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この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~  作者: 鳥助
第二章

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67.風邪薬調合開始(1)

「とりあえず、ルイは錬金術の成果を示して。その上で、ルイが利用されて使い潰されないようにするから」


 柔らかく微笑みながらそう告げたファルスお兄様は、迷いのない足取りで屋敷を後にした。


 一体、何をするつもりなのか。具体的な策は何も聞いていない。それでも、不思議と不安よりも安心の方が勝っている。私一人では見落としていた社会の現実を、きっとお兄様は理解している。そして、それに対処できる力も持っている。


 ならば私は、私にしか出来ないことをするだけだ。守られるだけの存在にはならない。支えてもらえるのなら、その分、私は結果で応えればいい。


「よし、調合を始めよう」


 自室の机の上に、採取してきた素材と道具を丁寧に並べる。採取した植物系の素材、それに瓶に入ったモーンワームの分泌液。見た目こそ不気味だが、確かな薬効を秘めている。


 問題は、完成形の形状だ。薬には様々な姿がある。粉末、錠剤、軟膏、液体。扱いやすさ、保存性、効き目の速さ。どれを優先するかで最適解は変わる。


「どんな形状がいいかな……」


 指先で分泌液の入った瓶を持ち上げ、光に透かして観察する。粘度は低く、完全な液体。これを無理に固形化しようとすれば、余計な工程が増え、成分を損なう可能性もある。


 植物素材は乾燥状態なら粉末化も可能だが、分泌液と均一に結合させるには溶媒が必要になるだろう。


「液体を固形にするのは難しそうだから、完成形は液体の薬にしよう」


 即効性も考えれば、液体は理にかなっている。体内への吸収も早いし、子どもや高齢者にも飲ませやすい。方針が決まれば、迷いはない。


「じゃあ、まずは植物系の素材から成分を抽出するところからだ」


 まずはイイキカの葉。薬師協会で使っていたものは、品質が悪く、薬効成分が少ないものだった。


 だけど、このイイキカの葉は保存状態も良くて品質が高く。ちゃんと薬効成分を抽出出来れば、従来の風邪薬よりも高い薬効が期待出来る


「液体の薬にするんだから、水に入れて成分抽出かな」


 ビーカーの中に水を入れ、イイキカの葉を入れる。混ぜ棒を入れてかき混ぜて、【成分抽出】を施す。さて、この状態ではどんなものかな。


【水】


・ただの水


「やっぱり、加工しなくちゃ成分抽出は出来ないか。始めの加工は細切れだね」


 イイキカの葉を取り出し、まな板の上に置く。【切断】の魔法で細切れにすると、再びビーカーに戻した。混ぜ棒を入れて【成分抽出】を施す。


【???の水】


・微量の熱を抑える成分が抽出されている


「来たね。さらに進めると?」


【???の水】


・微量の熱を抑える成分が抽出されている


「変わらない、か。じゃあ、熱を加えたらどう?」


 【温度上昇】で水をお湯に変え、再び【成分抽出】を施す。


【イイキカの液】


・熱を抑える成分が抽出されている


「よし、来た!」


 これで一つ目の植物系素材の調合が完成した。特に問題もなく、スムーズに行ったと思う。


「じゃあ、次は――レトレトム草!」


 これもイイキカの葉と同じだ。元の薬は品質が低くて、十分な効力を発揮できずに終わっていた。だけど、今回はちゃんとした品質のものを取ってきたし、錬金術だってある。きっちりと成分を抽出することが出来るだろう。


 レトレトム草もイイキカと同じように【成分抽出】をした。そのままだと【成分抽出】が出来なくて、刻んだら微量。熱を加えても微量だった。


 でも、大丈夫。私には今までの経験があるから、まだ方法はある。今度はレトレトム草を乾燥させて、水に浮かべた。すると――。


【???の水】


・微量の咳を抑える成分が抽出されている


「来たね! でも、微量か……。じゃあ、ここは熱を加えて……」


 【温度上昇】で水をお湯に変え、そのまま【成分抽出】を行う。


【レトレトムの液】


・咳を抑える成分が抽出されている


「うん、上手くいった。えへへ、今までこういうことを経験してきたから、スムーズに行くね」


 私も錬金術を分かってきたんじゃない? 経験を積んできたお陰で、素材の扱いも分かってきた。上手になっていっている実感がして、とても嬉しい。


「さぁ、どんどんやろう! えっと、次は……エイリカの花だね」


 目の前にエイリカの花を置き、考える。薬師協会で鑑定した時は乾燥させすぎで、有効成分が失われていると表示されてあった。だから、このエイリカの花は乾燥させたらダメだ。


 じゃあ、抽出方法はやっぱり同じように水に入れて【成分抽出】? とにかく、前例がないんだから、やってやってやりまくるだけだ!


 それから私は花びらを水に浮かべたり、切り刻んで入れたり、お湯にしてゆでたりした。その結果――


【???の水】


・微量の鼻水を抑える成分が抽出されている


「だ、ダメだー! 成分がちゃんと抽出出来ない!」


 ここにきて、手が止まってしまった。


「何がいけないの……。乾燥させたら有効成分は崩れるから、生のまま抽出したのに……」


 腕組をして唸りながら考える。こういう時は前世の記憶を掘り起こす。前世では花から成分を抽出する時、どんなやり方があっただろうか?


 生のまま使ったり、乾燥させて使ったり、後は……。


「あっ、そうだ! 蒸すっていうやり方があったんだ!」


 花から油を取り出すために、水蒸気蒸留法というものがあった。その方法を使えば、花から成分を取り出せるかもしれない。


「よし、なら新しい道具を……【道具召喚】!」


 新しく道具を召喚した。その道具はガラスで出来ており、三つの容器が一つの管によって繋がれている。


 一つの容器は素材を入れて煮出して水蒸気を発生させる場所。その隣に水蒸気を冷却させる場所。その隣には水蒸気を油と液体に分ける場所になっている。


 この方法なら、花の成分を水で薄めることはせずに、ちゃんとした成分が抽出されるはずだ。


「じゃあ、こっちに花びらと水を入れて……。真ん中に冷却用の冷たい水を。そして、【温度上昇】」


 花びらを入れた容器に【温度上昇】をかける。すると、次第に水がお湯になり、ポコポコと気泡を作って沸騰し始めた。それと同時に【成分抽出】の魔法をかける。


 そこから水蒸気が出ると、管を伝って隣へ。そこで冷却された水蒸気が、最後の容器の中に液体となって落ちていく。


 じっくりと煮出していくと、最後の容器に液体が溜まっていく。一つは花の成分が溶けだした水、その上にはうっすらと油が溜まっていった。


「さて、これでどうかな?」


 ドキドキしながら、鑑定をかける。


【エイリカの液】


・鼻水を抑える成分が抽出されている


「やった! ちゃんと成分抽出されてる!」


 この方法は成功だ! それにしても、まだまだ他のやり方があったとは……。前世の記憶があって良かった……。物作りしていて良かった……。


「じゃあ、この調子で最後の素材も終わらせるよ!」


 さぁ、次は植物系素材の最後だ。それが終わったら、いよいよモーンワームの分泌液に取り掛かろう!

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