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神に楽しめと言われた。楽しみすぎて、神を超えた。  作者: issoh


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第95話 試験結果と成績優秀者

# 第95話 試験結果と成績優秀者


## 結果発表の日


 目が覚めた。


 天井。見慣れた天井だが、今日は違う種類の緊張感がある。


 (今日だ。試験結果の発表だ)


 試験が終わって数日。あの三日間の激戦の後、ずっと胃の奥に小石が入っているような感覚があった。


「ん……セラ、起きたのか?」


「ああ。朝だよ」


「今日、結果発表だな……ドキドキするな」


「大丈夫。勉強会で十分やったし」


「セラが教えてくれたから、俺たちもだいぶ理解できた。ありがとうな」


「先生ではないけど」


 鏡に映る銀髪のエルフの顔。少しだけ目の下が青い——昨晩あまり眠れなかった証拠だ。


「行くぞ」


「ああ」


 食堂へ向かうと、アリアとミナがテーブルに座っていた。


「おはよう、セラくん」


「おはよう、アリア、ミナ」


「おはようにゃ〜。今日、結果発表だね」


 ミナは少し緊張した様子で、猫耳をピコピコさせている。


「どうかな……。魔法理論はちょっと難しかった」


「大丈夫。アリアは真面目に勉強してたし」


「うん、セラくんに教えてもらったおかげで、だいぶ分かるようになったよ」


「魔法理論の問い三、感情と魔力のリンクのところ、セラくんのノートを見せてもらったから、ちゃんと書けたと思います」


「いいな、その自信」


 朝食はパンとスープ。セラはパンをかじりながら、今日の結果発表についてシミュレーションする。


 合格点は六十点以上。勉強会でやった範囲がしっかり出ていたはずだ。ゴウタもサクラさんも、アリアも、みんな頑張っていた。


「お、セラ!」


 食堂から出ると、ゴウタが駆け寄ってきた。


「朝だな。緊張するか?」


「少し! でも、セラが教えてくれたから、なんとか書けた気がします!」


「先生って呼ぶな」


「でもよ、お前が教えてくれたのは事実だろ」


「……まあ、そうだけど」


「サクラさん、昨日の魔法陣の試験、どうだった?」


「はい。教えてもらった覚え方で覚えて、全部書けました」


「いいな、正解できてるといいな」


 一年A組の全員が集まった。緊張しつつも、期待に満ちた表情が並んでいる。


「よし、みんな。結果が出るまで楽しみにしよう。俺たちならできる」


「おお!」


「頑張るぞ!」


 教室へ向かうと、リナ先生がすでに来ていた。手に成績表の入った封筒を持っている。


「席につくこと。今日は結果発表だ」


 全員が一斉に自分の席へ向かう。


「緊張するな……」


 アリアが小声で呟く。


「大丈夫。頑張ったんだから」


 セラが励ますと、アリアは少し安心したように頷く。


「まずは全体から報告する。一年A組の合格率は……百パーセントだ」


「おおお!」


「やったぁ!」


「やりました!」


 クラスメイトたちが喜びを爆発させる。ゴウタがガッツポーズをし、ミナが飛び上がる。サクラさんは目に涙を浮かべている。


「静かに。まだ続きがある」


 リナ先生が手を挙げると、教室が静まり返る。


「今回の試験は、例年以上に高い水準だった。特に魔法理論と魔法史の成績が良かった。みんな、よく頑張った」


 誇らしさが先生の表情に滲んでいる。


## 成績優秀者に


「では、個人の成績発表をする。名前を呼ばれた者は前に来て、成績表を受け取ること」


「アリア・グリーン」


 アリアが立ち上がり、前に出る。


「魔法理論、七十五点。魔法史、八十点。魔法陣基礎、八十五点。実技、合格。一般教養、七十八点。総合評価、合格」


