第十三条
我慢しようと努力はするけれど、そこに妹子様がいると分かっていて、我慢出来る私ではないと思っている。
私だって、私のことくらい分かっているから。
ただそうだとしても、妹子様が与えてくれたお仕置きを守らないという訳にもいかない。
妹子様の言い付けを守らないなんて、ご主人様の言い付けを守らないなんて、そんなのは奴隷失格だから。そうはなりたくないし。
精一杯、一生懸命努力しないと。
「太子、物凄い形相ですよ? どうなさったのですか」
分かっているくせに、そんなことを言ってくるんだから妹子様は意地悪だ。
最近私がちょっと調子に乗ってるな、とかそう言うのは私自身も自覚がある。
以前は、妹子様に虐められたり馬鹿にされたり、辱めを受けたりだとかそう言うことに快感を覚えていた。それは今だって変わらない。
でも今の私は、妹子様を虐めることにすら快感を覚えてしまっている。
支配されたい。そんな欲望に埋め尽くされていた私の心が、反対に支配したいという欲望に埋め尽くされていくんだ。
忠誠心は変わらない、筈なのに……。
どうしてしまったんだろう。
妹子様の泣き顔の、あの反則級の愛らしさに触れてしまってから、触れてしまったから、なのだろうか。
別に僕は、太子より優位に立っていたいと思う訳じゃない。
それでも僕が主人で太子が奴隷で。その関係が崩れたら、二人で愛し合っているこの関係だって崩れてしまうような気がして。
文通をしていた頃の想いや関係が、変わってしまうのが怖くって。
あの頃は純粋に愛し合っていた筈なのに、太子はどこか変わってしまった。
今だって変わらずに、僕のことを愛してはくれている。愛してくれているけど、関係に変化が起こっているの。
なんだかそれが無性に怖い、怖いんだよ。
もしかしたら僕は、ただ太子に大丈夫だって、愛してるって言って欲しいだけなのかもしれない。
不安で不安で仕方ないから、慰めて欲しいのかもしれない。
そんな僕の気持ちに、気付いて欲しいってだけなのかもしれない。
「妹子様? 妹子様こそ、どうなさったのでしょう。青い顔をなさっておられます。具合でも悪いのでしょうか」
我に戻ると目の前に太子の顔があって驚いてしまった。
心配そうな目を向けてくる太子のその姿は、確かに優しくて愛しくて。でも僕が恋した太子は、冷静で冷淡で冷たくて。
誰に対しても平等で、無関心なふりをして守ってくれるような人だった。
五年の月日はこうも人を変えてしまうのか。




