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神に楽しめと言われた。楽しみすぎて、神を超えた。  作者: issoh


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第44話 初クエスト

# 第44話 初クエスト


## 出発


 転生四十九日目の朝。宿の窓から、白い朝日が差し込んでいる。


 セラは目を開ける。昨日、冒険者ギルドで正式な登録を終えた。Gランクカードが、枕元に置いてある。今日から、これが俺の身分証だ。


 「起きよう」


 呟くと、隣のベッドからアリアが起き上がる。


 「おはよう、セラ」「おはよーございます!」


 リリナも跳ね起きる。二人の寝ぼけた顔。髪が少し乱れていて、可愛らしい。


 「今日、初めてのクエストだ」


 セラが言うと、二人の目が一気に覚める。


 「クエスト!」「ええっ! わくわく!」


 「朝ごはん食べて、出発」「はい!」「ええっ!」


 三人は宿の食堂へ行く。昨日と同じ食堂。同じ匂い。でも今日は違う。今日から冒険者として、初めての仕事だ。


 「ローストポーク、三つ」


 セラが注文すると、店主が微笑む。


 「連続三日。エルフのみんな、行列ものだね」「美味しいから」「ありがとう」


 「いただきます」「いただきます!」


 三人で食事をする。美味い。昨日より美味く感じる。


 「なんだろう。今日の方が美味く感じる」「クエストがあるから、かな?」


 アリアが呟く。その瞳に、期待と緊張が混ざっている。


 「二人と一緒に食べるから、かも」


 セラが言うと、二人は頬を染める。


 「セラ……」「もう、からかわないで」


 (これが前世の職場だったら確実にパワハラになるが、こっちでは通じない。エルフ文化の懐の深さだ)


 「食べ終わったら、出発。準備しよう」


 「はい!」「ええっ!」


 装備を確認する。昨日買った鎌。採草用の袋。水筒。食料。


 「全部、あるかな?」


 「鎌、三つ」「袋、三つ」「水筒、満タン」


 「完璧。行こう」「はい!」「ええっ!」


 三人は宿を出る。朝の街。活気に満ちている。


 「北門から出て、狩場へ」


 門番は四十代くらいの男性だ。厳めしい顔だが、目は優しい。


 「おはよう、クエストに行くのか?」「はい。初めてのクエスト」「そっか。気をつけて。無理するなよ。初めてなら、特に」「はい。無理しません」


 門番は、安心したような顔で扉を開ける。大きな木の扉。ゆっくりと開く。外の光が、差し込む。


 「行ってらっしゃい」「失礼します」


 三人は、門を出る。


## 魔物探索


 街道が続いている。北へ向かう道。街の喧騒が、徐々に遠ざかる。代わりに聞こえてくるのは鳥の声。風の音。草原を渡る風が、頬を撫でていく。


 「広い……」


 リリナが呟く。草原が広がっている。昨日より広く感じる。気持ちが変わったからか。それとも、これから戦いに向かっているという事実が、景色を別物に変えているのか。


 「あの森が、狩場」


 セラが指差す。ギルドで聞いた場所。街の北、小さな森。初心者向けの狩場。木々のシルエットが、遠く地平線近くに見える。


 「遠くない。歩いて一時間」「一時間!」「ええっ! 運動だ!」


 リリナが跳ねる。アリアも微笑む。


 「歩こう。道中、警戒も」「はい!」「ええっ!」


 三人は街道を進む。朝の爽やかさ。風が気持ちいい。エルフの森とは、違う風。あそこは木々の香りが濃い。ここは草と土の匂いがする。どちらも自然の匂いだが、まるで別物だ。


