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神に楽しめと言われた。楽しみすぎて、神を超えた。  作者: issoh


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第43話 ギルド登録

# 第43話 ギルド登録


## 登録の手続き


 転生四十八日目。朝の光が、宿の窓から差し込んでいる。


 セラは目を開ける。昨日、冒険者ギルドで仮登録したばかり。Gランクカードが、枕元に置いてある。今日から、これが俺の身分証だ。


 重い。そんなに重い物じゃないのに、重く感じる。


「起きよう」


 隣のベッドからアリアが起き上がる。金髪が乱れている。でも顔は、朝から清々しい。


「おはよう、セラ」「おはよーございます!」


 リリナも跳ね起きる。二人の寝ぼけた顔が、朝日の光の中で眩しい。


「今日は、ギルドで正式な手続きだ」


「冒険者、正式登録!」「ええっ! わくわく!」


 二人の元気な声。セラも、気力が湧いてくる。いつもそうだ。二人の声で、朝が始まる。


「朝ごはん食べて、行こう」「はい!」「ええっ!」


 三人は宿の食堂へ行く。昨日と同じ食堂。同じ匂い。でも今日から冒険者だ——という気持ちが、なんとなく料理の味を変えている。


「ローストポーク、おすすめ」


 セラが注文すると、店主が微笑む。


「連続で来るんだね。エルフのみんな」「美味しかったから」「ありがとう」


「いただきます」「いったきます!」


 三人で食事をする。美味い。昨日より美味く感じる。


「何でだろう。今日の方が美味く感じる」「冒険者になったから、かな?」


 アリアが呟く。その瞳に、期待と少しの緊張が混ざっている。


「そうかも。二人と一緒に食べるから、かな?」


 二人は頬を染める。


「セラ……」「もう、からかわないで」


 (前世でいうと、就職前日みたいな感覚——緊張してるのにどこか楽しみな、あの空気だ。でもあの時より、今の方がずっと楽しみが大きい)


(こういうことが言えるようになった。前世の俺は「美味しかった」も「ありがとう」も照れて口ごもってた。今は自然に言える。これも成長か、単にアリアに慣れたか)


「行こう。ギルドへ」「はい!」「ええっ!」


 三人は宿を出る。朝の街。活気に満ちている。人々が行き交い、馬車が走る。昨日より少し慣れてきた。少しだけ。


 ギルドの前に立つ。大きな建物。看板には「冒険者ギルド」と書かれている。


「ここが、今日から私たちの場所」


 アリアが呟く。その瞳に、決意が光っている。


「頑張ろう」「ええっ! 私たち、頑張ります!」


 リリナも握り拳を作る。


「入ろう」


 三人は、ギルドの扉を開ける。


 ホールが広い。昨日と同じ冒険者たちの活気。でも今日は、自分たちもその一部だという意識がある。


「いらっしゃい」


 昨日と同じ受付嬢。微笑んでいる。


「登録の手続き、進めますか?」「はい。よろしくお願いします」


 受付嬢は紙を取り出す。


「必要事項を記入してください。名前、種族、年齢、得意な魔法。あとは出身地と、緊急連絡先があれば」


 書類、か。


 セラはペンを手に取る。書きながら、エルフの森での修行を思い出す。アリアとの共鳴魔法。リリナとの聖三角。守護隊長の指導。全部、今の自分の力だ。


「セラ・ウィスパーウィンド。エルフ。十四歳。風と光の魔法。エルフの森出身」


「アリア・エルフウィスパー。エルフ。十四歳。光と水の魔法。エルフの森出身」


 アリアも記入する。その字は、丁寧で綺麗。えへへ、と笑いながら書いている。


「リリナ・レイクフォレスト。エルフ。十四歳。水と風の魔法。エルフの森出身」


 リリナも記入する。少し緊張しているようだ。ペンを持つ手が、かすかに震えている。


「書けました」


 セラが紙を渡す。受付嬢は、内容を確認する。


「エルフのみんなですね。珍しいです」「エルフの森から来ました」「遠いですね。でも、歓迎しますよ」


 受付嬢が微笑む。その笑顔に、少し安心する。


「ギルドの規則も、一通り説明しますね。クエストの受け方、報告の仕方、ランクの上げ方。覚えることがいくつかあります」


 受付嬢が手際よく説明を始める。クエストは掲示板から取る、受注票に記名する、完了したら報告書を出す——細かいが、合理的なシステムだ。説明を聞きながら、セラはメモを取る。


