第82話 ミサトとの再会
# 第82話 ミサトとの再会
## 特別講義の話
朝の教室は、いつもよりざわついていた。
セラはアリアの隣で昨日の宿題を確認していた。アリアが問題の解き方を聞いてきて、セラが答える。この流れ、毎朝のルーティンだ。後輩の面倒を見る先輩みたいなものだが、俺には後輩なんていなかったので新鮮と言えば新鮮だ。
「ねえ、この問題ってこう解くんだよね?」
「うん、そうだよ。アリア、ちゃんと理解してるね」
「えへへ、セラが教えてくれたから」
アリアが嬉しそうに微笑んだ——その瞬間、教室の前扉が勢いよく開いた。
担任のリナ先生だ。いつもと違って、顔に興奮の色が浮かんでいる。「上からいい話が来た」時の部長の顔に似ている。でも部長がいい話を持ってきた後は、大抵しんどい仕事が増えたんだよな。
「皆さん、注意してください」
教室が静まり返った。リナ先生は黒板に白墨で大きく書く。
『特別講義』
「今日の午後から、全学年合同の特別講義が行われます」
「え、特別講義ですか?」
ゴウタが手を挙げて質問した。
「そうよ。今回は王宮近衛騎士団の方々に来ていただいて、実戦的な魔法と剣術の連携について講義していただけるの」
「王宮近衛騎士団!?」
教室中から驚きの声が上がった。
(王宮近衛騎士団……)
その言葉で、セラの背筋を何かが走った。嫌な予感。いや、嫌というより——覚えのある予感。月曜朝の会議で「今日は本社から偉い人が来ます」と言われた時のあれだ。ドキドキというより、心臓が重くなる感じ。
「講師は近衛騎士団の団長代理です。王宮直属の騎士団で、数々の難事件を解決してきた実力者よ。特に魔物討伐や治安維持の面で大きな功績を残されている方です」
「すごい、近衛騎士団の団長代理」
「どんな人なんだろう」
「直接話が聞けるなんてチャンスだね」
クラスメイトたちが色めき立つ中、セラの心臓だけが別のリズムを刻んでいた。
(団長代理……)
近衛騎士団の団長代理。街道で出会ったあの女騎士——ミサト——は確か近衛騎士団所属だった。まさかのまさかだ。いや、王都はそんなに狭くない。偶然などあり得ない。偶然などあり得——。
(……嫌な予感が止まらない)
「場所は大講義室、時間は午後二時から。欠席は認められませんから、皆さんしっかり聞いてくるようにしてくださいね」
「はーい!」
全員で返事をした後、セラだけが黒板の「特別講義」という文字を見つめていた。文字が消えない。消えてくれない。
「ねえ、セラ。何か心配そうな顔してるよ?」
アリアが覗き込んでくる。
「えっ、いや、別に。ただ、どんな人が来るかなって思って」
「たぶん、すごくかっこいい人が来るんだと思うなあ」
「そうだといいんだが……」
(俺の嫌な予感が外れることを祈る。外れてくれ。頼む)
## 大講義室へ
大講義室は学園で最も広い部屋だ。今日は全学年の学生が押し寄せ、定員三百人に迫る勢いだった。廊下まで熱気が漏れてくる。
(……コンサート会場の雰囲気だ。あの時も席確保が戦争だったな)
「早く席を取らないと」
アリアがセラの手を引いて大講義室へ急いだ。ミナも一緒に走る。三人でなんとか中央より少し後ろ、壇上がよく見える席に滑り込んだ。
「ふう、間に合ってよかった」
アリアが息を整えながら隣に座る。セラは周囲を見渡した。ゴウタやアズマも近くに座っている。全員が興奮気味に壇上を見つめていた。
「王宮近衛騎士団といえば、鉄の女と呼ばれている団長がいるんだって」
アズマが知識を披露し始めた。
「鉄の女?」
「数年前にSランクのクエストを単独でクリアしたことで有名なんだ。魔物討伐から治安維持まで手広く活動してるらしい」
「すごいね」
アリアが感心したように呟く。