 「空気、澄んでるね」


 アリアが目を細める。遠くに、山脈が見える。白い雪を被った頂。その下に、なだらかな草原。


 「エルフの森と、違う景色」「うん。でも、きれい」「ええっ! 全部きれい!」


 リリナが両腕を広げて深呼吸する。子どもみたいな動き。でも、セラには眩しく見える。


 「魔物、出るかな?」


 アリアが問う。


 「ギルドの人が言ってた。狩場は初心者向け。強い魔物はいない。ゴブリンとか、スライムとか」「ゴブリン……」


 リリナが少し緊張したような顔。


 「大丈夫。二人と一緒なら」「うん。セラと一緒なら」「私も! セラたちと一緒なら、なんでもできる!」


 「修行の成果、試す場だ」


 「聖三角、使えるかな?」


 アリアが問う。エルフの森で何百回と練習した魔法。呼吸を合わせ、魔力を融合させる。失敗したことも、成功した達成感も、両方覚えている。


 「実戦、初めて。でも、修行でやった通りにやれば大丈夫だ。落ち着いて連携する。それだけ」「うん! できる!」「ええっ! 私たち、最強!」


 リリナが握り拳を作る。セラも、気合が入る。


 (「最強」なんて言葉、前世では笑い飛ばしていたが——今は本気で信じている自分がいる。二人の笑い方まで知っているチームに囲まれると、言葉の重さが変わる)