「次は、能力測定です。測定室へどうぞ」「測定?」


「魔力の量と身体能力を測定して、初期ランクを決めます。実力があれば、早くランクを上げられますよ」


「わかりました。測定室へ行きます」


## 能力測定


 測定室は、意外と広い。奥に、大きな機械がある。水晶の玉。握力計。走るための場所。全体的に薄暗いが、測定器だけが淡く光っている。


「こんにちは」


 測定係の男性。中年くらい。穏やかな顔。目に好奇心が光っている。


「エルフのみんなか。珍しいね。どこから来たの?」


「エルフの森から来ました」


「そっか。じゃ、測定始めようか。まずは、魔力測定だ。手をこれに乗せて」


 セラは、測定器に手を置く。水晶の玉。手を触れると、光が灯る。じわじわと、光が広がっていく。薄暗い部屋の中で、光が壁まで届いた。


「……」


 測定係が機械を見て、目を見開く。


「……いいですね。魔力の量、多いよ」「多い?」「平均の、五倍くらい」「えっ!?」


 セラは驚く。五倍。そんなに?


 (転生前の身体検査で医者に「体脂肪率が異様に低いですね」と言われた程度の驚きと思ってたが、この測定係の顔を見ると、どうも桁が違うらしい)


「エルフだから、多い方なんですか?」「いや、エルフでもこんなに多いのは珍しい。二十年、この仕事をしてるけど、初めて見る数値だ」


 測定係が機械を見る。驚きが隠せていない。


「魔力質もいい。純度が高い」「純度?」


「魔力の綺麗さ。綺麗な魔力ほど、強い魔法が使える。君の魔力は……これは本物だ」


「君、普通じゃないね」


「バレちゃった……」


 セラが呟くと、測定係は笑う。


「隠そうとしてた?」「ええっ、まあ。目立ちたくないので」


「ギルドには、ありとあらゆる情報が集まるよ。隠せるものじゃない」「了解しました。堂々としときます」


「次は、身体能力測定だ」「身体能力?」


「筋力。敏捷性。持久力。それらを測る」


「まず、握力から」


 セラは握力計を握る。全力で。


「……」


 測定係が数値を見て、目を見開く。


「すごいな」「ど、どのくらい?」「百キロ」「えっ!?」


 セラも驚く。百キロ。エルフの体って、そんなに?


 (転生前の握力は三十キロくらいだったぞ。三倍以上になってる。エルフって凄い。いや、転生体すごい。適応してる)