(まずい。まずいまずいまずい)
セラの胸に再び嫌な予感が走った。
鉄の女。Sランクのクエストを単独でクリア。
(あの女騎士の特徴と完全に一致している)
「でも、今日来るのは団長代理だから、団長本人じゃないよね」
ミナが一安心したように笑う。
「……たぶんね」
セラは自分自身にそう言い聞かせようとした。でも、胸の奥で「やっぱり」という声がさらに強くなっていた。
大講義室の熱気は、時間が経つにつれてさらに高まっていった。
「そろそろ始まるかな」
アリアが壇上の時計を見て呟く。
午後二時五分前。大講義室の扉が開き、教師たちが入ってきて整列し始めた。
(深呼吸。大丈夫だ。まさかあの女騎士がここに来るはずがない。世界は広い。王都は広い。偶然なんてないんだ)
——壇上の脇から、一人の人物が現れた。
## 講師登場
大講義室の空気が一変した。
銀色の鎧に身を包んだ一人の女性騎士。長い黒髪が鎧の上で流れ、鋭い目つきが会場全体を見渡している。胸には王国の紋章、腰には立派な剣。その姿は威厳と強さを兼ね備え、見る者に圧倒的な存在感を放っている。
「嘘だろ……」
セラの口から、無意識に言葉が漏れた。
「え、セラ、どうしたの?」
アリアが心配そうに顔を覗き込んでくるが、セラには声にならない。
(あの女騎士だ。来た。本当に来た。あの節穴騎士がこの学園の講義に!)
街道で出会った。冒険者ギルドで顔を合わせた。あの性格の悪い女騎士——ミサトだ。
「王宮近衛騎士団団長代理、ミサト・ヴァン・クロイツェルフィト様です」
司会の教師がマイクで紹介する。
拍手が爆発した。数百人の生徒が一斉に拍手を送り、大講義室が沸き立つ。
セラだけが拍手する余裕もなく、席に縮こまっていた。
(あの節穴騎士が……なんでここに!? 王都はそんなに狭かったのか!?)
「えっ、ミサト……ですか?」
アリアがセラの反応に驚いている様子だった。
「アリア、静かにしてくれ……」
「え、知り合い?」
「後で話す。頼む」
## 講義中の視線
ミサトが壇上に立つと、大講義室は静まり返った。その存在感だけで、数百人を黙らせる。部署全体をビビらせる取締役みたいな雰囲気だ。
「まずは、王宮近衛騎士団について簡単に説明させていただきます」
低くて力強い、でもどこか冷たい響きを持つ声。マイクを通して大講義室全体に響き渡る。
「近衛騎士団は王室の護衛だけでなく、王国内の治安維持、魔物討伐、難事件の解決など、幅広い任務をこなしています」
(……いや待て。これ俺、もし目が合ったらどうするんだ)
「ねえ、セラ。どうしたの?」
アリアが小声で聞いてくる。
「いや、なんでもない」
「顔が青いよ?」
「……日当たりが悪いだけだよ」
「そんな訳ないじゃん、ここ明るいし」
「アリア、今は黙っていてくれ」
「え、なんで!?」
(頼む。今だけは静かにしてくれ。見つかったら全部終わる。コンビニで偶然会いたくない取引先の人間を見かけた時に、棚の後ろにそっと隠れるあの感覚だ)
セラは必死に自分の机の一点を凝視していた。ミサトの視線が、定期的に会場全体を巡っている。その鋭い目つきが、まるで獲物を探す鷹のように大講義室を走査している。
「今日は、実戦でどのように魔法と剣術を連携させるか、実際の経験を交えて話したいと思います」
ミサトが黒板に「連携」と書く。
「魔法使いと戦士が連携する場合、最も重要なのは何だと思いますか?」
「魔力の量?」
「詠唱の速さ?」
「仲間との信頼?」
「正解。すべて正解です。でも、最も重要なのは『状況判断』です」
ミサトの話は理路整然として、非常にわかりやすい。生徒たちは熱心にメモを取っている。