 道中、様々な発見がある。珍しい花。見たことない鳥。遠くに見える山。


 「わあ、きれい……」


 アリアが花のそばに寄る。小さな白い花。茎がほっそりして、風に揺れている。


 「摘んでいいのかな?」「自然は、大切。摘まないように」「うん!」「ええっ!」


 エルフとしての教育。自然との共生。それは、どこでも同じ。


 「少し休憩?」「いいかも。水筒、飲もう」


 木の下で休憩する。水筒の水。冷たくて、美味い。


 「生き返る……」「うん。セラのくれた水、美味しい」


 「二人と飲むから、美味いんだよ」「もう……からかわないでって」


 二人の恥ずかしそうな顔。セラは笑う。


 「ごめん、ごめん。でも、本当だよ」「……うん」「……うん」


 二人も小さく笑う。


 「クエスト、終わったらどうしよう」


 アリアが呟く。ぼんやりとした声。夢みるような目。


 「お祝い、しよう。頑張った分」「えへへ、お祝い! 美味しいもの食べたい!」「当たり前でしょ? 勝ったら、お祝いよ」


 「それは、帰ってから考える。今は、集中」「うん!」「ええっ!」


 「休憩、終わり。進もう」「はい!」「ええっ!」


 目的地は、もう近い。草の匂いが濃くなってきた。木々の影が、段々大きく見える。三人の足が、少しずつ速くなる。


## 戦闘


 一時間歩いて、森に到着。小さな森。でも、雰囲気がある。木々が茂り、少し暗い。エルフの森とは違う暗さだ。密で、少し圧迫感がある。


 「ここが、狩場か」「魔物、いるかな?」


 セラは、魔力を探る。エルフの感覚。自然の気配の中に、異質なものを探す。


 「……いる。遠くに、何体か」


 「何体?」「三体。たぶん、ゴブリン」「ゴブリン……」


 リリナが少し緊張したような顔。でも、すぐに決意の表情。


 「大丈夫。修行してきた」


 セラが言うと、二人は頷く。


 「うん。聖三角、できる」「ええっ! 私たち、最強!」


 「探索、始めよう。慎重に」「はい!」「ええっ!」


 三人は、森に入る。木々の間を進む。枝が触れる。葉が揺れる。


 「痕跡、探そう」


 地面を見る。足跡。糞。折れた枝。


 「これ、何?」


 リリナが指差す。地面に、小さな足跡。


 「ゴブリンの足跡。ギルドで見た図鑑の通り、小さな足。爪の跡。三本の指」「新しそう」


 アリアも確認する。土が、少し掘り返されている。湿っている。


 「近くにいる。警戒」「はい!」「ええっ!」


 三人は、足跡を追う。慎重に。静かに。音を立てないように。


 「見つけた!」


 アリアが小さく声に出す。前方に、影が見える。木の陰。


 「ゴブリン」


 セラも確認する。小さな影。緑色の肌。身長、一メートル半くらい。棍棒を持っている。


 「一体のみ。優位だ」


 「戦う?」


 アリアが問う。


 「初戦。様子を見る。二人の連携も試す」「うん。慎重に」「ええっ!」


 三人は、接近する。隠れながら。音を立てずに。木の陰を利用する。


 「距離、二十メートル」


 ゴブリンは、気づいていない。木の根に座って、何か食べている。完全に油断している。


 「奇襲、できる」


 アリアが提案する。セラも頷く。


 「ライト・アローで、牽制。アリア、水魔法で拘束。リリナ、ウィンド・エッジで仕留める」「了解」「ええっ!」


 三人は、魔法を構える。初めての実戦。緊張する。でも、二人と一緒なら、大丈夫。


 「心臓、うるさい……」


 アリアが小さく呟く。白い頬が、少し赤い。


 「俺も」「ええっ! 私も!」


 三人揃ってうるさい心臓。セラは、少し笑いそうになる。


 「いくぞ」「うん!」「ええっ!」


 「光よ、矢となれ。敵を射貫け——ライト・アロー!」


 セラが叫ぶ。掌から光の矢が放たれ、ゴブリンへ向かう。修行で何度も練習した魔法。


 「ギャッ!」


 ゴブリンが驚く。光の矢が、肩に命中。小さな爆発音。


 「次、アリア!」「水の鞭!」


 アリアが叫ぶ。水が鞭のように動き、ゴブリンの足を拘束。素早い動き。


 「ガアッ!」


 ゴブリンが転ぶ。水の鞭に、足を捕らえられている。動けない。


 「リリナ!」「風よ、刃となれ。敵を裂け——ウィンド・エッジ!」


 リリナが叫ぶ。風の刃が、ゴブリンへ向かう。狙いは正確。


 「ギャアッ!」


 ウィンド・エッジが、命中。ゴブリンの胸に、深い傷。動きが止まる。


 「……倒れた」


 セラが確認する。ゴブリンは、動かない。


 「勝った……」


 アリアが呟く。リリナも、驚いたような顔。


 「ええっ! 私たち、勝った!」


 リリナが跳ねる。アリアも微笑む。


 (詠唱、ちゃんと繋がった。修行の通りだった。「光よ、矢となれ」で掌が光を呼んだ瞬間の感覚。あれは練習の時と同じで、でも実戦は全然違う重さがあった)


 「修行の成果、出たな。でも、まだ」


 セラが言うと、二人は真剣な表情に戻る。


 「次も、頑張る」「うん。私も」「ええっ! 二体目!」


 「他に、二体」「油断しない」「痕跡、追おう」


 三人は、進む。ゴブリンの死体は後で回収する。


 「魔力、減ったかな?」「少し。でも、大丈夫」「私も。大丈夫」


 セラも、少し感じる。魔力の消耗。でも、戦える。まだ七割くらい残っている。エルフとしての魔力容量は他種族より大きいと聞いていた。今日は、初めてその実感があった。


 「聖三角、残ってる。いつでも使える」「ええっ! 三人、最強!」


 「進もう。警戒」「はい!」「ええっ!」


 三人は、森を進む。二体目のゴブリンを探す。木の間から、光が差し込む。葉の影が揺れる。


 「痕跡、ある」


 アリアが見つける。足跡。新しい。湿った土。ゴブリンの三本爪が、はっきり押されている。


 「近くにいる」


 セラも確認する。魔力の気配。近い。二つ。大きさが違う。


 「気をつけて」「はい!」「ええっ!」


 三人は、進む。突然、前方から音。木が揺れる。葉が散る。


 「ギャッ!」


 ゴブリンが現れる。二体。棍棒を持っている。一体は少し大きい。動きが速い。


 「二体一緒……」


 アリアが少し緊張。リリナも、同じ。二人の顔に、緊張と気合が混ざる。


 「聖三角、使う」


 セラが決断する。三人で、最強の魔法。修行で何度も成功している。でも、実戦は初めてだ。呼吸を合わせる。


 「準備」「はい!」「ええっ!」


 三人は、手を繋ぐ。修行でやった通り。心を一つに。魔力を融合させる。光の意思と、水の意思と、風の意思が交差する。練習と同じ感覚——でも今日は、二人の指がしっかり握り返してくる。


