第一章 超国家主義者の戦争
※ 今作品ではモデル国家や人物が登場しますがあくまでフィクション作品であることをご理解いただいたうえでご覧ください。政治的思想が混じることから差別的発言や行動が発生することもありますが意図的にモデル国家や人物に対したものではないことをご了承ください
2093年2月、シンガポール、南アフリカからアトランティック連邦の海兵隊が次々と輸送船に乗って移動を開始した。彼らの目標はテロリストによって支配されたアラビア連邦の解放であった。この作戦には計100万人規模の上陸部隊が参加しその中には上陸用の水陸両用の機甲師団30師団も用意されていた。
この戦力を前に事前に援護の旨を聞き、民間人の避難や貿易船の護衛を依頼されていたポンド統合連盟や極東連合らの船員らは「テロリストもこの時代によくあんなことしたな」と談笑をしながら笑っていた。そうしているうちにスリランカ南部で民間船を護衛していた極東連合海軍はシンガポールから上陸のために移動していた艦隊を見つけ、多くの船員が応援と半分冗談程度の笑顔で国旗を振りながら見送っていた。
実際この作戦は全容が話されずとも事前に各国のニュースでアトランティック連邦国防大臣から「短期で決着をつけ、自由を取り戻す」と宣言を聞いていたため誰もがかつての独墺帝国時代とは比にならないことに気づいていなかった。
そして同年6月、ついに沿岸部に到着したアトランティック連邦軍は即座に上陸戦を開始し、海軍からは数隻の空母から戦闘機が出撃し上陸地点や周囲の都市に攻撃を開始した。これを受けペルシア海軍も出撃したがかつての世界最大国家には手も足も出ず海戦では大敗し上陸を許すこととなった。
これを受けペルシア海軍は撤退し上陸作戦が開始さてから二か月後の8月にはバグダードまで制圧することに成功した。これによりアトランティック連邦航空隊は首都テヘランへの攻撃を敢行し、この大規模な攻撃は民間人を無視した無差別爆撃の末、ペルシア統一政府現国家元首兼テロリストであったカリム・アル=ラシードガ死亡した。この作戦はテロリストを殺害するためとアトランティック連邦は説明したものの数万人の民間人を巻き込んだことで国内外で非難を受け、一時的に両国は戦線を停止することになった。
その後ペルシア統一政府では新国家元首としてアミール・アル=ナセルが就任し、地下壕での演説で「全元首は偉大な方であった。国家に繁栄を与えるために天から舞い降りたのにそれを外国が阻害した。我々は戦う。敵がいなくなるその日までだ」と述べ、戦闘の継続を宣言した。これによってアトランティック連邦政府は「テロリストがいる限りこの戦争は終わらない」と再度攻撃を開始し、ついにアラビア半島の東部、南部を制圧するに至った。
そしてオマーンに展開していたアラビア戦線総司令部では次の攻勢への準備を進めていた。周囲の司令官は各戦線での状況を聞きながらどこへ攻撃するか、空軍の支援をどこに行うかなどを話していた。戦局は優勢を保っていることもあり多くの司令官は冗談を交わしながら戦争中にもかかわらず雑談をしたり、勝ち方の結果を賭けているもいた。
しかしその中で一人町中を走り抜けてくるものがいた。彼は総司令部に到着すると息を切らしながら何か伝えようと必死に言葉をつないでいた。一人の司令官がいったん落ち着くように水を渡し、一息ついたその兵士は敬礼しなおして声を張って報告した。「ご報告します!オマーン西部航空隊より伝令!我々の展開している航空機より上空に遥かに巨大な反応をレーダーがキャッチしたとのことです!」これに周囲の司令官は顔を合わせながら不思議そうに質問した。「それでそれは何だ?大型の爆撃機か?どこか攻撃は受けたのか?」そう言うと兵士は少し勢いを失ったように少し声のトーンを下げて報告した。「正体は不明です。ただ、レーダーからの計測だと全長は18メートルに上る可能性があり、大型の飛行機との予測が出ていましたが、爆撃隊が通常の軌道がおかしいことや、速度が明らかに遅いことから可能性としては空挺部隊の輸送機である可能性が高いとのことでした」これを聞き周囲の司令官は少し考え、「では前線の部隊にこれ以上の攻撃をやめ、防衛に徹するように伝えてくれ」と伝令兵に指示を出した。