(……講義自体はまともなんだよな。あの節穴騎士が、こんな立派な講義をするなんて。俺の元上司より話し方が上手いぞ)
皮肉な感情が渦巻いていた。でも内容は確かにためになる。街道で出会った時の威圧感とは違う、指導者としての貫禄がある。
「例えば、ゴブリンの群れが出現した場合を考えてみましょう。ゴブリンは知能が低く、数で攻めてきます。魔法使いは広範囲攻撃で牽制し、戦士は前衛で防戦。これが基本です」
「へえ、なるほど」
アズマが納得したように頷いている。
「しかし、ホブゴブリンが混ざっている場合はどうでしょう? ホブゴブリンは知能が高く、魔法を打ち返すことができます。この場合、戦士が挑発でホブゴブリンの注意を引き、魔法使いが集中攻撃で各個撃破。連携が鍵になります」
「プロかよ……」
ゴウタが感嘆の声を漏らす。
ミサトの視線が、またセラの方向に近づく。背筋に冷たいものが走る。
「情報共有。これが最も軽視されがちですが、最も重要です。発見した敵、罠の位置、自分の魔力残量。これらすべてをパーティーメンバーと共有することで、初めて連携が成立します」
ミサトの言葉は重みを持っていた。セラはゴクリと喉を鳴らした。街道で出会った時のことを思い出す。
「質問があります」
アズマが手を上げた。
「はい」
「近衛騎士団は、実際にどんな種類の魔物と戦うことが多いですか?」
「ゴブリン、ホブゴブリン、トロール。一般的なものが多いですね。ただ、王都近郊では最近、上位魔物の目撃が増えています。オーガ・ロード以上の個体も確認されています」
(オーガ・ロード。あのダンジョンで見た奴と同種か)
「それは危険ですね」
「そうです。だからこそ、次世代の魔法使いたちに適切な訓練を受けてほしい。この学園もその一翼を担っています」
ミサトが会場を見渡す。その視線が、ゆっくりとセラの方向に向いた。
(来る、来る、来る——)
セラは反射的に下を向いた。机の上の手帳を凝視した。
(バレたか。バレてないか。どっちだ)
しばらく沈黙が続き、ミサトの視線が別の方向に移ったのを感じた。全身の緊張がわずかに和らぐ。
(助かった……たぶん)
「力を隠していると判断が遅れます。自分の実力を正直に周囲に伝え、適切な役割を果たす。これが生き残るための近道です」
(……それ、絶対に俺に向けて言ってる)
セラの心臓が跳ね上がった。講義の内容が、妙に自分の状況を的確に突いてくる。力を隠している。自分の実力を正直に伝える。まるで自分のことを見透かしているかのようだ。
「本日はありがとうございました」
ミサトが深くお辞儀をすると、大講義室に盛大な拍手が沸き起こった。
セラはその拍手に参加する余裕がなかった。
## 講義後の再会
講義が終わると、大講義室から続々と学生たちが退出し始めた。
「すごかったね、団長代理」
「ドラゴンを一人で倒したなんて、本当にすごい人だね」
クラスメイトたちが興奮して話し合う中、セラには一つの思念だけが渦巻いていた。
(逃げる。今すぐここを離れる)
「ねえ、セラ。食堂に行こうか?」
「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる。先に行ってて」
「え、そう? 大丈夫?」
「うん、大丈夫。すぐ戻る」
アリアを残して、セラは大講義室を後にした。廊下に出て、学園の裏庭へと足を向ける。人気が少ない静かな場所だ。ベンチに座り、深呼吸をした。
「あの節穴騎士、なんでここに……」
膝に顔を埋めた。街道で出会った時は、ただの威圧的な女騎士だと思っていた。でも今日の講義で、彼女が近衛騎士団の団長代理であることが分かった。
(居酒屋で上司の悪口を言ってたら、翌日その人が上司になってたみたいな話だ。いや、それより絶望的かもしれない)
