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カートに入れるだけで世界を変える ~異世界通販で文明侵略~  作者: レモンティー


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第二十二話:領主の一皿、王都の爆発

「……一度、見せるか」

俺は静かに箱を閉じた。

中にあるのは――

これまでとは、まったく別の武器。

「甘味じゃないのか?」

リオナが視線を向ける。

「ああ」

短く答える。

「次は――食事だ」


領主館。

重厚な扉の向こう、静まり返った広間。

その中央で、俺たちは“戦いの準備”をしていた。

並べるのは――

湯気を立てる一皿。

そして、小さな器に入った濃い色の液体。

「これは?」

領主が眉をひそめる。

「カレーです」

「こちらは?」

「焼き肉のたれ」

「……聞いたことがないな」

当然だ。

この世界には、まだ存在しない。

「まずはこちらを」

差し出した瞬間、領主は顔をしかめた。

「この色は……まさか汚物ではないだろうな」

(言うと思った)

だが次の瞬間――

鼻を近づけ、動きが止まる。

「……香りは、悪くない」

「スパイスを煮詰めた料理です。必ず、ご期待に応えます」

パンにつけて一口。

その手が、止まった。

「……ほう」

ゆっくり、もう一口。

「なんだこれは」

「複雑だ……だが、調和している」

「辛い……が、旨い」

次に、焼いた肉。

そこへ、たれを絡める。

一口。

「……!」

今度は、明確な驚き。

「濃い……だが、やめられん」

「これは危険だな」

さらに一口。

「酒が欲しくなる」

(来た)

リオナが一歩出る。

「ですが、こちらも――」

差し出すのは、茶。

領主、口に含む。

「……いい」

「口が整う」

さらに――甘酒。

「温かい……」

「落ち着くな」

食事。

茶。

甘酒。

一連の流れが、ひとつの“体験”になる。

領主は深く息を吐いた。

「完成しているな」

俺は静かに頷く。

「甘味だけじゃない」

「食事でも、人を縛れます」

リオナが続ける。

「回転ではなく、“滞在”を生む店になります」

領主はゆっくり笑った。

「面白い」

そして、決定の一言。

「王都でやれ」

「許可は出す。だが――」

「敵は多いかも知れんぞ」

俺は肩をすくめる。

「分かっています。」


数日後――王都。

人が渦巻く、巨大な市場の中心。

そこに、俺たちの店は立った。

並ぶのは――

柔らかいパン。

透き通る水。

甘味。

茶。

甘酒。

そして、

カレー。

焼き肉のたれ。

「全部、揃えたな」

俺が言うと、

リオナは静かに頷いた。

「回転ではなく、“滞在”を作る」

開店――

の、直前。

「来たぞ!!」

嫌な予感しかしない声。

「遅い!!」

おてんば姫、再来。

周囲が一気にざわつく。

「姫様!?」

姫は意に介さない。

店の前に立ち――

大きく息を吸う。

「ここに!!」

「噂の店が来たぞーーー!!!」

一瞬の静寂。

次の瞬間――

ざわあああああああ!!!

人が、押し寄せる。

波のように。

壁のように。

「リセットの店!?」

「甘味の!?」

「茶もあるやつだ!!」

「カレーって何だ!?」

情報が混線する。

「宣伝してやったぞ!」

姫は満足げに笑う。

「やりすぎだ」

だが――

リオナは微笑んだ。

「完璧です」


開店。

――爆発した。

「プリン!」

「シュークリーム!」

「茶!」

「甘酒も!」

「カレーくれ!」

「肉も!!」

一気に流れ込む客。

厨房は、戦場と化す。

「多い!!」

猫人が叫ぶ。


最初の客が、カレーをパンにつける。

「見た目はヤバいが……なんだこれ」

一口。

「うまい」

二口。

「止まらん」

三口。

「辛い!だが、うまい!!」

(通った)

茶を飲む。

「……落ち着く」

甘味を口にする。

「……また食える」

(全部、つながった)


店は満席。

外には、長蛇の列。

「なんだこの店……」

「全部あるぞ……」


俺はその光景を見つめる。

「……爆発したな」

リオナは頷く。

「想定以上です」


王都の中心。

最大の市場。

そのど真ん中に――

根を下ろした。

甘味で引き、

茶で整え、

甘酒で緩め、

食事で縛る。

「完璧だな」

俺の言葉に、

リオナは静かに返した。

「だから――狙われる」


店の中は、

笑い声で満ちていた。

止まらない人の流れ。

止められない熱。

誰も帰ろうとしない。

ここに“居たい”と願っている。

王都で、完全に火がついた。

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