やっほーなな、久しぶり!」
「そうね」
何の連絡も無く突然現れた訪問者に、ななは思いっ切り冷たくあしらった。
「ななが冷たいー!」
「当たり前でしょ!?いきなり家に来て!」
「あはは……ごめんね、なな」
「はぁ……全く、もういいわよ。それで、何で今日はいきなり」
思いっ切りため息をついてこの中で一番まともな絢音に助けを求める。
すると、視線を感じた絢音が突然の訪問理由を教えてくれた。
「ごめんね、なな。何か希実が丹代くんたちが男子会をしたって聞いたらしくて、私たちも女子会をやりたいって」
どうしよう頭痛くなってきた。
とんでも無い訪問理由に思わず頭を抱えるなな。
「希実らしい……か……」
はぁ、と大きくため息をつくななに絢音は申し訳無さそうに、藍子はほぼ表情を変えずに、希実と梨香子はその反応を見て楽しそうに笑っていた。
希実と出会ってもうすぐ一年半にもなると、突拍子もない希実の言動には少しずつ慣れてくる。
だから、というわけにもいかないが、巻き込まれた絢音たちが可哀想なので、素直に諦めて家に招き入れることにした。
「まあいいや、とりあえず飲み物出すから入って」
『はーい!』
希実たちは夏の暑さに負けない元気な声で返事をする。
「それにしても、ななの私服かわいいね!」
「そう、ありがとう。だけど、それでご機嫌取ろうたってそうはいかないわよ」
「怒んないでよー。いきなり来たらなながそう怒ると思って、ちゃんと手土産持ってきたんだー」
「手土産?」
結構抜けがちな希実にしては意外としっかりしてる。
「そう!流石に迷惑かなーって思ってね、お菓子持ってきたんだよ!」
誰も突っ込まないけど、そもそも、いきなり人の家に押しかけるって言う思考自体がちょっとどうかしてると思うんだけど。
「最初何も持たずに『突撃お宅訪問!』なんて言って希実と梨香子が行こうとしたんだけど……『流石にそれはなながキレるから止めて』って藍子に」
「…………」
追い返そうかしら。
真っ先にそのフレーズが頭に浮かんだ。
何でこう、二人ともめちゃくちゃ美少女で可愛いのに、やってることがめちゃくちゃなんだろう。
「あ、絢音は止めてくれたの?」
「私?ななと藤崎君の家行こう、って希実から連絡が来てから、多分本当に突撃するつもりなんだろうなって思ったから、一旦みんなで集合する前に、流石にアイスとかは買えなかったけど、オレンジジュースとポテトチップスを買ってきたよ。止めても無駄だし、ああなったら人の話聞かないし」
絢音は希実と梨香子の方を向きながら、少し遠い目をした。
心配になって聞いてみたけど、流石しっかり者の絢音だった。
私たち五人の中で一番まともって言われるだけはある。
「私たちは……!」
「はい!プリンを買ってきました!」
そう言って、梨香子は自分のバックから箱を取り出して、ぱかっと箱を開いてみた。
「あ、ありがとう……ってこれ結構高いやつ何じゃあ……」
「一個四百円いかないぐらいのやつかな?」
「え!?……えっと、そしたらお金……」
「大丈夫!大丈夫!」
一つで四百円もするプリンに驚いていると、いつの間にか希実が人の家の冷蔵庫を勝手に開けて晃輔の分のプリンを入れていた。
「一応晃輔の分もあるから、悪くなるといけないし冷蔵庫置いておくねー!」
もうどうにでもなればいいや。
「色々とごめん。なな」
「良いわよ。この二人似た者同士だから一度暴走したら中々止まらないからね。藍子も絢音もお疲れ様」
「うん」
そう言って、希実たちを家に上げたななは貰った手土産をリビングの机の上に広げる。
ななも含め全員が席に着いて、絢音から貰ったオレンジジュースを開けて一口飲むと、希実と梨香子が凄い勢いでななに詰め寄って来た。
「それで、なな!」
「……何よいきなり」
いつになくハイテンションな希実と梨香子に困惑する。
「夏休み始まったけど、晃輔と良いことあった?どっか行ったの?」
「…………」
予想もつかなかった質問に反応が遅れる。
少し遅れてその質問の意味を理解して顔を背けた。
すると、その反応を見た希実と梨香子が顔をにやにやさせ始める。
「おや〜?」
「ななさんや、顔が真っ赤ですよ〜?」
人の反応を見るなり目を輝かせてはしゃぎ始める希実と梨香子に思わず、しまった、と思った。
