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この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~  作者: 鳥助
第二章

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64.モーンワーム(2)

 森の奥へ進むにつれ、足元の土は柔らかくなり、ところどころに不自然な盛り上がりが見えるようになった。


「……あった」


 私はしゃがみ込み、地面を指差す。円形に掘り返された跡。周囲の落ち葉が内側へ引きずり込まれたような痕跡。


「新しいな」


 アルビスさんが低く言う。槍を構え、周囲へ視線を走らせた。穴の縁はまだ崩れたばかりの湿り気を残している。土の粒が乾いていない。つまり、近くにいる可能性が高い。


「ルイ、下がれ。周囲を見る」

「うん」


 私は一歩下がり、代わりに穴の形状を観察する。直径は私の胴より少し広いくらい。モーンワームの体格と一致する。


 地中から出て、どこへ向かったのか。その時、ふと葉擦れの音がした。私はゆっくりと顔を上げる。


 ――いた。


「アルビスさん。上」


 小声で告げる。太い木の枝。陽光を遮る葉の影。その上に、太く丸い影が絡みつくように横たわっている。鮮やかな緑に黒い斑点。ぬらりと光る体表。モーンワームだ。


 枝にしっかりと腹部を巻きつけ、葉をもしゃもしゃと食んでいる。どうやらこちらにはまだ気づいていない。アルビスさんが静かに頷き、槍を握り直した。


「落とす」


 短い宣言。枝を狙って突けば、足場を失って地面へ落ちる。そのまま拘束に移れる。けれど、私はとっさに手を伸ばした。


「待って」


 ぴたり、と槍の動きが止まる。


「……どうした」

「先に、鑑定させて」


 アルビスさんが怪訝そうに眉を動かす。


「さっきの個体は、死んだら成分が確認できなかった。生体状態じゃないと出ない可能性があるなら……」


 私は枝の上のモーンワームを見つめる。


「どこに、その成分が含まれているのか。事前に知っておきたい」


 闇雲に捕まえても、採取部位を間違えれば意味がない。最悪、刺激を与えすぎて成分が失われる可能性もある。


 アルビスさんは数秒、無言で私を見た。すると、強く頷いた。


「気づかれないようにな」

「ありがとう」


 私は木陰に身を寄せ、意識を集中させた。対象、枝上のモーンワーム。


【モーンワーム】


 ヴェルーザ山下層に生息する地中性魔物。


 ――中略――


 糸を生成する分泌腺には免疫活性因子が高濃度で含まれている。この因子は生体活動中にのみ安定して存在し、死亡後は急速に分解されるため、生体反応を維持した状態での採取が推奨される。


「……あった」


 ちゃんとある。免疫活性因子、これが私が求めていた成分だ。


「アルビスさん」

「どうだ」

「体の真ん中あたり。外皮の内側に、免疫活性因子が生成される部分があるみたい。死んだら分解されるって」

「……厄介だな」

「うん。でも、不可能じゃない」


 私はモーンワームの太さを目測する。体幹中央部。あのあたりだ。


「完全に仕留めないで。動きを止めるだけでいい。外皮を大きく裂かないように」


 アルビスさんは枝上の個体を見上げ、距離と角度を測る。


「落とした瞬間に暴れるぞ」

「固定出来るものがあれば……ちょっと待って」


 道具が必要なら作ればいい。そのために私は【道具召喚】なんていう魔法があるんだから。


 錬金術に直接関係ないけど、大丈夫だよね。私は縄を想像して、魔法を使った。すると、目の前に縄が現れた。


「出てきた! これで、モーンワームを縛って」

「一体、どこから……。まぁ、いい。これでモーンワームを掴まれられる」


 アルビスさんは縄を受け取ると、素早く手の中で輪を作った。片手に縄、もう片方に槍。視線は枝に張り付くモーンワームを正確に捉えている。


 次の瞬間、槍が唸りを上げて投げ放たれた。穂先ではなく、あえて柄の部分が狙い通りに命中する。バランスを崩したモーンワームの巨体が大きく揺れ、そのまま枝から滑り落ちた。


 どすん、と重い衝撃音が森に響く。地面に叩きつけられた瞬間には、もうアルビスさんは動いていた。迷いなく踏み込み、跳ね起きようとするモーンワームへ飛び掛かる。


「今だ!」


 太い体の下へ腕を差し込み、素早く縄を通す。ぬめる外皮に滑りそうになりながらも、力任せに引き絞る。モーンワームが激しく身をよじるが、構わない。


 そのまま体重をかけて引きずり、近くの太い木へと一気に寄せた。


 木の幹を背にさせる形で体を固定し、素早く縄を巻き付ける。一周、二周。逃げ場を与えないよう、体幹中央部をしっかりと締め上げる。


 最後に幹へ固結びを打ち、全体重をかけて締め込んだ。モーンワームはびくびくと暴れているが、もう大きく動くことはできない。


「……よし。押さえたぞ」


 アルビスさんが低く告げる。木に縛り付けられた巨大な芋虫は、身をくねらせながらも拘束されたまま。生きたまま、確保成功だ。


「わぁ、ありがとう! これで、素材が採取出来る!」

「縄が解けないうちに、早く素材採取を」

「うん!」


 私は木に縛り付けられたモーンワームの前に立つ。さて、どうやって素材を取るか。だけど、すでに私はそこをちゃんと考えている。


 【道具召喚】で注射器を召喚した。そう、この注射器があれば、生きたまま素材を採取することが出来る。


 鑑定を使って、モーンワームの体を探る。そして、目的の分泌腺の場所を特定した。その部分に向けて注射器の針を刺した。


 そして、吸い上げると――透明で少し黄色い分泌液が出てきた。その分泌液を【道具召喚】で出した、瓶の中に入れる。


「やった! 素材採取出来たよ!」


 後は、これを沢山取るだけだ。私はそのままモーンワームに注射器を刺し、分泌液を採取していった。

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