表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神に楽しめと言われた。楽しみすぎて、神を超えた。  作者: issoh


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
93/114

第93話 定期試験の準備

# 第93話 定期試験の準備


## 定期試験の発表


 翌朝の教室は、いつもの賑やかな雰囲気とは少し違っていた。


 チャイムと共に担任のリナ先生が教室に入ってくると、クラス中の空気が一変した。リナ先生の表情が真剣そのものだったからだ。


「皆さん、朝から緊張感を持って聞いてください」


 リナ先生が教卓の前に立ち、教室を見渡す。


「ええ、なんだろ? まるで重大発表みたいだね」


 隣の席のアリアが小声で呟く。


「何かあったのかな」


「皆さん、来週から定期試験を実施することになります」


 教室中がどよめいた。


「試験!?」


「定期試験って、まさか!」


「うそ、来週!?」


「静かに!」


 リナ先生が手を叩くと、教室は再び静寂に包まれた。


「試験期間は三日間です。一日目が魔法理論と魔法史、二日目が魔法陣基礎と実技、三日目が一般教養になります」


 白いチョークが黒板を走る音が、静かな教室に響いていた。


「魔法理論と魔法史が一日目か……」


 アリアが少し顔を曇らせる。


「大丈夫だよ。魔法理論、得意だしな」


「セラは得意だけど、私は……」


「大丈夫。僕が教えるから」


 セラが微笑むと、アリアも少し安心したように頷いた。


「試験範囲は、第一学期の最初から現在までです。教科書の第一章から第十章、そして授業で扱ったすべての内容が範囲となります」


「第十章まで!?」


「範囲広すぎない!?」


「無理無理!」


 再び教室がどよめく。


「静かに! パニックになっても解決しません!」


 リナ先生の声で、再び静寂が戻ってくる。


「定期試験は、魔法学園で学ぶ皆さんの実力を測る重要な機会です。成績によっては、進級や進路に影響しますので、しっかりと準備してください」


「試験形式は筆記と実技です。筆記試験は五十点満点、実技試験も五十点満点。合計百点満点で、六十点以上が合格点です」


「六十点以上か……」


 ゴウタが隣の席で少し落ち込んだように呟く。


「無理だよなあ、俺には……」


「諦めるなよ、ゴウタ。まだ一週間あるんだ」


「いやいや、セラはエルフだし、魔法理論得意だし、無詠唱もできるし。俺なんて初級魔法やっとだよ」


「でも、基礎をしっかりやれば大丈夫だよ」


「……本当に?」


「本当だよ。僕が教えるから」


「え、セラが教えてくれるの?」


 ゴウタの目が少し輝いた。


「うん、勉強会でもやろうかと思って」


「勉強会!? いいね! 参加したい!」


「私も! 魔法理論苦手だから!」


「実技も不安だし!」


「セラ、教えてよ!」


 次々と手が挙がっていく。


「……皆さん、やる気ですね」


 リナ先生が少し微笑む。


「学内での勉強会は推奨します。ただし、内容には責任を持ってください」


「はい!」


「それでは、試験範囲の詳細を配布します」


 試験範囲の資料を受け取り、目を通した。


「魔法理論、魔力の基本原理から始まって……感情と魔力のリンク、無詠唱魔法の理論、融合魔法の原理……確かに、範囲広いな」


 でも、自分が知っている内容も多い。授業で学んだこと、実戦で経験したこと。すべてが役に立ちそうだ。


「アリア、大丈夫?」


「うん、なんとかなると思う。セラが教えてくれるなら」