「次、走力」


 全力で走る。測定係がストップウォッチを持っている。


「……速い」「どのくらい?」「百メートル、十秒」「えっ!?」


 また驚く。十秒。一流の走者と同レベルだ。


「エルフの体、凄いな」「君、Sランク相当の能力があるね」「Sランク?」


「最高ランク。でも、実績がないから、最初はGランク。そこは変えられない。ルールだから」


「ランクは、実績で上げる。君なら、すぐ上がるよ」「そう、なんですか?」


 少し安心する。Gランクからスタート。でも、実力が認められている。


「セラ、緊張した?」


「……少しな」


「今は?」


「今も少し緊張してたけど、二人がいるから大丈夫だって思えた」


「えへへ、私がいればいつでも大丈夫だよ」


「その自信、どこから来るんだ」


「セラへの信頼から」


 答えがシンプルすぎて、返す言葉がなかった。


「次は、二人の番だ」「はい! 頑張ります!」


 アリアが前に出る。測定器に手を置く。光が灯る。


「いいね。あなたも魔力、多いよ」「エッ、私も?」「セラさんほどじゃないけど、平均の三倍はある。十分すごいよ」「三倍……」


 アリアも驚いている。身体能力も測る。握力、八十キロ。走力、十一秒。


「君も優秀だ」「あ、ありがとうございます」


 アリアが少し照れる。セラは、誇らしい気持ちになる。


「次、私っ!」


 リリナが前に出る。測定器に手を置く。光が灯る。平均の二倍半。身体能力。握力、七十五キロ。走力、十二秒。


「あなたも、魔力が多いね。平均の二倍半。十分、優秀だよ」「やったー!」


 リリナが跳ねる。


「三人とも、優秀だね。ギルドとしても、期待してるよ」「ありがとうございます!」


## ランク決定


 受付に戻ると、受付嬢が待っている。


「測定、終わりましたか?」「はい。数値、かなり良かったみたいで」「それは、おめでとう。ギルドマスターが呼んでいます。マスター室へ」「ギルドマスター?」


「このギルドの責任者。ランクを決めるのは、マスターだ」「なるほど」


 三人は、階段を登る。二階。廊下の奥に、ドアがある。木造の廊下が軋む。ここだけ、なんとなく重みが違う。


「ノックしよう」


 セラはノックする。


「どうぞ」


 中から声。三人は、ドアを開ける。


 部屋は、意外と質素。机。椅子。本棚。剣が一本、壁に飾られている。戦歴のある剣だと、柄の使い込まれ方でわかる。


「こんにちは」


 椅子に座っている男性。四十代くらい。厳めしい顔。でも、目は優しい。


「ギルドマスター、ですか?」「そうだ。お前たちが、エルフの森から来た三人だね」


「はい。セラ・ウィスパーウィンドです」「アリア・エルフウィスパーです」「リリナ・レイクフォレストです」


 マスターは、三人を見る。じっと見る。品定めするような目。でも優しい。


 (重役面接。その空気に近い。でも、今は全身汗だくにならずに立っていられる)


「測定結果、見たよ。……驚いたね。エルフのみんな、優秀だ」


「エルフの森で、修行してきました」


「そっか。でも、実績がまだない」


「最初は、Gランクからだ」


「Gランク……」


 セラは少し不満。Sランク相当の実力があると言われたのに。


「不満?」


 マスターが問う。鋭い。


「ええ、まあ。少し」「理由がある。ランクは、実績で上げる。能力だけじゃ、足りない」「実績?」


「クエストをこなす。モンスターを討伐する。人助けをする。それが実績だ。実力があっても、実績のない者はランクが低い。それがギルドのルール。お前たちが素晴らしい実力を持っていても、まだ世界で何も証明していない。分かるか?」


 納得。確かに、能力だけじゃダメだ。実績が必要。


「わかりました。Gランクから、頑張ります」「いい返事だ」


 マスターが微笑む。


「君たちは、特別だ。エルフの森から来た。しかも、三人で。ギルドとしても、期待してる」


「期待?」「エルフの森との、関係を築きたい。あそこは伝説の場所。入ってはいけないと言われている。でも、君たちは普通だ」


「平和なエルフです」「そっか。なら、もっと交流したいね」


 マスターが机から、カードを取り出す。


「これが、君たちのカード。これで、クエストを受けられる。最初のクエスト、大事にしろ」


「はい!」「ええっ!」


「行っておいで。冒険者たち。お前らなら、やれるよ」


 三人は、マスター室を出る。


 廊下に出ると、アリアが振り返って言った。


「マスター、優しかったね」


「厳しいけど、優しかった。そういう人が番長だと、組織がしっかりする」


「組織?」


「……ギルドって言いたかった」


 リリナが笑う。セラも笑う。


## 最初のクエスト


 一階に戻ると、冒険者たちが集まっている。掲示板の前。クエストを見ている。


「これが、クエストボード」


 アリアが呟く。


 ずらりと紙が貼られている。討伐。採取。護衛。回収。Sランクの依頼は上段。Gランクの依頼は一番下の段。紙の色が違う——討伐は赤、採取は緑、護衛は青。Gランクの紙は端が少し黄ばんでいる。よく貼り替えられる依頼の証だ。