「セラ」
後ろから声がかかり、セラはビクリと肩を跳ねさせた。
「び、ビックリするなよ、アリア」
振り返ると、アリアが心配そうな表情で立っていた。
「どうしたの? ずっと探してたよ」
「ごめん、ちょっと頭を冷やしてて」
「セラ、何か隠してるよね?」
「いや、隠してなんかないよ」
「嘘。セラのことだから、何かあるんじゃない?」
アリアの鋭い勘に、セラは言葉を詰まらせた。
「……実は、あの団長代理、街道で出会ったことあるんだ」
「えっ、本当?」
「うん。東の街道で警護クエストを受けてた時。その時に会った」
「あの、性格が悪いって話の女騎士さん?」
(アリア、知ってたんかい)
「そうだよ。威圧的で、エルフを見下すような態度を取る女騎士」
「そうか。じゃあ、今日の講義、怖かったね」
「怖かった。見つめられてた気がするし」
「セラ」
アリアがセラの手を握った。
「大丈夫よ。私がついてるから」
その言葉に、セラの心が少しだけ救われた。
「ありがとう、アリア」
「うん。二人なら大丈夫」
「……ミサトって、強いね」
アリアがセラの隣で言った。
「うん。すごい女騎士だよ。魔力も、技術も」
アリアは少し黙った。
「私は、魔力を安定させる役割でしかないかな」
「え?」
「なんでもない。忘れて」
(本当は言いたかった——私はセラの魔力のためだけじゃない、って。でも、それを確かめる勇気が、まだなかった)
——その時、裏庭の入り口から足音が近づいてきた。
「おや、ここにいたんですね」
冷ややかな声。
二人の体が凍りついた。
(……嫌な予感が当たった。当たってしまった)
振り返ると、銀色の鎧に身を包んだ女性が立っていた。
「ま、ミサトさん……」
「セラ・ウィスパーウィンドさん。転生エルフの方ですね」
ミサトがゆっくりと近づいてくる。足音は静かだが、確実に威圧感を伴っている。
「あ、あの、団長代理。講義、ありがとうございました」
(なんでこんな丁寧な口調になってるんだ俺は。緊張するな)
「講義はそれほどでもありません。重要なのは別のことです」
ミサトがセラの目をじっと見つめた。
「街道で会いましたね」
「は、はい。東の街道で」
「あなたたちのパーティーは、当時Fランクだった。それが今は魔法学園の特例クラスにいる」
(全部把握してた。記憶力、化け物かよ)
「色々あって……」
「聞いていません」
は?
「聞いていないと言ったのです。あなたの事情は、私の管轄外です」
(じゃあなぜここに来た)
「あの時、あなたたちは奇妙な光を見ました。そして、古代エルフの文字を読みました」
(全部覚えてたのか……)
「あなたの魔法、異常なほど強力ですね。平均の五倍以上だと聞きました」
「あ、あの、それは……」
「力を隠していますね」
断定だった。セラは言葉を失った。
(見抜いてた。さすが鉄の女と呼ばれるだけある。でも見抜いてほしくなかった……)
「近衛騎士団は王国内の異常事態を監視しています。強力な魔力を持つ人物は、必ず記録されています」
ミサトはさらに近づいてきた。
「あなたは危険な存在です。あるいは、有用な存在か。まだ判断しかねています」
(危険!? 有用!? どっちにせよ物扱いだぞ)
「でも、今日は講義だったので。深入りはしません」
ミサトは一歩引いた。
「ただし、学園でのあなたの行動は、私が把握しています。何か問題があれば、私が対処します」
「は、はい。わかりました」
セラは頷くことしかできなかった。
「それと」
ミサトはアリアを見た。
「あなたがセラ・ウィスパーウィンドさんの魔力を安定させている。興味深いですね」
「……はい」
「二人の関係性にも、注目しておきましょう」
