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勇者酒場 〜おっさん元勇者と封印の巫女〜  作者: 古太十三
第三章 

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19/23

19・策士


正午もだいぶ過ぎ、そろそろ夕方になろうとする頃、ウィリアムは開店に向けて仕込みなどを忙しそうにしていた。


勇者酒場の営業開始時間は基本、午後四時からである。

閉店時間は、その時々の客の入りや食材の余り具合で変わるようだ。


昨日は早めに閉店してしまったので、食材が余り気味だ…今日は安く提供するかな、などと考えながら開店準備を進めている。


そこに、アイリーンとテュルソスが外から帰ってきた。

しばらく前に、アイリーンが教団本部へ報告書を送りたいと言い出したので、洗濯も終わっていたテュルソスが郵便取扱所へ案内していたのだ。


ついでに足りない食材の買い出しと、ある用事も頼んでいたので、市場にも寄ってきたらしい。

ちょっとした荷物を二人で抱えている。


二人の頭にはお揃いの髪飾り。

羽根をあしらったデザインで、イミテーションの宝石が装着されている。

色はそれぞれ瞳の色で選んだのだろう。アイリーンが青で、テュルソスは赤だ。

出掛ける前には着けていなかったものなので、おそらく市場で買ったのだろう。


お揃いのものを身に着けられ、アイリーンは満面の笑顔である。


そうこうしているうちに、いよいよ開店の時間が迫ってきた。

この時、テュルソスが何かを思い出したように、わざとらしく手のひらをポンと叩く。


「あ、そうだ…さっき…良いものを買ってきた…」


そう言うと、ゴソゴソと先程の荷物を漁っている。

取り出したのは、1枚の衣服だった。


所謂メイド服というもので、膝丈上の黒のワンピースに、白のエプロンが既に装着されている。


おしゃれな喫茶店などでよく見かける、女性従業員の制服だ。

テュルソスがドヤ顔で持つメイド服は、それより幾分スカート丈が短い気もする。


「これを着て…リンもお店手伝って…?」


テュルソスは、アイリーンに気付かれないようこっそりこのメイド服を買ってきたようだ。

してやったりでメイド服を掲げている。


それを見たアイリーンは顔を真っ青にしながら、もちろん拒絶している。

いくら友達の頼みでも簡単には了承できなかったようだ。


「だ、だ、ダメです。ダメです。そんなうら若き乙女が人前で足を晒すなど、は、破廉恥です! 神のお怒りに触れます!」


昨夜同様、聞いたこともない教義を喚いている。

その時も軽く指摘したが、女性教団員、特に研究員たちは夏場に限らず普通に肌の露出が多い者もいる。


教団には服装に関する規定や教義は一切ない。


封印術など、知識の流出には目を光らせているが、服装の規定は元々学術集団ということもあり、かなり緩いのだ。


流石に女性聖職者(シスター)たちは楚々とした服装を好むが、夏場は普通に薄着である。


この場合、ただ単純にアイリーン本人が恥ずかしいのだろう。

ちょくちょく言い訳に神を使っているが、その方が罰当たりのような気もする…。


テュルソスはそんな激しく拒絶するアイリーンなど、どこ吹く風である。

また楽しそうに奥の扉へズルズルと連行していく。


おそらく開店間際でメイド服を取り出したのは、アイリーンに考える時間を与えないためだろう。


なかなかの策士である。


まぁ、分かりづらいが、あの時若干セリフが棒読みだった。

ウィリアムはすぐに、何かまた良からぬことを考えているな?と気付いたが、アイリーンはまだその小さな変化に気付けなかったのだろう。


そんな少女たちの背中に、呆れながらも声を掛ける。


「おーい! もうすぐ店開けるからなー、さっさとしろよー」

「た、助けてーー…」


アイリーンの虚しい助命の声が店に響いていった。


「フン。騒がしくなったもんだ…若いっていいねぇー…」


中年の切実な想いである。


数分後、奥の扉から満足げな顔のテュルソスが姿を見せる。

遅れること数秒、スカートの前を下に引っ張りながら、アイリーンはモジモジしながら登場。

顔を真っ赤にし、もちろん耳まで赤い。


不承不承、メイド服を着用し、白のニーソックスと白のカチューシャも装着している。

その周りではテュルソスがフンフンと鼻息荒く、最終チェックをしているようだ。


ウィリアムはそんな少女たちを、昨夜も同じ顔を見たなぁと、なんとなく傍観している。


「さぁ! 開店だ! ルー、看板を出してくれ!」


いよいよ、本日の勇者酒場の開店である。


開店と同時に数組の客が来店する。

昨夜いた常連客もその中にいるようだ。

あんなことがあったのに有難いことである。

テュルソスは素早くテーブルへ案内する。


アイリーンは店の端っこでまだモジモジしているようだが、よく耳を傾けてみると、小さな声でいらっしゃいませと、言っているようだ。

彼女なりに精一杯頑張っているのだろう。

ウィリアムはテュルソスに任せておけば大丈夫だろうと、特に気にしていない様子である。


次々と客が来店し、店は忙しくなってきた。

ウィリアムは料理や酒を次々と用意する。

テュルソスは案内と注文を受ける。

アイリーンはモジモジしている。


こうして、勇者酒場は今日も賑やかに営業を続けていくのであった。

以前にメイドメイドしている服は好きではないと言ったな?

あれは嘘だ!

銀髪美少女メイドが爆誕しました。

やはりこの3人だとよく動いてくれるので筆が早くなります。

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