そしてその報告を受けてから数時間後オマーン都市に展開していた航空部隊から総司令部に報告が届いた。内容は「正体不明の多数の機体が西より接近している」ということだった。その後詳しい操作によって正体不明の機体は数が5機であることと全長推定が18メートルであったことから先ほどの報告にあったものであることを断定した。これによって総司令部は大規模な空挺降下が予測されると都市部全域での対空砲の展開や軍の迎撃準備が進められた。
一方でのテヘラン地下壕ではアミール・アル=ナセルとペルシア統一政府軍総司令官「ファリド・アル=ザヒル」が報告を聞きながら酒を片手に話し合っていた。「この作戦が成功すればきっとアトランティック連邦政府は講和を結ぶだろうな」と高らかに語るアミールに対してファリドは冷静に「今回の作戦の成功は全世界の支配の第一歩に過ぎないことを忘れてはいけないぞ。独墺帝国がなせなかった全世界の完全支配。これを我々が成すためにこの兵器を用意したのだからな」その言葉にアミールは少し落ち着いて「心配するなよ。じゃなければあの国の研究者をわざわざかくまって作るわけないだろう?あの国が負けたのはいかれた政治のせいなんだ。きっとこの時代にまた残っていれば今頃俺たちはあの国の植民地だ。な?」そういうと少し鼻で笑い両者は腕を上げて「時代の生まれ変わりと愚か者の虐殺に乾杯」と酒を酌み交わした。
そしてオマーン総司令部ではついに総司令部がある建物近辺にレーダー反応が接近した。その瞬間突然レーダ上の動きが停止した。レーダーを確認していた士官や周囲の兵は首を傾げたり空を見つめていた。
「空挺降下が始まったのか?でも輸送機が止まるなんてあるのかよ?」レーダーを見ていて周囲の兵は混乱し、誰もが沈黙し一瞬周囲の音が静まり返った。その瞬間、外を眺めていた兵士が大声で叫ぶ。「空から何か降ってきたぞ!」その言葉を聞き周囲の兵士は急いで外を見上げた。誰もが原子爆弾の可能性に緊張感が広がっていく中で一人がゆっくりと呟いた。「あれはなんだ...」
誰もが見ているはずなのに彼以外は皆固まったように静かに眺めていた。やがてはっきり姿が見えるようになると兵士は大混乱に陥った。「巨人が降ってきた!」次々に彼らは口にし対空砲に座っていた兵士は冷や汗を流しながら迎撃を開始した。その巨人の一体がその対空砲の方に向くと巨大な銃を向けて攻撃してきた。弾は直撃を免れたものの威力は砲撃に引けを取らず、対空砲陣地やその周辺は砂煙とともに建物が倒壊し多くの兵士が生き埋めになった。
そして5体の巨人はついに地上に着地するとその衝撃で砂煙が舞い、地上部隊は煙幕同然の状態に動けずにいた。さらに巨人の一体がひとつの建物に砲撃すると一撃で建物は倒壊し、外に出てきた司令官らを巨大な足で踏みつぶした。これによってオマーンに展開していた、アラビア戦線の司令部は完全に沈黙し各地に展開していた兵士は司令部の指示がないまま補給が届かない砂漠で持久戦を開始することになり、さらに追い打ちをかけるようにオマーン西部航空隊のある航空基地や、東側に上陸し展開していたアトランティック軍の司令部、さらには補給用の港にも巨人が10体から20体の規模が降下し、各地に展開していたアトランティック連邦海兵隊は逃げ場のない戦場で降伏するか戦うかを迫られることになった。
さらに状況の変化を受け海軍が再度出撃するも海でも正体不明の反応を検知すると高速で魚雷を交わしながら駆逐艦に打撃を与え多くの艦隊が損傷を受けながら今回の上陸作戦の失敗を認知し撤退戦を開始した。
その中で沿岸部を歩いている巨人を見つけたアトランティック艦隊は「やられてばかりが俺たちじゃないことを証明してやる」と戦艦を中心に一斉砲撃を開始し砲撃の弾が胸に直撃すると撃破することに成功し、さらにオマーン側でも上陸していた機甲師団の決死の攻撃と対戦車火器の一斉掃射によって体勢を崩した巨人にさらに攻撃することで数機撃破するとそれを鹵獲することに成功し、生きていた僅かな海兵隊と海軍は全員を回収すると即座に撤退を開始した。