 「三つの光よ、交わりて結界となれ。邪悪を封じ、清浄を守れ——ホーリー・トライアングル!」


 三人で叫ぶ。光、風、水。三つの属性が融合し、輝く。光の三角形が空中に浮かび上がる。眩しい。温かい。


 「ギャアアッ!」


 ゴブリンたちが叫ぶ。ホーリー・トライアングルの光が、二体を包む。圧倒的な力。まるで、邪悪なものを清める光だ。


 「倒れた」


 セラが確認する。二体とも、動かない。一撃で。


 「修行の成果。二人との絆だな」


 「セラ、すごかった」「アリアの水魔法、かっこよかった」「リリナのウィンド・エッジ、一発だった」


 三人で、また褒め合う。互いの活躍を讃える。同じ目標に向かう仲間。


## 討伐完了


 森の奥。少し暗い。木々が密集している。


 「痕跡、ある」


 リリナが見つける。足跡。大きな足跡。二つ。


 「リーダー格と護衛か」


 セラが判断する。ゴブリンのリーダー。少し強いはず。


 「気をつけて」「はい!」「ええっ!」


 三人は、接近する。前方に、影が見える。二つ。


 「いた」


 アリアが小さく声に出す。ゴブリン二体。一つは少し大きい。棍棒も、大きい。


 ゴブリンたちが、気づく。鋭い目。三人を見る。


 「ギャッ!」


 叫び声。ゴブリンが、棍棒を振る。


 「回避!」


 セラが叫ぶ。三人は、散る。


 「ドガッ!」


 棍棒が、地面を叩く。土が舞う。大きな音。


 「反撃! 光よ、矢となれ——ライト・アロー!」


 セラが叫ぶ。光の矢が大きなゴブリンの胸に命中する。


 「ガアッ!」


 ゴブリンが後退する。倒れない。


 「次、アリア!」「水の檻!」


 アリアが叫ぶ。水が檻のように現れ、ゴブリンを囲む。


 「ガアッ!」


 ゴブリンが、水の檻に囚われる。動けない。


 「リリナ! 小さいのも!」「風よ、刃となれ——ウィンド・エッジ!」


 リリナが叫ぶ。風の刃が、小さいゴブリンへ向かう。


 「ギャッ!」


 小さいゴブリンが、回避しようとする。でも、ウィンド・エッジが命中。肩に、深い傷。


 「やった!」


 リリナが喜ぶ。でも、戦いは続く。


 「水の檻、破る!」


 大きなゴブリンが力を振り絞る。水の檻にヒビが入る。


 「三つの光よ、交わりて結界となれ——ホーリー・トライアングル!」


 セラが叫ぶ。二人も頷く。


 「はい!」「ええっ!」


 三人は、手を繋ぐ。もう一度。最強の魔法。


 「ホーリー・トライアングル!」


 三人で叫ぶ。光、風、水。三つの属性が融合し、輝く。


 「ギャアアッ!」


 ゴブリンたちが叫ぶ。光が、二体を包む。圧倒的な力。


 「倒れた」


 セラが確認する。二体とも、動かない。


 ……でも、あの一秒前のことを、セラはずっと覚えていた。


 ホーリー・トライアングルを放つ直前。大きなゴブリンが水の檻を完全に砕いた——そのまま突進した。アリアが弾き飛ばされた。木の根に足を取られて、傾斜した地面へ——


 セラの手が動いた。考えより先に。


 掴んだ手が、震えていた。

 自分の手なのに、わからなかった。アリアの腕を掴んでいる手か、恐怖で震えている手か。


 (……俺、今、魔力が暴走しかけた)


