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カートに入れるだけで世界を変える ~異世界通販で文明侵略~  作者: レモンティー


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11/31

第十一話:飲み物の外へ

数日後。

広場の景色は――一変していた。

「泡酒一杯!」

「職人酒もあるぞ!」

「今日は新しいのも来てる!」

ざわめきの中。

俺は、新しく置かれた箱を見る。

(……そろそろだな)


「次、これ出す」

行商人に言う。

「……まだやるのか?」

半分呆れた顔。

「酒で十分儲かってるだろ」

「“酒だけ”だからダメなんだよ」

俺は箱を開ける。

中身を見せる。

「……なんだこれ」

並んでいるのは――

見慣れないものばかり。

パン。

瓶。

透明な液体。

色のついた液体。

「飲み物と食い物だ」

「は?」


その日の昼。

新しい札が貼られる。

――【焼きたてパン:銅貨二枚】

――【オレンジジュース:銅貨三枚】

――【リンゴジュース:銅貨三枚】

――【ブドウジュース:銅貨四枚】

――【お茶:銅貨一枚】

「……なんだこれ」

「酒じゃねぇのか?」

人がざわつく。

当然だ。

この町で“飲み物”といえば――酒しかない。

(だからこそだ)

「試しに飲んでみろ!」

行商人が叫ぶ。

半ばヤケだ。

最初の客が手を出す。

「……これでいいのか?」

リンゴジュース。

飲む。

止まる。

「……甘い」

静かに言う。

「……なんだこれ」

もう一口。

「うまい」

その一言で――

一気に流れが変わる。

「おい、俺も!」

「それ、子供でも飲めるのか!?」

「酒じゃねぇのか!?」

「酔わねぇぞ!」


人が、集まる。

酒じゃない。

だが――

売れる。

「こっちくれ!」

「パンもあるぞ!」

「温かい……!?」

焼きたてのパン。

香りが広がる。

(勝ちだな)

酒は強い。

だが制限がある。

酔う。

時間を選ぶ。

だが――

「これは違う」

いつでも飲める。

誰でも飲める。

「市場が、別だ」


夕方。

ギルドの中。

「……なんだこれは」

中央の男が呟く。

報告を聞きながら。

「酒以外で……売れてる?」

「はい……それも、かなり」

「客層が違います」

「女と子供が増えてます」

沈黙。

「……そんな市場、あったのか」

(なかった)

正確には――

「作った」


その夜。

リュカが瓶を手に取る。

「……これも、お前のか」

ブドウジュース。

「そうだ」

「……酒じゃないな」

「だな」

一口飲む。

止まる。

「……甘い」

「だろ」

「……だが」

少しだけ考える。

「これ、発酵させたらどうなる」

(来たな)

俺は笑う。

「やってみろ」


翌日。

さらに札が増える。

――【発酵果実酒(試作):銅貨六枚】

「はやっ……!」

行商人が引く。

だが――

リュカは止まらない。

「まだ足りない」

「もっといける」

(完全にハマったな)


広場。

酒。

ジュース。

パン。

全部が並ぶ。

人が流れる。

止まらない。

「なんだこの店……」

「全部うまいぞ……」

「他行く必要ねぇな」

(囲ったな)

飲み物。

食い物。

滞在時間。

全部、こっちに寄る。

「どうだ」

俺は行商人に言う。

「……やばいな」

本音が漏れる。

「酒だけの話じゃなくなった」

「ああ」

頷く。

「これは――」

一歩、先に進む。

「“店”じゃない」

視線を広場全体に向ける。

「“市場”だ」


だが――

その動きを見ている者がいる。

高い場所から。

「……好き放題やっているな」

貴族の屋敷。

窓の奥。

男がワインを揺らす。

「酒だけでは飽き足らず……」

笑う。

冷たく。

「食まで握るか」

グラスを置く。

「面白い」


夜。

屋根の上。

風が強い。

「……来るな」

俺は呟く。

酒は広がった。

飲み物も。

食も。

「次は――上だ」

なら次は。

権力。

貴族。

国家。

「いい」

口元が歪む。

「全部、飲み込む」

発酵は、もう止まらない。

それは酒だけじゃない。

この街、そのものだ。

そして――

その中心に、俺がいる。

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