「もちろん。心配しないで」


「ふふ、セラ、頼もしいね」


「さあ、頑張るぞ!」


## 勉強会の提案


 昼休み、教室は試験の話題で持ちきりだった。


「来週の試験、どうする?」


「勉強しないと、赤点とかありそうだし」


「誰か教えてくれる人いないかな?」


「セラ、さっき言ってた勉強会、本気でやるの?」


 ミナが猫耳をピコピコさせながら尋ねてきた。


「うん、やるつもり。僕も勉強が必要だし」


「じゃあ、私も参加したいにゃ!」


「私も! セラくんに教えてもらえるなら」


「私も入れて!」


「うーん、人数が多いと教えきれないかも」


 セラが少し困ったように頭をかく。


「だったら、セラが教える役、みんなが受ける役、って形でどう?」


 アリアが提案した。


「教える役、受ける役?」


「そう。セラが先生になって、みんなが生徒になる。教室予約して、みんなで勉強会する感じ」


「それいいかも!」


 ゴウタが賛成する。


「俺、セラ先生に教えてもらいたい!」


「先生、とか呼ばれるの恥ずかしいな」


 セラが少し照れくさそうに言うと、クラスメイトたちが笑った。


「ふふ、セラ先生、素敵だね」


「別に先生とかじゃなくて、ただ教える立場ってだけだよ」


「でも、セラは魔法理論得意だし、無詠唱もできるし、教えるのに適してると思うよ」


「そうそう、セラの説明はいつも分かりやすいし」


 (いつも分かりやすいってどういう基準だろう。こっちはただ知ってる順番に話してるだけなのに。……まあ、伝わるならそれでいい)


「とにかく、勉強会やろうって話でいいよね?」


「うん、賛成!」


「賛成!」


 クラス全員の一致で、勉強会を行うことが決まった。


「じゃあ、いつにする?」


「放課後、図書館どう?」


「じゃあ、今日の放課後から始めよう!」


 全員が賛成した。


 その時、教室のドアが開き、カトレアが顔を出した。


「なんか活気あってるね?」


「定期試験の話してたんだよ。勉強会やることになった」


「勉強会? いいね! 私も入れて!」


「もちろん。カトレアも来て」


「やった! ドワーフとしても、魔法理論は借金返済に関係するから重要よ!」


 カトレアの借金返済動機は、何にでも連結してくる。頭が下がる。


「じゃあ、図書館集合、三時!」


「おお!」


 全員が声を上げた。


## 勉強会開始


 午後三時、図書館には一年A組の生徒たちが集まっていた。


 大きな円形のテーブルを囲んで、十数名の生徒たちが座っている。


「じゃあ、勉強会始めようか」


「よし!」


「今日は魔法理論の基礎からやるね。まずは魔力の基本原理から」


 セラが黒板に向かうと、チョークで図を描き始めた。


「魔力というのは、体内のマナ回路を流れるエネルギーのこと。これは誰でも持っているんだけど、使い方次第で強さが変わる」


 全員が集中して聞いている。


「で、魔法を使うときは、このマナを意識的に制御する必要がある。詠唱魔法の場合、言葉のリズムでマナの流れを整えてるんだ」


「言葉のリズム、ね」


 ゴウタが納得したように頷く。


「そう。だから、詠唱をちゃんと覚える必要がある。でも、熟練すると無詠唱でも魔法が使えるようになる。これは、マナの流れを体が覚えているからなんだ」


「無詠唱、すごいね」


「セラ、無詠唱できるんだよね?」


「うん、できる。でも、最初からできたわけじゃない。練習と理解が必要だった」


 (昔、なんでもショートカットキーを使わず一つひとつメニューを開いていた。体が覚えると、手が自然に動くようになる。マナも同じだ)