 アリアが崩れ落ちそうになったあの一瞬——「守りたい」という感情が、全身の魔力と直結した。制御を失いかけた。もし暴走していたら——アリアを吹き飛ばしていたかもしれない。


 「……顔色が悪い、セラ。怪我した?」


 「……してない」


 「怖かった?」


 (怖かった。でも魔物に対してじゃない)


 「アリアを、失いそうだったから」


 言葉が出た。出てしまった。感情を言語化するのが苦手な俺が、今は言わないといられなかった。


 「……セラ」


 「前世の俺は、誰かを失いたくないって思ったことが、なかったかもしれない。それが今は——」


 声が、震えていた。


 アリアは何も言わなかった。ただ、セラの手をそっと両手で包んだ。温かかった。震えが、少しずつ収まっていく。


 (コンビニで一人ポテチを食べていた俺が、今、誰かの手の温かさで泣きそうになっている。進化したのか、退化したのか、わからないけど——これが、生きてるってことなのかもしれない)


 アリアは、セラの手が震えているのを感じた。守りたい、という気持ちが魔力を動かした——それはセラだけじゃない。私も、ずっと、そうだった。


 「勝った……」「ええっ! 私たち、最強!」


 「初クエスト、完了」「うん! やった!」「私も! セラたちと一緒なら、なんでもできる!」


 三人の声が、森に響く。勝利の声。初クエストの声。


 「証拠、確保しよう」「はい!」「ええっ!」


 「怪我、ない?」


 セラが確認する。二人をざっと見る。アリアの袖が少し汚れている。リリナの靴に泥が付いている。傷はない。


 「大丈夫」「ええっ! 私も!」「良かった」


 三人は、ゴブリンの耳を取る。五体分。クエスト完了の証。冷えた。少し重い。でも、これが「やり遂げた」という形をした重みだ。


 「帰還」


 三人は、森を出る。夕日が、沈みかけている。空が、オレンジ色に染まっている。


 森を出た瞬間、三人の足が止まった。


 言葉が出なかった。誰も何も言わなかった。ただ、夕日を見ていた。


 赤く染まった草原。長い影が伸びる。三人分の影が、並んで地面に描かれる。


 「……勝ったね」


 リリナが小さく言う。当たり前のことを。でも、その言葉に全部が詰まっていた。


 「うん」


 アリアも頷く。それだけで十分だった。


 セラは二人の顔を見る。疲れている。汚れている。でも、光っている。


## 報告と帰還


 「疲れた?」「少し。でも、楽しかった」「私も! 楽しかった!」


 リリナも笑顔。セラも、同じ気持ち。


 「二人と一緒なら、何でも楽しい」「うん!」「えっ!」


 三人は、街道を戻る。街への帰り道。夕日が、三人を照らす。影が、長く伸びる。


 帰り道は、来た時より足が軽い。気持ちが違う。来た時は「初めて」の緊張があった。今は「勝った」の充実感がある。


 「連携、どうだった?」


 セラが聞く。二人に、感想を求める。


 「ライト・アローの牽制、すごく助かった。アリアが水魔法使うタイミング、取りやすかった」「えへへ、私もリリナのウィンド・エッジが気持ちよかった! びゅって来て、ぱっと当たって!」「ええっ! そう? 嬉しい!」