「やった……!」


 アリアの目から涙が溢れる。セラも口元が緩む。アリアは頑張っていた。


「ミナ・フィールド」


「はいにゃ!」


「魔法理論、七十二点。魔法史、七十八点。魔法陣基礎、八十点。実技、合格。一般教養、七十五点。総合評価、合格」


「にゃー! やったにゃー!」


 ミナが猫耳をピコピコさせて喜ぶ。


「ゴウタ・マグナス」


「はい!」


「魔法理論、六十八点。魔法史、七十点。魔法陣基礎、七十二点。実技、合格。一般教養、六十五点。総合評価、合格」


「よかった……! 合格だ……!」


 ゴウタが胸をなで下ろす。


「サクラ・イズミ」


「はい」


「魔法理論、八十二点。魔法史、八十五点。魔法陣基礎、八十八点。実技、合格。一般教養、八十点。総合評価、合格」


「ありがとうございます!」


 サクラさんが深くお辞儀をする。優秀な成績だ。


 次々と名前が呼ばれていく。全員が合格を勝ち取る。


「セラ・ウィスパーウィンド」


 セラが立ち上がり、前に出る。


 リナ先生が成績表を渡す。その時、リナ先生の目に特別な光が宿った。


「君は……別格だ」


「魔法理論、九十八点。魔法史、九十五点。魔法陣基礎、百点。実技、特別合格。一般教養、九十二点。総合評価、特別優秀」


 教室が静まり返る。


「え……?」


「魔法理論、九十八点!?」


「魔法陣基礎、百点!?」


「特別優秀って……?」


 クラスメイトたちが驚きの声を上げる。セラ自身も驚く。自分の成績がここまで高かったとは。


「静かに」


 リナ先生が教室を鎮める。


「セラ君の成績は、一年生で過去最高得点だ。特に魔法陣基礎の満点は、三年生でも滅多に取れない」


「す、すごい……」


「特別合格というのは、実技試験で上級魔法『エアロ・ストーム』を成功させたことによる特別評価だ。一年生で上級魔法を成功させるのは、学園創立以来初めて」


「そして、もう一つ発表がある。今回の試験における成績優秀者の発表だ」


 教室の空気が一瞬で緊張に包まれる。


「一年生の成績優秀者は……セラ・ウィスパーウィンド、君だ」


 教室が一瞬静まり返り、次に爆発的な歓声に包まれる。


「おおおお!」


「セラ!」


「すげえ!」


「やったぞ、セラ!」


 ゴウタがガッツポーズし、アリアとミナが拍手する。サクラさんも涙を流している。


「え、えっと……」


 セラは少し戸惑う。胸の中に、ゆっくりと温かいものが広がっていく。


「みんな、おめでとう。そして、セラ君、成績優秀者として、午後の表彰式に参加すること」


「表彰式?」


「はい。成績優秀者全員が集まり、学園長とミサト団長から表彰される」


「ミサト……が来るのか」


 学園祭以来、直接会っていない。ペンダントを首に触れると、指先に温かみを感じた。


## 表彰式


 午後になると、セラは他の成績優秀者たちと一緒に大講義室へ向かった。


 数百の椅子が並び、前方には表彰台がある。学園長や教師たちが座っている。そしてその中に、ミサトの姿も見える。


 王宮近衛騎士団の制服を着たミサトは、いつも通り凛とした表情をしている。でも、その目には少し温かさが宿っているような気がした。


「成績優秀者の方々、前方に整列すること」


 学園長の声で、成績優秀者たちが整列する。一年生はセラだけだ。二年生から三人、三年生から四人、合計八人が並ぶ。


「では、表彰式を始める」


 学園長が立ち上がった。


「今回の定期試験は、例年以上に高い水準だった。皆、よく頑張った」


 広大な大講義室に、全校生徒の視線が集まっている。その中央に、成績優秀者が一列に並んでいる。二年生の先輩たちは余裕そうな顔をしているが、三年生の先輩たちはさらにどっしりと落ち着いている。


 そして一番端。一年生はセラだけ。


 (なんでこんなところに俺が)