「Gランクのクエストは、この辺か」


 セラが一番下の段に目を向ける。紙の数は十二枚。一枚ずつ読んでいく。


 「スライム五体討伐。報酬、銅貨五枚」。「薬草採取五本。報酬、銀貨二枚」。「迷子の猫を探せ。報酬、銀貨一枚」。「倉庫のゴブリン一体退治。報酬、銀貨三枚」。


 真剣に読んでいると、隣の冒険者が声をかけてきた。五十代くらいの男性。剣を腰に差している。


「おっ、エルフじゃないか。珍しい。Gランクか?」


「はい、今日から」


「ふーん。俺はBランクだが……Gはやめとけ、スライムは最初怖いぞ。あとゴブリンは臭い。採取が無難だ」


 忠告。悪い気持ちじゃない。


「採草で、薬草ですか?」


「そうだ。失敗しにくいし、命の危険もない。薬草と毒草を間違えなければ、な」


 男性は笑って、上段の依頼に手を伸ばした。自分の分を取るのだ。Bランクと並んだだけで、背中の圧が違う。実績というのは、こういう重さになって出てくるらしい。


「何にする?」


 アリアが問う。


「スライム討伐、いいですね。モンスターを倒す経験になる」


 リリナが言う。その目に、戦いへの期待が滲んでいる。


「でも、最初だからな」


 セラが考える。三人で。初めてのクエスト。スライムの体液には溶解性があるものもある——エルフの森で読んだ外の世界のモンスター辞典に書いてあった。ゴブリンは知能がある分、判断が難しい。


「これはどう?」


 アリアが薬草採取の紙を指差す。


「採草クエスト。街の近くで、薬草を集める」「薬草?」


「怪我や病気に使う草。五本集める。報酬は、銀貨二枚」


「銀貨二枚……」


 リリナが少し残念そうだ。でも、初めてのクエスト。安全第一。


「採草なら植物知識が活かせる。アリア、エルフの植物知識はあるか」


「うん! 草木は得意。任せて」


「なら採草にしよう。アリアが採草主導、俺とリリナで周囲の警戒」


「了解!」「わかりました!」


 最初のクエストから、役割分担が決まった。


 (新人研修初日に強みを活かした仕事ができてる。理想的な状況だ)


 受付嬢がクエストの紙を受け取り、確認する。


「採草クエスト。薬草五本。街の近くで集めてください。注意点があります。薬草には、似たような毒草もある。間違えないで」「毒草?」


「はい。見分け方は、この紙に書いてあります」


 図鑑のような紙を渡される。薬草の絵。緑色の葉。小さな花。毒草は、赤色の葉。大きなトゲ。


「薬草は花が白、毒草は花が赤。葉の形も違う。薬草は丸い、毒草は尖ってる」「間違えないように」「はい。気をつけます」


「エルフの森の薬草とは違うんですか?」


「この地域の固有種です。森のものとは形が違うかも」


「そうですか。しっかり覚えます」


 三人で図鑑を頭に叩き込む。アリアは一度見ただけで暗記した。さすがだ。


「アリア、毒草の判別は任せていいか」


「うん! 任せて」


「じゃあ採草はアリア主導で。俺とリリナは周囲の警戒」


 クエスト受注。完了。


 ギルドを出て、三人で顔を見合わせた。


 最初のクエスト。決まった。


## 準備と決意


 道具屋へ向かう。


「いらっしゃい」


 店主が迎える。老齢男性。白髪。白髭。


「採草用の道具。鎌とか、袋とか」「鎌は、あっち。袋は、こっち」


「これ、いいかも」


 セラが鎌を手に取る。軽い。切れ味が良さそう。


「それは、初心者向け。値段も安い。銀貨一枚」


 セラは銀貨を出す。三人分の鎌と袋を買う。全部で銀貨三枚。長老から渡された旅費の中から出す。


「ありがとうございます」「いってらっしゃい。気をつけて」


 次は街を少し探索する。露天の果物。リンゴ。ミカン。ブドウ。エルフの森にはない果物が並んでいる。色鮮やかだ。


「買ってみよう?」「ええっ! 食べたい!」


 三人で果物を食べる。甘い。美味い。


「美味しいね」「うん! セラたちと一緒に食べると、もっと美味しい!」


 (この言葉、毎回言ってるが……本当のことだから問題ない。事実を言ってる)