ミサトは会釈して、去っていった。銀色の鎧が夕日を跳ね返しながら遠ざかっていく。その背中は、威厳と孤独を漂わせていた。
「……怖かった」
セラがようやく息を吐き出した。
「でも、大丈夫だったね」
「そうだね。深入りはしないって言ってたから……」
(厳しい上司でも、ここまで圧迫面接みたいな空気はなかったぞ。あの人はただ怒鳴るだけだったけど、ミサトは静かなのが余計怖い)
「あの節穴騎士、性格悪いけど実力はあるんだよな……」
セラが苦笑いすると、アリアも笑った。
「ねえ、セラ。これから学園で彼女と会うかもしれないね」
「セラ、気にしすぎだよ。もし会ったら、堂々としてればいいじゃない」
「堂々としてるのは無理だよ。あの威圧感に圧倒されちゃう」
「でも、私がいるから」
「……うん。それが一番の心強さだ」
二人は手を握り合った。夕日が二人の影を長く伸ばし、裏庭を黄金色に染めていく。
「ねえ、セラ。食堂に行こうよ。お腹空いたし」
「いいよ。今日は特別メニューがあるかもね」
(飯食えば元気出る。これは転生しても変わらない真理だ。ミサトに監視されてても、飯だけは奪えない)
食堂に向かう途中、廊下でカトレアと合流した。
「おう、二人とも! 今日の講義どうだった!?」
「すごかったよ。ミサトさんって知ってる?」
「知ってる! 近衛騎士団の団長代理だろ! 武勇伝がギルドに山ほどある! Sランク魔物を単独で——って、セラ? 顔色おかしくない?」
「……街道で会ったことある人なんだよ」
「は? マジで?」
「マジで」
「セラ、そんな人と知り合いなのか!?」
「知り合いというか、向こうが俺を覚えてただけで……」
「でも会って話したんでしょ?」
「……話した。後で裏庭で捕まって」
「ギャハハ! 捕まった!?」
「声が大きい」
「ごめん! でもそれすごくない? 近衛騎士団の団長代理に目をつけられたってことじゃん」
「目をつけられたって表現、やめてくれ」
「監視されてるのは事実だけどね」
アリアが静かに言った。
「俺の幼馴染がそれを言うのか……」
「事実だから」
「その通りなんだが……」
三人で食堂の席に落ち着いた。今日の特別メニューはポトフだった。あつあつのスープが、今の心境には有難い。
「あの人、なんで魔法学園に来たと思う?」
カトレアが真剣な顔で言った。
「講義だよ。正式な依頼で来た」
「でも、わざわざ来る理由がもう一個あったわけだ。セラの様子を確認しに」
「……そうかもしれない」
「つまり、セラは前から注目されてたってこと。それって、危険でもあるし、チャンスでもある」
(カトレア、意外と鋭い。借金の話しかしない人のセリフじゃないぞ)
「チャンスって、どういう意味?」
「近衛騎士団に認知されてるってことは、将来的に仕事の依頼が来るかもしれないってこと。高難度のクエスト。高報酬の仕事。借金返済が一気に——」
「カトレア、借金の話に収束するの早い」
「大事なんだもん! でも、今は冗談じゃなくてマジで言ってる。ミサトさんに信頼されれば、それは大きな資産だよ。怖い人だけど、実力は本物だし」
(カトレアの分析、案外正しい。怖い上司に認められた部下は大きな仕事を任されていた)
「そうだな……。今は怖いけど、将来的には……考えてみる価値があるかもしれない」
「それでいい! ギャハハ!」
「ポトフ、食べながら話そうよ。冷める」
アリアが二人に促す。三人でスープを飲んだ。あつくて、優しい味だった。
「今日は色々あったな」
「そうだな。でも、最終的に飯が美味ければいい」
(それが俺の結論だ。飯が美味ければ、とりあえず今日はよかった)
二人は楽しそうに話しながら、食堂で夕食を続けた。裏庭には夕闇が広がり、学園の一日が終わろうとしていた。




