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勇者酒場 〜おっさん元勇者と封印の巫女〜  作者: 古太十三
第二章 邂逅

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16/23

16・魔力学研究室

それから数日後の午後、俺は王都にある教団本部の正門前に来ていた。


その時の俺の服装は、いつもの下町丸出しの格好ではなく、ちょっと小綺麗な服を父親に頼み込んで、慌てて用意していた。

サイズが合うものがなかなか見つからず、少し焦ったが…。


教団本部は正門だけでもかなり大きい。

その正門から奥に、さらに大きい聖堂が見える。

実はいつもの図書館からすぐのところに正門がある。

普段はこちらまで来たことがなかったが…。

図書館は一般人も利用しやすいように、敷地から少し飛び出した形で建てられていたようだ。


そんな大きな正門や聖堂を眺めていると、敷地内からソフィアが手を振りながらこちらに向かってくる。


隣には若い女性を伴っているようだ。

実は会うのは初めてだが、以前から話を聞いていた人物だ。

彼女はソフィアのお目付け役で、自由奔放な天才ソフィアを監督する目的があるらしい。

一応、立場はソフィアの助手とのことだ。


眼鏡をかけた美人で、真面目そうな二十歳前後の若い女性である。

茶色の髪を後でお団子にして、ピシッと整えており、堅い印象を与える。

スタイルはスラっとして、女性にしては高い。…もちろん、俺に比べれば小さいが。

名前は確か、グレイスと言っていたか。

ソフィア曰く、見た目通り真面目で厳しいが、優しい人でもあるようだ。


「はじめまして。ソフィア様の助手をしております。グレイス・パトリックと申します。お噂はかねがねソフィア様より聞き及んでおります。何卒、よろしくお願いします」 


「こ、こちらこそ、よろしくお願いします。…ウィリアムです!」


「ははは。変なの!ウィル緊張してるの?」


と三人での顔合わせの挨拶を簡単に済ませる。

グレイスは見た目通り、お堅い人物のようだ。


そして、正門横の受付で研究棟区画にも進入できる、来客用パスを発行してもらい、遂に俺は教団本部に足を踏み入れるのであった。


ちなみに、聖堂までは一般開放されており、誰でも礼拝や見学ができる。

しかし、研究棟区画への立ち入りは厳重に管理されているようだ。


いつもの図書館への通館で敷地の縁を走ってはいたが、今回初めて敷地内に入った。


思っていた以上に広大で、一人だったら確実に迷子になりそうだ。

一周どのくらいあるのだろう? 軽いペースで二十分くらいだろうか?


と、研究室への見学に来ているはずなのに、俺はマラソンマンの思考になりつつ、教団内施設をもの珍しくキョロキョロと眺めていた。


敷地内は宗教施設というよりは、大学施設という側面の方が強いようだ。

以前、父親から無理やり教えてもらった教団の歴史によると、そもそも教団は学術集団だったらしい。

その側面が未だに色濃く残っているのだろう。


そうして、三人で歩いている最中でも、ソフィアとグレイスに挨拶してくる者は多くいた。

ソフィアは教団本部の有名人らしい。


やがて…数度、検問所を通過し…ソフィアを先頭に一際立派な建物に到着した。

どうやら、ここが魔力学の研究棟らしい。

こんな所に、俺のような子供が来て良いのだろうか?

少し…いや…かなり緊張してきた…。


ソフィアは特に気にすることなく、ズンズンと建物内に入っていく。

それに、背中を丸め付いて行く俺と、無表情なグレイス。


ソフィアはすれ違う研究者らしき人たちとも気軽に挨拶している。

彼らも彼女を見て笑顔になり、「今日も可愛いねー」とか、「今度また研究を手伝ってくれー」と声をかけている。


ソフィアはこの研究棟でも人気があるのだろう。

その後ろをビクビクと歩くデカい子供?を見て、怪訝な顔をしているようだが。


やがて、ある部屋の前で立ち止まる。

扉の前には[魔力学・第一研究室]という文字が書かれた、大きめの表札が掲げられていた。


(ん? 第一研究室?) 


俺が何かを思い出そうとしていると、既にソフィアは


「たのもー!」


ノックもせず、大きな声をあげながら勢いよく扉を開け放っていた。


俺は自由の権化であるソフィアに戦々恐々としながら、その背中越しからこっそり部屋の中を覗いてみる。

中はかなり広く、数人の研究員がそれぞれの研究を行なっているようだ。

皆、一様に忙しそうである。


部屋の印象は何かごちゃごちゃしており、お世辞にも片付いているとは言えなかった。

忙しそうにしていた研究者たちは、突然の大きな音と声と共に、開けられた扉とそこに立つ少女を驚いた表情で見ている。


「こんにちはー!お邪魔しまーす!」


と言いながら、ソフィアはまたもズンズンと研究室の中に入っていく。

お邪魔しますとは言いつつ、まるで自分の研究室のように振る舞っている。

ここの研究者たちとも当然顔見知りなのか、親しげに挨拶を交わしていた。


そして、ソフィアは部屋の奥で一層忙しそうにしている壮年の男性へ声を掛ける。


「ロバート教授!こんにちは!今日は前にお話しした、ウィルを連れてきたよー!」


ロバート? もしかして、ロバート・ステンシル?

その名前を聞いた俺は驚きを隠せない。


ロバート・ステンシル


魔力学の権威であり、様々な魔力学の論文を発表している、この学問の第一人者である。

魔力学の著書も様々で、初心者向けの入門書から上級者向けの専門書まで幅広い。


図書館で、俺が初めてソフィアに勧められて読んだあの魔力学の本も、この人が書いたものだ。

その後は、彼の様々な著書を読み漁り、ついには発表済みの論文まで読み込んでいる。


憧れの研究者である。


教団の研究者だとはもちろん知っていた。

しかし、見学先がロバート研究室だとは思ってもみなかった。

先ほど思い出そうとしていたのは、このことだ。

ロバート研究室は、教団本部魔力学・第一研究室なのである。


ソフィアは何も言っていなかった。

ソフィアは天才故か、少し抜けている所がある。


いつも、それで振り回されることが多いが、本来なら部外者立ち入り禁止の研究室を見学できると舞い上がってしまい、今回それを失念していた。


まさか、あの憧れのロバート研究室だとは…


ここまで読んで頂きありがとうございます!

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