 「いい夕日だね」「うん。オレンジ色、きれい」「ええっ! きれい!」


 「勝ったね」「うん。二人との連携、完璧だった」「ホーリー・トライアングル、すごかった」


 リリナも目を輝かせる。


 「初めての実戦で、成功した」「セラの魔法、すごかった」「アリアの水魔法、綺麗だった」「リリナのウィンド・エッジ、正確だった」


 三人で、褒め合う。セラは、胸が熱くなる。


 「二人と一緒なら、何でもできる」「うん!」「ええっ!」


 帰り道。夕日が沈むにつれて、空の色が変わる。オレンジから、濃い赤へ。赤から、紫へ。


 三人は並んで歩く。ギルドの方向へ。足が少し疲れている。でも、今日は一日中歩いていたから当然だ。エルフの足は人間より丈夫と聞いていたが、こんなに歩いたのは転生してから初めてだ。


 「足、痛くない?」


 アリアが心配そうに聞く。


 「平気。アリアは?」「少し。でも、頑張れる」「私も! もっと歩ける!」


 リリナが元気に言う。この子のスタミナは底なしだ。


 「たくましいな」


 セラが呟くと、リリナが胸を張る。


 「エルフの女の子、強いからね! セラが鍛えてくれたからね!」


 (俺が鍛えたというより、修行についてきたのが偉い。俺はただ一緒にやっただけだ)


 街に到着。夕暮れ。人々が帰宅している。活気がある。


 「ギルドへ」「はい!」「ええっ!」


 「いらっしゃい」


 受付嬢が微笑む。昨日の受付嬢。二十代くらい。穏やかな顔。


 「クエスト、完了」


 セラが報告する。受付嬢は、驚いたような顔。


 「初日で、完了?」「はい。ゴブリン五体、討伐しました」


 「証拠、あります」


 セラが耳を見せる。五体分。


 「確かに。ゴブリンの耳。クエスト、完了です」「ありがとうございます」


 「報酬、銀貨三枚」


 受付嬢が銀貨を出す。セラは、受け取る。重みを感じる。


 「ありがとうございます」「また、頼みますね」


 「初クエスト、成功!」「うん! やった!」「私も! セラたちと一緒なら、なんでもできる!」


 二人の声。ギルドに響く。他の冒険者たちも、振り返る。


 「エルフのみんな、初クエスト完了か」「おめでとう」


 一人の冒険者が声をかける。戦士風の男性。三十代くらい。鎧に傷がある。歴戦の雰囲気。


 「ありがとうございます」「Gランクから、頑張れ。すぐ上がるよ」「はい。頑張ります」


 「何か、アドバイスはありますか?」


 セラが聞く。先輩冒険者の言葉は、貴重だ。


 「魔法使いは、連携が大事。一人で無理するな。見てたら、君たちはそれが出来てた。続けろ」


 「はい」「うん!」「ええっ!」


 男性は、頷いて去っていく。セラは、少し嬉しい。


 「優しかった」「うん。ギルドの人、みんな優しい」「冒険者、仲間、だな」


 セラが言うと、二人は笑顔になる。


 「仲間、嬉しい」「うん!」「ええっ!」


 夜。三人は、宿に戻る。ベッドに座る。今日の出来事。初めてのクエスト。初めての戦闘。初めての勝利。


 「二人と一緒なら、強い」


 セラが呟くと、二人は頬を染める。


 「セラ……」「もう、からかわないで」


 二人の恥ずかしそうな顔。セラは、笑顔になる。


 「明日も、クエスト」「はい!」「ええっ!」


 二人の元気な声。セラも、気合が入る。


 「Fランクへの昇格、目指す。早ければ、一ヶ月くらいで上がれると聞いた」「うん! セラと一緒なら!」「私も! セラたちと一緒なら、どこへだって強い!」


 「おやすみ、二人」「おやすみ、セラ」「おやすみなさい!」


 セラは目を閉じる。二人と一緒なら、明日もきっと大丈夫。


 しばらくして、二人の寝息が聞こえてくる。アリアは静かで均一な寝息。リリナは少し大きい。


 (二人の寝息が聞こえる。今日はいい日だった、と思いながら眠れる。それだけで十分だ)


 眠りに落ちていく。新しい冒険の夜。二人との絆。そして、明日への希望。


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