 思わず自分の立ち位置を疑いたくなったが、現実は現実だ。試験結果は出た。逃げることはできない。


「魔法の学習は、努力と継続が必要だ。基礎をしっかりと学び、応用へとつなげる。それが魔法使いとしての成長だ」


「そして、今日ここにいる成績優秀者たちは、その努力の結実だ。特に一年生のセラ・ウィスパーウィンド君は、一年生で上級魔法を成功させるという偉業を成し遂げた」


 全生徒の視線がセラに集まる。


「では、成績優秀者への表彰を行う」


 三年生の先輩から順に表彰されていく。学園長から表彰状が渡され、拍手が送られる。


 そして、最後にセラの番。


「セラ・ウィスパーウィンド君」


 セラが表彰台へ上がる。学園長の前に立つ。


「君の成績は、特別だ。一年生でこれだけの成果を上げるのは、稀だ」


「ありがとうございます」


「君は、魔法の才能だけでなく、仲間を助ける指導力も持っている。クラスメイトから感謝されていることも聞いている」


「それは、みんなが頑張ってくれたからです」


「謙虚さも素晴らしい。これからもその姿勢を忘れずに頑張ってほしい」


 学園長が表彰状を渡す。その表彰状には、「特別成績優秀賞」と書かれている。


「そして、もう一つ」


 学園長が横を向く。ミサトが一歩前に出た。その手には、小さな箱が持たれている。


「セラ・ウィスパーウィンド」


 ミサトの声は、いつもより少し柔らかい。


「君の成績優秀者受賞、おめでとう」


「ありがとうございます、ミサト団長」


 ミサトが箱を開けると、中には銀のメダルが入っていた。メダルの表面には学園の紋章、裏面には「成績優秀者」と刻まれている。


「これは、成績優秀者に与えられる特別メダルだ。学園長からの賞だが……」


 ミサトが少し照れたように視線を逸らす。


「私からも、別の意味で贈る」


「別の意味?」


「近衛騎士団への入団、まだ検討中だよね」


「はい」


「このメダルは、近衛騎士団でも認められる成績優秀者である証だ。もし入団を決めたら、このメダルが役に立つ」


 ミサトはメダルをセラに渡す。その指先が触れた時、少しだけ温かみを感じた。


「ありがとう、ミサト」


「……ん」


 ミサトは少し照れたように鼻を鳴らす。


「あ、別に特別な意味じゃないからね。ただの公式表彰だし」


「でも、ミサトがくれて嬉しい」


「……勘違いしないでよね。あんたが成績優秀者になったから、仕方なく渡しただけ」


 ミサトはそう言いながらも、その目には笑いが宿っている。


「はいはい、わかりました」


 セラが微笑むと、ミサトはさらに顔を赤くする。


「もう、あんたって……」


 ミサトはそれ以上何も言わず、表彰状とメダルをセラに押し付けるようにして渡した。


 学園長が宣言すると、大講義室に盛大な拍手が響き渡る。


## ミサトとの短い対話


 表彰式が終わり、大講義室から出ると、ミサトが声をかけてきた。


「ちょっといい?」


「え、ああ」


 ミサトは少し離れた廊下へ行くようジェスチャーした。二人で大講義室の廊下へ出る。他の生徒はいない。


「何かあった?」


「いや、別に大事な話ってわけじゃないんだけど」


 ミサトは壁に寄りかかり、セラを見る。


「成績優秀者、すごかったね」


「ありがと。偶然だよ」


「偶然じゃないでしょう。あんな高い点数、取れるわけない」


 ミサトは少し目を細める。


「私、一年生の時はそこまで点数取れなかったから」


「え、ミサトも一年生の時、この学園に?」


「……ああ。私もここで学んだ」


 ミサトは遠くを見るような目をする。


「あの時、いろいろあったな。魔法の才能があって、でもそれをどう使いいいか分からなくて」


「……そうだったんだ」


「君は違う。才能があって、それを仲間のために使っている」


「仲間のために、というと大げさかな」


「大げさじゃないよ。クラスメイトから感謝されているのは、君だ」


 ミサトは少し真剣な表情になる。


「近衛騎士団も、そういう仲間を思える人間を探している。君なら、うまくやれると思う」


「ありがとう。検討するよ」


「……うん」


 ミサトは少し照れたように、再度視線を逸らす。


「あ、それと」


「何?」


「女装コンテストの優勝、学園新聞で見たよ」


「あ……」


 セラは少し恥ずかしくなる。


「変じゃなかったよ。むしろ、綺麗だった」


「え……?」


 ミサトは顔を真っ赤にして、慌てて言い訳を始める。


「い、意味はそういう意味じゃなくて! 審査員として客観的に評価しただけだし! 別に個人的な感想じゃないからね!」


