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勇者酒場 〜おっさん元勇者と封印の巫女〜  作者: 古太十三
第三章 

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21/23

21・旅立ちとトラウマ

東の地平線から、薄く光が差し込み始めた早朝。

まだ薄暗い勇者酒場の前に、大荷物を背負った三人組の影が見える。


ウィリアム、テュルソス、アイリーンである。


「戸締まり良し!忘れ物なし!お前たちも大丈夫だな?」


「大丈夫…。ウィル…ちゃんと、お弁当持った…?」


「わ、私も大丈夫です。しっかり準備してきました!」


すっかり引率者になっているのは、ウィリアム。この酒場の店主である。

出発前からお弁当を気にしているのはテュルソス。ウィリアムの小さな相棒だ。

少し緊張気味なのは、白いローブと旅装束に身を包んだ、アイリーンである。


これから、朝一番の魔道バスに乗る。

何度か乗り継ぎを行い、王都ロデイルへ向かう予定だ。

計画通りいけば、四日間の行程である。


三人は街の中心にある魔道車乗り場まで歩く。

裏通りを抜けていけば、三十分程で着くだろう。


ーーー


しばらく歩くと、三人は魔道バス乗り場に到着。

ウィリアムは窓口で乗車手続きを行っている。

そこから少し離れたベンチで、アイリーンとテュルソスは仲良く座っているようだ。


良く見ると、近くの屋台で買って来たのだろう、何か軽食を食べているようだ。

主にテュルソスだけだが…。

出発する前にしっかり朝食を食べていたが、どうやら足りなかったらしい。


この地域では良く見かける饅頭を、モグモグと美味しそうに食べている。

温泉の蒸気を利用して蒸し上げられた饅頭で、この辺りの名物だ。

中の具は多種多様であるが、今の彼女の気分はボアのひき肉が入った肉饅頭らしい。

小脇には饅頭の入った袋を抱えている。まだまだ食べるつもりのようだ。

隣に座るアイリーンは、ニコニコとその様子を眺めている。


「また食ってるのか? もうバスに乗るぞ?」


「ウィルも…モグ…食べる…? 朝食も…モグ…あまり食べてなかった…」


「きちんと飲み込んでから話せ。俺はいらん。大丈夫だ。」


手続きが終わり、ウィリアムが少女たちと合流する。

大食漢なウィリアムがテュルソスの誘いを断る。

体調が悪いのだろうか。

少し顔色も悪い気がすると、少女たちは心配そうにウィリアムを見つめていた。


しばらく後、三人は王都方面行きの魔道バスに乗り込んでいく。

大きなウィリアムが乗り込んでも、バスは大丈夫そうだ。

しかし、この大男は横にもデカいので、今回二人分の席を使用している。

もちろんチケット料金は二倍だ。

最後尾の席にウィリアム、その前の席に少女たちが座る。


今回、乗り込むバスは定員二十人程の中型魔道バスである。

王都には、五十人以上搭乗できる大型もあるらしいが、田舎街ではこれが一番大きなサイズであるようだ。

乗客の入りは七割くらいだろうか。


いよいよ、王都に向け出発である。


ーーー


出発してから数時間後。


ウィリアムの顔色がすこぶる悪く、青を通り越して土色になっている。

さらに、冷や汗が滝のように大量に流れ出し、目もどこか虚ろである。


そう、この大男は魔道車が苦手だったのだ。

それは過去のトラウマに起因する。


二十数年前、ウィリアムがまだ教団研究員だった頃。

ソフィアが、新技術を詰め込んだ魔道車を開発しようとした。

その走行実験にウィリアムを頻繁に駆り出したのだ。

というより、自ら乗り込もうとする彼女をウィリアムが止めた形である。


まだ開発初期段階での実験では、ブレーキが効かなかったり、スピードが出過ぎたり…。

はたまた、ハンドルが取れたり、タイヤが外れたり、それはもう散々なものであった。


あのウィリアムが怪我をした程である。

ウィリアムが頑丈だったから怪我で済んだが、もしソフィアが乗っていたら…。


その後、ウィリアムの尊い犠牲もあり、天才ソフィアは改善案をすぐに閃き、数ヶ月で新技術搭載の魔道車を完成させる。

その後、そのデータを元に他研究チームが魔道列車を実用化したようだった。


ウィリアムは、その時の恐怖体験で魔道車に乗ると、冷や汗が止まらない、顔色が土色になる、吐き気、頭痛等、各種体調不良に襲われる。

朝食をほとんど食べなかったのは、こうなることを見越したからである。


出来ることなら、魔道車に乗りたくなかった。

昨夜は少女たちの前では努めて平静を装った。

もしかしたら、数十年振りで平気になっているかも知れない。

そんな淡い期待を持っていたが、やはり駄目だった。

過去のトラウマは根深かったのである。


出来るだけ早く、王都に到着する必要があった。

その為には、魔道車に乗るしかなかったのである。

ちなみに、魔道列車は平気らしい。


そんなウィリアムを見て、少女二人は心配そうにしていた。

しかし、その大男はただの魔道車酔いだと言って、強がって見せた。

結局、少女たちにはどうすることも出来ないので、今は二人揃ってスヤスヤと寝息を立てている。


「ぐ…まだ次の街に着かないのか…。もう少しの筈だが…。一度降りて、自分で走った方が良いか…?ウッぷ…」 


少女たちの前では、強がっていた彼だが、いよいよ限界が近いらしい。


しかも、先ほどから山道に入ったのだろう。

魔道車が上下左右に揺れる。

身体が揺れる度に、限界突破しそうになるウィリアム。


本気で魔道車から降りて、並走しようかと考えた時、なにかの奇跡か魔道車は大きなブレーキ音を上げ…急停止したのである。


奇跡を起こす神は本当にいるのだろうか?


ここまで読んで頂きありがとうございます!

もし少しでも「続きが気になる!」「面白いかな?」と思って頂けたら、下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援頂けたら今後の励みになります。

ブックマークも嬉しいです。

よろしくお願いします!


天才ソフィア嬢は健在だったようです。

ウィリアム君は相変わらず振り回されていたようですね。

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