親睦会
「お、話終わったか」
あおいと希実に混じってテレビゲームを楽しんでいた昌平は、晃輔たちを見てそう告げた。
「話終わったか、じゃねえよ。こっち側来るなら、何で連絡寄越さないんだよ」
晃輔が軽く悪態をつくと昌平は笑ってそれを流して、告げた。
「ごめんごめん。まさかこっちに来るとは思ってなくて。流石に、鉢合わせさえしなければそれで良いかなって思ってたから連絡しなかった」
「あのな……」
昌平の適当な態度に晃輔の眉間にシワが寄る。
今回は、バレたのが泰地たちだからまだよかったものの、ななとの同居の事がバレたら非常に面倒な事になるのは目に見えている。
「はーい! ねぇねぇ、提案があるんだけど」
あおいたちと遊んでいた希実は、突然元気良く手を上げてそう告げた。
「提案?」
「ななはまだしも、晃輔は殆どこのメンバーと話したこと無いでしょ?」
「うるさい。そもそも話す理由っていうか、キッカケがなかったしな」
晃輔がそう告げると希実はにっこりと笑った。
「でしょ? だからさ、せっかくだからみんなで遊ぼうよ」
『……え?』
あおいと昌平以外の全員の声が重なった。
あおいと昌平は希実が何を言うのか想像できていたらしく、二人して苦笑いしていた。
「遊ぶって言ったって、晃輔の家でか?」
潮谷高絋、高絋は若干呆れたような表情で希実を覗き込む。
「そ」
「いや待て。そんな大勢で、十一人で遊べるものなんて家には無いぞ」
「そうね……」
この家に晃輔と一緒に住んでいるななも、晃輔の意見に同意した。
「だよね……でも大丈夫!」
「いや、だから何が」
希実のおふざけに、晃輔がすかさず鋭いツッコみを入れる。
「なんと、ここに最大十二人までできるレースゲームがあります」
バンッ、とそんな効果音が聞こえてきそうな勢いで、希実はバッグの中から世界的、国民的人気のレースゲームのゲームソフトを取り出した。
「何でそんなもん持ってるんだよ……」
「そして、この家には確か二台ゲーム機があったよね。だったら、あと四台」
どうして希実が、晃輔たちの家のゲーム機の数を知っているのかツッコみたくなったが、それをすると話が進まなくなる気がしたので晃輔は無理矢理呑み込んだ。
「あ! そうか、さっき買ったやつ」
「なるほど……」
「そう!」
希実がそう言うと、さっきゲーム機本体を買ったらしい高絋と順哉は、そのゲーム機をバッグの中から取り出した。
そして、二人と同じ様に購入を勧められたらしい土井も同じゲーム機を購入していた。
「でもこれだと一個足りないわよ」
「それなら大丈夫! ね、しょうちゃん!」
「はいはい」
希実に指名された昌平はバッグの中から同じ機種のゲーム機を取り出した。
「えぇ……」
「でもどうするんだ? やるとしたら、たぶんネット通信かなんかだろ。みんな同じソフト持ってないと……」
「あー、それなら大丈夫……かな……」
「みんな同じものを買わされたからな」
晃輔の疑問に、石見と泰地は苦笑いしながらそう答えた。
「えぇ……」
今度は晃輔が言葉を無くす番となった。
すると、珍しく今までのやり取りを黙って聞いていたあおいが口を開いた。
「にゃはは、準備万端だね、こー兄、お姉ちゃん」
「ねぇ晃輔、こんなにも準備万端なのにやらないなんて言うの……?」
「うるさい希実。あと、なんで俺だけに聞くんだよ」
「えぇ、だってななの方を見てみ。もう、とっくのとうに諦めてるよ」
希実に言われてななのほうを見ると、ななは呆れた表情で「もう、晃輔に任せるわ」と晃輔に告げた。
どうやら、頼みの綱であるななは完全に諦めてしまったようだ。
「はぁ……分かったよ。ただ、あんまし騒がしくするなよ」
『はーい!』
晃輔がそう言うと、なな以外のみんなは元気良く返事をした。
「はぁ……」
結局、流れ的に家で遊ぶ流れになってしまったので、他のメンバーがゲーム機の設定などを色々といじっている間に、晃輔とななはゲーム機を起動して準備を行う。
「希実のやつ……これ、最初から狙ってやってたんじゃないだろうな……」
「流石に希実でもそこまでは……」
晃輔が呟くとななは苦笑いしながらそう告げる。
「あおい、あおいは私のでいいわね?」
「うん! ありがとう! ふふ、こー兄だけ一人だね」
「やかましい」
晃輔とあおいのやり取りを見て、ふふと小さく笑ったななは土井たちの方を振り向き告げた。
「藍子どう?」
「ごめんちょっと待って」
晃輔たちの準備が終わっても、買ったばかりの新品のゲーム機には色々と設定するものが多いので少々時間がかかる。
「できた」
「こっちもやっと……」
「よし」
「んにゃ、やりますか」
みんなそれぞれ設定が終わったようで、晃輔たちはゲーム機を立ち上げ、ネット通信を行う。
接続が完了すると、各自使用するキャラクターや車等を選んでスタート地点に着く。
すると、昌平と泰地が口を開いた。
「おし、晃輔には負けられないな」
「だな、晃輔には負けられないな」
「なんでだよ」
「あはは、藤崎くん人気者だねー」
「石見!? これを見てそれが言えるか?」
晃輔が悲鳴じみた声を上げると、それを聞いて皆が笑い声を上げる。
スタートの合図がすると皆が一斉に車を動かす。
晃輔はスタートで失敗することなく、順調に順位を上げていった。
順位的に一位は石見、二位は昌平、三位はあおい、晃輔は現在五位だ。
「石見と昌平早すぎだろ」
現在のレース順位を見て、現在九位の高絋はそう告げた。
高絋の言う通り、三位のあおいとは距離があり、石見と昌平の二人で一位争いをしている状態だ。
「私これ家にあるからね! 逆に……」
「楠木下手すぎだろ……」
「ね……」
「思った……」
希実と泰地も同じことを思ったのかそう告げる。
希実の順位は六位で泰地は四位だ。
「うるさい!」
ななの現在の順位は最下位で、CPよりも弱い順位だ。
ななはゲーム関係は基本的に苦手……というより驚くほど下手なのだ。
ちなみに、二台もゲーム機が家に置いてあったのは、一つが晃輔の私物。もう一つはあまりにもゲームが下手ななのために、あおいが嶺に相談して買って貰ったらしい。
「お姉ちゃんゲーム全般苦手だもんねー」
「う〜」
結局、ゴールした時の順位は一位から六位までは変わらず、七位は順哉、八位は筋乃、九位は高絋、十位は土井、ななは辛くも最下位という結果になった。
「悔しい! もう一回やりましょう!」
負けたことが本気で悔しかったのか、ななは顔を真っ赤にさせてそう告げる。
「いいよ! ただ、次も一位は私のものだから!」
石見がそう言うと、他のメンバーが声を上げた。
「いや、次は私が—―」
「次こそは俺が――」
「ふ、んじゃあ第二回戦始めようか」
昌平がそう言うと、皆は画面の方へ向き直った。
こうしてゲーム大会は白熱し、気付くといつの間にか十八時を回っていた。




