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カートに入れるだけで世界を変える ~異世界通販で文明侵略~  作者: レモンティー


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第六話:酔いという支配

「……次はこれだな」

画面に表示されたカテゴリを見ながら、俺は呟いた。

【酒類】

ワイン。

ビール。

発泡酒。

ブランデー。

どれも見覚えのあるものばかりだ。

「この世界にも酒はあるが……」

思い出す。

あの村で出された酒。

薄い。

ぬるい。

そして――弱い。

「勝てるな」

確信した。

酒は嗜好品だ。

だが同時に――

「依存性がある」

一度“本物”を知れば、

もう戻れない。

「よし」

検索をかける。

【赤ワイン フルボディ】

【缶ビール 24本】

【発泡酒 ケース】

【ブランデー】

「……いいな」

それぞれカートに入れる。

価格を見る。

「まあ安い」

だが、この世界では違う。

「価値は俺が決める」

購入。

――ドン。

――ドン、ドン。

酒の箱が現れる。

「……重いな」

一本、ワインを取り出す。

ガラス瓶。

深い赤。

「これ見ただけで価値感じるだろ」

夜。

俺はわざと、人の多い場所に出た。

焚き火の周り。

村人と――商人。

(ターゲットはこいつらだ)

流通を握るのは、

個人じゃない。

商人だ。

「……水とパンの男か、何を売ってるんだ?」

昼間の男が言う。

その隣には、見慣れない男。

服が違う。

質がいい。

「そっちは?」

「行商人だ。町と村を回ってる」

(当たりだ)

俺は軽く笑う。

「いいものがあるぞ」

箱を開ける。

「……それは何だ?」

「酒だ」

ざわつく。

「酒ならあるだろ」

「違う」

一本取り出す。

コルクを抜く。

――ポン。

その音だけで、空気が変わった。

「なんだ今の音……」

「飲めば分かる」

木のカップに注ぐ。

深い赤。

香りが広がる。

商人に差し出す。

「……毒じゃないだろうな」

「毒なら、こんな手の込んだ容器使わないだろ」

商人は少し迷い――

飲んだ。

次の瞬間。

止まる。

「……なんだ、これ」

低く、震える声。

「濃い……香りが……残る……」

もう一口。

そして。

「うまい」

はっきりと言った。

周囲がざわめく。

「俺も!」

「飲ませろ!」

少量ずつ配る。

結果は同じ。

全員、顔が変わる。

(完全に刺さったな)

俺は次を出す。

「こっちはビール」

缶を開ける。

――プシュッ。

泡が立つ。

「なんだそれ!?」

「発泡してるだと……!?」

驚きの声。

飲ませる。

「苦い……が、うまい!」

「なんだこの刺激!?」

さらに。

「これは蒸留酒」

ブランデー。

香りだけで、

全員の目が変わる。

「……これ全部、売るのか?」

商人が聞く。

「売る」

即答。

「いくらだ」

(さて、ここだな)

水やパンとは違う。

これは“贅沢品”。

つまり――

「高くていい」

俺はゆっくり言う。

「ワイン一本、銀貨五枚」

ざわつく。

「高すぎる!」

「無理だ!」

だが。

商人は黙っている。

考えている顔だ。

(分かってるな)

こいつは気づいている。

「……売れるな、これ」

小さく呟く。

「町に持っていけば、倍でもいける」

俺は笑う。

「だろ?」

商人は俺を見る。

「まとめて買う」

(来た)

「どれだけだ?」

「あるだけ」

即答だった。

「ただし条件がある」

「なんだ」

「優先的に俺に卸せ」

「……専売契約か」

「そうだ」

一瞬の沈黙。

だが――

「いいだろう」

成立した。

(流通、取ったな)

俺は静かに頷く。

「じゃあ交渉成立だ」

金が動く。

銀貨。

大量に。

「……すげぇな」

袋の重さが違う。

これはもう、

村レベルの話じゃない。

「次は町だ」

酒は広がる。

そして――

依存が広がる。

その夜。

俺は一人で画面を見ていた。

【残高:128000円】

「……一気に跳ねたな」

酒は強い。

利益率も、

単価も高い。

「これに加えて」

視線を落とす。

【医薬品】

「酒で掴んで、薬で縛る」

完璧な流れだ。

「そして――」

【調味料】

塩。

砂糖。

香辛料。

「生活そのものを握る」

小さく笑う。

「もう戻れないな」

これは商売じゃない。

交易でもない。

「支配だ」

酒に酔うのは人間だ。

だが――

「酔わせてるのは、俺だ」

夜の空を見上げる。

静かに、確実に。

世界は――

変わり始めていた。


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