 武器屋の前を通る。剣。槍。弓。かっこいい。


「そのうち、買おう」「はい!」「ええっ!」


 遠くから見るだけ。でも、その重厚感が伝わってくる。


「冒険者、かっこいいね」「二人と一緒なら、もっとかっこいい」「えへへ」


 リリナが照れる。アリアも微笑む。


「セラが、かっこいい」「えっ、僕が?」


 セラが驚くと、アリアは頷く。


「うん。セラは、優しいし、強いし、かっこいい」「そ、そうかな?」「そうだよ!」


 リリナも加わる。二人の言葉。セラは、顔が熱くなる。


「……ありがとう」


「素直に受け取ってくれた!」


「えへへ、進歩だよ、セラ」


「うるさい。こっちは恥ずかしいんだ」


「顔、赤い」「赤くない」「赤いよ」


 (こういう言葉を素直に言える二人の方が、よっぽどかっこいいと思う。でも、それを言ったら余計に話が長くなりそうなので、今は飲み込む)


(前世の俺は褒められると「いえ、そんなことは」と反射的に否定してた。「ありがとう」と言える方が、みんな嬉しいんだな。エルフに転生してようやく気づいた)


 夜。三人は、宿の部屋で作戦会議。


「明日、採草クエスト。場所は、街の北。森の入り口」「毒草に、気をつけて」


 アリアが図鑑を見る。薬草と毒草。似ているけど、違う。


「花の色が違う。薬草は白、毒草は赤」「葉の形も違う。薬草は丸い、毒草は尖ってる」


 リリナも図鑑を見る。二人、真剣だ。


「三人で、確認し合おう。一人で勝手に判断しない」「はい!」「ええっ!」


 少し安心する。二人と一緒なら、大丈夫。


「装備も、確認しよう」


 鎌を見る。切れ味は良さそう。袋もしっかりしている。水分。食料。応急セット。


「アリア、水魔法で傷の応急処置できるか?」


「うん。水を使って傷口を洗う程度なら。ちゃんとした治癒魔法はまだだけど」


「それでも十分だ。リリナは?」


「わ、私は戦闘に集中します! 攻撃と補助で!」


「いいな。じゃあ役割分担を決めよう」


 三人で話し合った。セラが前衛で攻撃、アリアが後衛で支援と補助、リリナが機動力を活かした中衛。それぞれの得意を活かす配置だ。


「セラって、なんかリーダーっぽくなってる」


 アリアが少し驚いたように言った。


「そうか?」


「うん。前より決断が早い気がする」


「守護隊の訓練の成果かな」


「えへへ、かっこいい」


 (照れる。なぜか照れる。でも嬉しい。前世でいうと、飲み会の幹事以外でリーダーをやったことがなかった俺が——今は三人の配置を決めてる。不思議だ。でも、悪くない)


「忘れ物、ないね」「大丈夫。夜、休もう。明日、早い」「はい」「おやすみなさい」


 三人は、それぞれのベッドに入る。初めてのクエスト。初めての冒険者としての仕事。


「二人と一緒なら、大丈夫」


 セラが呟くと、二人も頷く。


「うん。セラと一緒なら」「私も! セラたちと一緒なら、なんでもできる!」


「でも、無理はしないこと。ここ、約束な」


「……うん、約束」「はい、約束します!」


「良し。じゃあおやすみ」


「おやすみ、二人」「おやすみ、セラ」「おやすみなさい!」


 セラは目を閉じる。明日、最初のクエスト。


 二人の寝息が聞こえる。


 (冒険者として、始動だ。転生前の社会人一年目とは全然違う達成感がある。あの時は「生き残った」という感覚だったが、今は「これから始まる」という感覚だ。大きな違い)


(役割分担が自然にできた。二人が素直に従ってくれた。信頼されてるんだな。転生前には信頼関係なんて、作り方がわからなかったのに)


 眠りに落ちていく。ギルド登録の夜。最初のクエストの前夜。明日から、ようやく冒険者としての日々が始まる。


 ——楽しみだ、とセラは思う。心から、そう思う。


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