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心の距離  作者: 桜井雛乃
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第十四条

 どうしたんだろう。妹子様は、とても悲しそうな表情をしていた。

 どうしたんだろう。妹子様は、瞳を潤ませながら私のことを見ていた。

 どうしたんだろう。妹子様は、とても温かい表情をしていた。

 どうしたんだろう。妹子様は、昔を懐かしむようにどこかを見ていた。

 どうしたんだろう。妹子様は、とても美しい表情をしていた。

 どうしたんだろう。妹子様は、私ではない誰かを見ているように思えた。

 もしかしたら、新しい恋を見つけたのかもしれない。

 でも妹子様はずっとこの部屋にいる筈だし、どこで別の男と出会ったというんだろう。まさか、女に恋したって可能性もある。

 今の彼の瞳に映っているのは、一体誰なんだろう。

 私は妹子様の視界に映らなくなることを恐れて、自由を奪うようで悪いとは思いながらも、仕事場に行かせず部屋に閉じ込める道を選んだ。

 それなのに、どうしてこうなってしまったんだろう。

 私の強い独占欲と醜さに、妹子様は私のことが嫌いになってしまったんだろうか。

 出勤している間に、外へ出たり誰かを連れ込んだりしているとか? 妹子様に限ってそんなこと。

 その前に、どうして私は妹子様を疑っているんだろうか。

 誰より妹子様のことを信じていた筈なのに。

 どうしたんだろう。太子は、とても悲しそうな表情をしていた。

 どうしたんだろう。太子は、瞳を潤ませながら僕のことを見ていた。

 どうしたんだろう。太子は、とても温かい表情をしていた。

 どうしたんだろう。太子は、今ではない何かを信じるようにどこかを見ていた。

 どうしたんだろう。太子は、とても美しい表情をしていた。

 どうしたんだろう。太子は、僕じゃない誰かを見ているように思えた。

 もしかしたら、新しい恋を見つけたのかもしれない。

 でも太子は外では依然と同じように話し掛け辛い雰囲気のままな筈だし、どこでそんな男と出会ったというんだろう。まさか、女の巧妙な罠に嵌ったという可能性だってある。

 今の彼の瞳に映っているのは、一体誰なんだろう。

 僕は太子に愛して貰いたくて、一人でお留守番は寂しいけど、仕事場に行かず部屋からも出ないという道を選んだ。

 それなのに、どうしてこうなってしまったんだろう。

 僕の意地悪な態度と卑怯さに、太子は僕のことが嫌いになっちゃったんだろうか。

 出勤してから、誰かに愛を囁いているとか? 太子に限ってそんなこと。

 その前に、どうして僕は太子のことを疑っているんだろう。

 誰よりも太子のことを信じていた筈なのに。

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