「マナ回路は、体の中を巡る道のようなもの。これを効率的に使えば、少ない魔力で強い魔法が使える」


「効率的、ってどういうこと?」


 カトレアが手を挙げて質問する。


「いい質問だね。例えば、水魔法の『アクア』を使うとき。非効率な人は、体内のマナを全部使おうとする。でも、効率的な人は、必要な分だけのマナを集めて、凝縮して使う」


「凝縮!」


「そう。凝縮することで、水の圧力が上がる。だから、少ない魔力でも強い水魔法が使える」


「なるほどね! 俺、今まで全部使おうとしてたかも!」


「それじゃあ、すぐに魔力が尽きちゃうね」


 アリアが少し笑う。


「だから、練習が必要なんだ。まずは、自分の体の中のマナの流れを感じるところから始めよう」


 セラが全員を見渡す。


「目を閉じて、体の中を意識して。おへその下あたりに、温かいエネルギーが溜まっているのを感じて」


 全員が目を閉じる。静かな図書館に、規則正しい呼吸の音だけが響く。


「そのエネルギーが、体の中を巡っているのを感じて。腕の先、足の先、指先まで」


「感じた人は、手を挙げて」


 一人、また一人と手が挙がっていく。ゴウタも、少し自信なさげに手を挙げた。


「すごいね、みんな。初めての人も多いはずなのに、よくできてる」


「次は、そのマナを少しだけ手のひらに集めてみよう。全部じゃない、ちょっとだけでいいから」


「うーん、難しい……」


 ゴウタが少し苦戦している。


「焦らないでね。マナは気まぐれだから、焦ると逃げちゃう」


「リラックスして、深呼吸。マナは友達だから、怖がらないで」


 ゴウタが深呼吸をすると、少しずつリラックスしてきた。


「そう、その調子。マナを手のひらに誘う感じで」


 やがて、ゴウタの手のひらに、小さな光が灯った。


「おお! 見て! 光った!」


「すごい、ゴウタ!」


「これ、魔力ってこと?」


「そう。初めて魔力を感じたんだね」


 セラが微笑む。


「やった! 俺、やったぞ!」


 ゴウタがガッツポーズをする。その姿に、クラス中が笑顔になった。


## 個別指導


 午後遅く、勉強会も終盤に差し掛かっていた。


「うーん、やっぱり無詠唱、難しいかな……」


 ゴウタが少し落ち込んだように呟く。


「マナの流れは感じられるようになったけど、詠唱なしで魔法を出すの、まだ無理かも」


「そうだね。無詠唱は時間がかかるから、焦らなくていいよ」


「でも、試験で無詠唱も出るんだよね?」


「出るけど、配点は高くない。詠唱魔法がちゃんとできれば、大丈夫」


「ねえ、ゴウタ。詠唱魔法、得意なやつある?」


「得意……うーん、フレイムはそこそこできるかな」


「じゃあ、フレイムを極めるのはどう? 一つの魔法を極める方が、全部の魔法を中途半端にやるよりいいよ」


「一つの魔法を極める……」


 ゴウタが少し考え込んだ。


「フレイムなら、詠唱も短いし、魔力の流れも単純だし。これを完璧にすれば、試験でも高い点数が取れるよ」


「なるほどね! 俺、フレイムを極めるぞ!」


 ゴウタがやる気を取り戻した。


「うん、頑張ってね。僕も手伝うから」


「ありがとう、セラ。助かるよ」


 一方で、サクラさんが魔法陣の図を見て首を傾げていた。


「セラさん、魔法陣の構造、どうやって覚えたらいい?」


「いい質問だね。魔法陣は、ただの絵じゃないんだ。それぞれの線に意味がある」


 セラが黒板に魔法陣を描く。


「外円は結界、内円は魔力の制御、三角形は三属性の調和。こうやって、意味を理解しながら覚えると、忘れにくいよ」


「意味、ね。ただ丸暗記してたかも」


「だから、忘れちゃうんだよ。意味を理解すると、自然と頭に入ってくる」


「なるほどね!」


 サクラさんが納得したように頷く。


「次は、感情と魔力のリンクについてやるね。魔法を使うとき、感情が大事だって聞いたことあるかな?」


「リナ先生の授業でやったよ!」


「そうだね。古代エルフは、感情を込めることで魔法を強くしてたって聞いたことあるよ」


「感情を込めるだけで魔法が強くなるの?」


「そう。例えば、楽しいことを思い出しながら風魔法を使うと、風が優しくなる。一方、何かに熱中しているときに火魔法を使うと、炎の温度と形が変わる。喜怒哀楽が魔法に影響するんだ」