「はいはい、わかりましたよ」


 セラが微笑むと、ミサトはさらに顔を赤くする。


「もう、からかわないでよね!」


 ミサトはそう言うと、少し拗ねたように背を向ける。その背中が小さく見える。


「ミサト」


「なによ」


「ありがとう。ペンダント、大切にしてる」


 ミサトの背中がピクリと反応する。


「……別に」


 ミサトは振り返らず、でも小さな声で言う。


「気に入ってくれてよかった」


 その言葉は、とても小さくて、でも温かかった。


「また、話そう」


「……うん。近衛騎士団のこと、考えたら言って」


 ミサトはそう言い残し、歩き去った。


## クラスでの祝賀


 教室に戻ると、クラスメイトたちがセラを囲んでいた。


「おかえり、セラくん!」


 アリアが駆け寄ってくる。


「どうだった? 表彰式!」


「メダルもらったのにゃ!」


「うん、これだ」


 セラがメダルを見せると、クラスメイトたちが歓声を上げる。


「すげえ! 銀のメダル!」


「学園の紋章が彫られてる!」


「セラ、すごいな!」


「これからは『セラ先輩』と呼ぶべきか?」


「いやいや、どういたしまして」


「でも、一年生で成績優秀者なんて、先輩みたいなもんだよ」


「セラさん、本当にすごいです。一年生で上級魔法、満点、成績優秀者。普通じゃないですよ」


「いや、普通だよ。みんなが頑張ってくれたから、私も頑張れただけ」


「セラくん、謙虚すぎだよ」


 アリアが少し呆れたように微笑む。


「でも、これからもみんなで頑張ろうね」


「うん!」


「頑張ります!」


「セラ先輩についていきますにゃ!」


「いやいや、『先輩』はいいから」


「えー、でもセラくんはすごいのに」


「ライル、ありがとう。お前がいたから、俺も頑張れた」


「どういたしまして。みんなが頑張ってくれたから、私もやる気が出た」


「よし、今日は祝賀会だ!」


 ゴウタが宣言する。


「そうだ! セラくんの成績優秀者を祝おう!」


「食堂でパーティーするにゃ!」


「放課後でいいじゃん」


「うん、放課後に食堂で集まろう。セラ食堂無料パス持ってるし」


「あ、確かに!」


「よし、放課後だ!」


 ゴウタがガッツポーズする。


「みんな、来るよね?」


「もちろん!」


「祝いますにゃ!」


 その日、放課後の食堂は、一年A組で埋め尽くされた。


 セラの食堂無料パスを使い、クラス全員で食事を楽しむ。パン、スープ、サラダ、肉料理、デザート、たくさんの料理が並ぶ。


「乾杯!」


「セラ、成績優秀者、おめでとう!」


「おめでとう!」


 クラス全員がグラスを掲げ、声を合わせる。


「ありがとう、みんな。本当に、みんながいてくれたから、私も頑張れた」


「いやいや、セラが教えてくれたから、私たちも頑張れただけ」


「セラ先生、最高だよ!」


「先生は大げさだよ」


「でも、セラさんが教えてくれたおかげで、合格できたのは事実です」


 サクラさんが真剣な表情で言う。


「私、セラさんにとても感謝しています」


「私も!」


 アリアがセラの腕に抱きつく。


「セラくん、すごいよ」


「いや、みんなが頑張っただけだよ」


「セラくんの謙虚さも素敵だね」


 アリアが微笑む。


「みんな、本当に良いクラスだな」


 その言葉が、自然と口からこぼれた。


「よし、これからも、みんなで頑張ろう!」


「はい!」


「頑張ります!」


「セラさんについていきますにゃ!」


 クラス全員が声を上げる。


 夜、寮に戻ったセラは、ベッドに座り、表彰状とメダルを見る。


「成績優秀者、か」


 セラは呟く。


 転生してから、ここまで来た。エルフとしての生活、学園での勉強、仲間との絆。全部が、自分の成長につながっている。


「アリア、ミナ、ゴウタ、サクラさん、ライル、みんな……」


 セラはクラスメイトたちの顔を思い出す。


「ミサトも……」


 セラはメダルを握りしめる。首のペンダントにも触れる。


「これからも、頑張ろう」


 窓の外を見ると、星が輝いている。美しい星空。


 口元が自然と緩んだ——みんなの顔が浮かぶ。アリアの涙、ゴウタのガッツポーズ、サクラさんのお辞儀、ミナの猫耳。そして、ミサトの赤い顔。


「ありがとう、みんな」


 誰に言うわけでもなく、静かに呟いた。


 深い眠りが来る。明日も、また新しい一日が始まる。


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