二人は隙があれば直ぐそう言う話に持っていくのだ。
そして、二人の気が済むまで弄り倒されるのだ。
正直言ってあれはめちゃくちゃ恥ずかしい。
二人に弄り倒されるのはゴメンなので、なるべく表情に出さないように、ついでに二人と目を合わせないように小さく告げた。
「……うるさい」
「あれ?いつもの、うるさい!じゃない」
「ね!でも、こっちの照れてるななも可愛くて好きー!」
絢音が余計な一言を言ったせいで、なんでか希実にぎゅーと抱きつかれた。
「暑い!ねぇ待って!そもそも家来ていきなりその質問はどうなの!?」
「それで?晃輔と何したの?」
「どこ行ったの!?」
「話聞いて!!」
希実に抱き着かれたななは、晃輔の名前を出され耳まで赤くなった顔でそう叫んだが、どういう訳か梨香子まで抱き着いてきた。
というか、何かコントかと思うぐらい希実と梨香子の掛け合いが鬱陶しいぐらい仕上がっていて、ちょっとうざい。
「ちょっと!二人とも暑い!離れて!」
「え〜?」
「嫌だー。なな可愛いんだもんー」
「絢音も藍子も黙って見てないで助けてー!」
絢音と藍子に助けを求めるも、諦めろ、と言わんばかりに首を横に振った。
どうやら逃げ場は無いらしい。
ここは私と晃輔の家なのだからホームのはずなのに何故かとてもアウェーな気分だ。
「なな。観念するんだな」
「そーだ。洗いざらい全部吐いちまえ」
何処かの刑事ドラマ風にそんな事を言う二人に色々と突っ込みたくなったが、希実と梨香子の言う通りこれは観念して吐いたほうが身のためかもしれない。
隠そうとしても、多分どっかでボロが出て必要以上に弄られるだけだろうし。
「はぁ……分かったわよ……晃輔と猫カフェ行きました」
「それだけ?」
「デートじゃん」
「……えっと、あと晃輔とあおいと、嶺兄さんの車で海に行きました」
『へえ~?』
ただの公開処刑とどう違うのだろう。
言っててとても恥ずかしくなってくる。
自分で自分の言ったことに悶々していると、ななの公開処刑をにやにやしながら聞いていた希実たちから質問の嵐を受けた。
「ねぇ、楽しかった?晃輔とのデート」
「ぶっ」
熱くなった顔を冷やすために絢音から貰ったオレンジジュースを飲んでいたら、希実のストレート過ぎる質問に思わず飲んでいたジュースを吹き出してしまう。
「楽しかったんだ?」
「良かったね〜」
「そのまま告れば良かったのに……」
「!?……ゲホッゲホッ……一体何を言ってるの……?」
ぼそっと呟いた藍子の一言に驚いて、飲んでいたジュースが気管の方へ流れて行ってしまった。
「藍子、順番ってものがあるでしょ……流石になながいっぱいいっぱいになってるじゃん」
「……ごめん」
「ううん。分かれば良いんだけど」
「ねぇ、二人で仲良く話している所悪いんだけど……藍子と梨香子は一体何の話ししてるの?」
「え、ななが藤崎君のこと大好きって話」
「…………なぁ!?」
ななは声にならない悲鳴を上げると同時に頬が内側から熱くなるのを感じた。
折角、収まりつつあった熱がまた再燃してしまった。
「……色々とぶっ飛ばし過ぎだよ……ほら、ななの目がぐるぐるし始めちゃったよ」
そう言って、絢音が呆れたような表情で梨香子たちを見つめる。
「でもやっぱりなな可愛いー!」
何故か嬉しそうに希実が抱き着いてくるけど、今はまず、それよりも緊急で確認すべきことが。
「まままままま待って!?……ええと……つまり私が晃輔のこと好きなの……」
「うん!全部知ってた」
「なな凄く分かりやすくから」
「晃輔もだけど、ななも思っていること顔に出やすいから」
「話に藤崎君の名前が出るだけで幸せそうな顔をするんだもん。正直見ているこっちが恥ずかしくなるよ……あと、胸焼けしそうだよ」
全員から口々にそう言われ何も言えなくなるなな。
ちょっと私も含めて全員の記憶を消せる装置とかないかな。
恥ずかし過ぎて死にそうなる。
「あと、因みにななの水着を晃輔に選ばせたのも知っているからね。隠したって無駄だよ〜?」
「……」
本当に一体どこまで知られているんだろう。
「さあ、惚気話でも何でも聞いたあげるから、全部吐きなさい」
じりじりと迫る希実たちに逃げようにも逃げられず、結局希実たちによる尋問は晃輔が帰ってくるまで続いた。