「じゃあ、練習してみよう。まずは、楽しいことを思い出しながら、風魔法を少し使ってみる」


「楽しいこと……」


「食事のことはどうかな?」


「食堂のパン、美味しいよね」


「パン、いいね!」


 ゴウタが目を輝かせる。


「じゃあ、美味しいパンを思い出しながら、手のひらで風を感じてみよう」


 生徒たちが目を閉じ、想像し始める。


「美味しいパン……」


「バター塗ってるパン……」


 やがて、全員の手のひらから、小さな風が吹き始めた。


「わあ! 風が出た!」


「優しい風だね!」


「いいね、みんなの風。優しくて、気持ちいい。これが、喜びの風魔法だ」


「セラ、すごい!」


「教えるの上手だね!」


 クラスメイトたちから称賛の声が上がる。


「ありがとう。でも、みんなが頑張ってるからだと思う」


「次は、別の感情でやってみよう。熱意を持ちながらフレイムをやってみて。試験に合格するぞ!って気持ちで」


「よし!」


「絶対合格するぞ!」


 ゴウタたちが本気で気合を入れ始めると、手のひらから炎が上がり始めた。


「おお! 熱い!」


「本気モードの炎だ!」


「ちょっと待って、火力高すぎ!」


 セラが慌てて止める。


「感情を込めすぎると、魔力が暴走するから気をつけて!」


「あ、ごめん!」


「感情と魔力のリンク、本当に強いんだね」


「だからこそ、感情のコントロールも必要なんだ。熱意は大事、でも冷静さも保つ。それが魔法使いの大切なスキル」


 セラの言葉に、全員が真剣に頷いた。


「セラ先生、天才だね」


「先生、とか言わないで」


「ふふ、セラ先生、素敵だよ」


「うっ、また先生って……」


## 試験への自信


 夜、寮の部屋でセラはベッドに座っていた。


 今日一日の出来事が、頭を巡っていた。朝の定期試験の発表、昼の勉強会の提案、午後の勉強会。すべてが新しい経験だった。


「お疲れ様、セラ」


 ライルが部屋に入ってくると、大きく伸びをした。


「お疲れ様、ライル。今日はどうだった?」


「うーん、まあまあかな。定期試験あるから、クラスみんな不安だったけど」


「セラは? 勉強会やったんだって?」


「うん、やったよ。結構楽しかった」


「楽しい、ね。セラは教えるのが得意そうだもんね」


「得意だと思わなかったけど、やってみたら意外と楽しかった」


「でも、試験大丈夫だよね? セラも受けるんでしょ?」


「うん、受けるよ。でも、勉強会で教えてるうちに、自分の勉強にもなった気がする」


「教えることは学ぶこと、とか言うしね。ふふ、セラらしいな」


「ライルって、意外と良いことを言うよな」


「意外とは失礼だろ!」


 ライルが拗ねたように言うと、セラは思わず笑った。こんな軽口を叩ける仲間がいる。それだけで、今の自分はずいぶん恵まれていると思う。


「でも、本当にありがとう。クラスのみんな、セラのおかげで元気出たみたいだよ」


「そうだといいな。みんなが合格するといいな」


 純粋にそう思えるのが、この学園生活の良いところだ。誰かが成功しても、自分が負けた気はしない。


「カトレアも参加してたし、明日また来てくれるかな」


「カトレアは来るよ。ギャハハって言いながら、絶対来る」


「ドワーフの格言みたいなの言い出したりして」


「『石の中に答えはない、石の上で考えろ』とか?」


「それどういう意味?」


「わからない。でも言いそうでしょ」


 二人で笑った。良い夜だった。


「うん、きっと大丈夫だよ。セラが教えてたんだから」


「アリアは?」


「アリアは元気だったよ。魔法理論、少し自信がついたみたい」


「ミナは?」


「ミナはね、すごく楽しそうだったよ。猫耳がずっとピコピコしてた」


「ふふ、ミナらしいね」


「セラも頑張ってね。試験、大事だよ」


「うん、頑張るよ」


「応援してるから」


 ライルが微笑む。


「ありがとう」


 セラも微笑み返した。


「明日も勉強会やるんだよね?」


「うん、毎日やるつもり」


「頑張れよ、セラ先生」


「先生って言うなよ」


 ライルが笑うと、セラも苦笑いした。


「でも、まあ悪くないね」


「何が?」


「教える役。やりがいあるし」


 セラが少し真剣な表情で言う。


「みんなが理解してくれたとき、ここが熱くなるんだ」


 胸のあたりを軽く叩いた。


「それが教師の醍醐味だね」


 ライルが頷く。


「とにかく、明日も頑張ろう」


「うん、頑張る」


 セラは自分に言い聞かせるように頷いた。


「おやすみ、セラ」


「おやすみ、ライル」


 ライルが自分のベッドに向かうと、セラも自分のベッドに横になった。


 一日の疲れが、ゆっくりと体から抜けていく。


 明日も勉強会。そして、来週には試験。


「頑張ろう」


 心の中でそう宣言した。


 仲間と一緒に。自分らしく。


 静かな夜が、寮を包んでいく。


 窓の外で、風が吹いた。木の葉が揺れる音が、かすかに聞こえる。


 今、この穏やかな気持ちで風魔法を使ったら、どんな風が吹くだろう。きっと柔らかい風だ。


 セラは静かに目を閉じた。


 定期試験、仲間、笑顔——それが今の自分の世界だ。


 深い眠りの中へ、ゆっくりと沈んでいった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