今回の大敗によってアトランティック海兵隊は約78万人が死傷し、海軍も参加したうちの2割が沈められるなら大打撃を受けることになった。この結果に世界は驚愕し、専門家の間では「時代が移り変わるときには必ず我々の想定を上回ることが発生する。日本という国が列強入りする時に清やロシアを撃破した時も。独墺帝国が誕生した時も。もしかするとまた時代が新しい方向に変化しようとしているのかもしれない」と次々に述べ、多くの国でもペルシア統一政府に対して融和的な政策をとることが行われ、それに便乗するようにテロリストの一部は海軍や新兵器を用いて、周囲の島々の制圧に乗り出していた。
彼らは海賊を装い制圧したのち、ペルシアへの上陸に必要な要衝となっていた「キプロス島」「マダガスカル島」「スリランカ島」を実効支配し、それからはアトランティック連邦だけに限らず紅海を通るすべての貿易船に対して強制検査を実施するならインド洋の支配を確立した。
各国はこういった現状を踏まえたうえでもかつての超大国であったアトランティック連邦の上陸戦の大敗の経験から動けずに静観することしかできなかった。一方でこの情勢に対して最初に動き出したのは東亜連合であった。かの国ではペルシア統一政府を中東における唯一の政府として任命し、あろうことかテロリストとの技術協力を始めていた。
これにたいしてアトランティック連邦は憤慨し、国家プロジェクトとして鹵獲した巨大な人型の兵器の研究、生産を開始した。このプロへジェクトの開始から5年、アトランティック連邦では極東連合の協力もあって新兵器の自国開発に成功し名称を「Tactical Armor」通称「TA」と呼称した。
性能としては機動力や旋回性は戦闘機などに引けを取らないにもかかわらず武装したライフルの威力は戦車にも引けを取らないものになっていた。直ちに政府は軍人に対して搭乗訓練やパイロット募集を始めた。しかし、過去の大敗や敵国との研究期間の差が原因となって国内では多くの者はパイロットへの搭乗を拒否し常にアトランティック連邦軍内では人手不足に悩まされた。
そのため政府は緊急措置として国内にて展開していた傭兵集団への交渉を行い、アトランティック・セキュリティとのパイロット契約を締結した。アトランティック・セキュリティはすぐにパイロット適性のある人物を数名任命し、訓練に参加させたが結果は芳しくなく、政府としても人数を増やして数的有利を維持するべきであるのと結論を出し、国民向けに民間軍事会社「アトランティック・セキュリティ」としての募集を開始した。
高収入で働くことが出来るということで応募が絶えなかったがそれでも試験に合格しているものは少なくアトランティック連邦は数年、ペルシア統一政府に対して大きく攻撃することが出来ず、常に人員不足の解決に向けて国内問題の解決に向けて奔走することになった。
そして、アトランティック連邦都市「ニューヨーク」では一人の男性がパソコンに向き合いながら頭を抱え、ホテルの一室でうなだれていた。そのパソコンの画面は会社が経済難により一部海外に展開した人物のリストラ通知であった。「まじか...優秀だからで海外に派遣したんじゃないのかよ。まだ来てから3年なのにもう帰国かよ」そう嘆いていたのは国際警備会社に勤めていた特別警備員「新渡戸 零」であった。彼は成績が優秀であり、また運動神経や海外留学の経験からアトランティック連邦の主要人物の警備に海外出張していた。その中でのリストラ通知に彼は頭を抱え、少し下を向いた後に「まぁ変えれば何か仕事はあるだろ」と開き直り、パソコンを閉じようとマウスに手を伸ばした瞬間、外から爆発音ともいえる音とともに人の悲鳴が聞こえた。その声に振り向いた零は外の光景に唖然としていた。
to be continued...




