第28話 三人の関係
# 第28話 三人の関係
## 翌朝
転生三十三日目の朝、セラはいつもより早く目が覚めた。
ベッドの上で身を起こし、膝を抱える。窓の外からは、まだ薄暗い朝の光が部屋の中に差し込んでいる。
(昨日のことが、まだ頭に残ってる)
夜の広場で交わした三人の会話。リリナの涙。アリアの手の温もり。それと——
(ちゃんと向き合う、と言った。自分で言った言葉が、まだ耳に残ってる)
口に出したことで、むしろはっきりした部分がある。長く抱えていた重荷が、少しだけ軽くなった気がした。でも同時に——これから始まる新しい責任が、ずっしりとのしかかってくる。
それでも、重さは嫌じゃなかった。
「二人のことを、ちゃんと大切にする——それだけだ」
独り言が漏れる。
セラはベッドから立ち上がり、部屋の中を見渡した。机の上には、成人の儀で貰った星形のペンダントが置いてある。朝の光を受けて、かすかにきらめいている。
(このペンダント、アリアも同じものを持ってる。成人の儀の時、二人揃ってもらった。絆を確かめ合う品らしい。……俺には、そっちの方がずっとしっくりくる)
着替えを済ませてリビングへ出ると、アリアがすでにキッチンに立っていた。
「おはよう、シルヴャン」
「おはよう、アリア。早いな」
「昨日早く寝たから。シルヴャン、今日は顔色いいね」
「少し眠れた」
「よかった」
朝食はいつも通りのスープとフルーツだった。アリアが椅子を引いて座り、セラも対面に座る。
スープを一口飲む。温かくて、野菜の甘さが広がった。アリアが作るものは、いつもこういう温かさがある。
(ここに帰ってくるとほっとする。それが、アリアのそばにいることの意味だ)
「今日、リリナちゃんと会える?」
アリアが先に聞いてきた。
「昨夜の帰りに、会う約束してた。午前の訓練が終わった後で」
「そう。私も行っていい?」
「もちろん。アリアも来てくれた方がいい」
アリアが小さく笑った。
「ありがとう」
それだけで充分だった。
## 気持ちの確認
午前の訓練が終わり、三人は守護隊本部の庭に集まった。
春の花が咲いていた。蝶が二匹、花の間を飛び回っている。噴水が音を立てて水を吐き出している。昨日の夜の広場とは全然違う、明るい場所だ。
「セラ!」
リリナが手を振って駆け寄ってきた。顔に少し疲れがある。あまり眠れなかったのかもしれない。
「おはよう、リリナ」
「おはよ! アリアさんも来てくれたんだね」
「ええ。いいかな?」
「もちろん!」
三人でベンチに並んで座った。リリナがチラチラとセラを見ている。何か言いたいことがある顔だ。
「昨夜のこと——ちゃんと整理できた?」
セラが先に聞くと、リリナが少し肩の力を抜いた。
「うん。少し寝れなかったけど……頭の中は、すっきりしてる。あの「時間をくれ」より、「ちゃんと向き合う」の方が、ずっと前に進んだ気がした。昨日より嬉しかった」
「俺も、そう思ってる」
セラはリリナの方を向いた。
「リリナのことを、大切に思ってる。それは昨日も今日も変わらない。ただ——焦りたくない。アリアとの関係があって、自分の中の整理もある。そこを丁寧にしながら、ちゃんとリリナとも向き合う」
「うん」
「それで——嫌か? 待つのは」
「嫌じゃない」
リリナがきっぱりと言った。
「待つって言ったのは本当。セラが正直でいてくれるなら、待てる。急かして嘘の答えをもらうより、本物の答えを待つ方がいい。私、せっかちだけど——この件だけは、待てる気がする」
「そっか」
アリアが静かに言った。
「リリナちゃん、ありがとう」
「え?」
「セラを信じてくれているから。簡単じゃないのに」
「アリアさんこそ、すごいよ」
リリナが少し目を細めた。
「こんな状況なのに、私に優しくしてくれて。正直に言うと——ちょっとだけ、申し訳なくて」
「申し訳ないなんて思わないで。私はセラの幸せが大事だから。セラが誰かを大切に思えるなら、それは悪いことじゃない」
「アリアさん……」
三人の間に、少し静かな空気が流れた。
(申し訳ない、という気持ちをリリナが持っていること——それはリリナがアリアを尊重している証拠だ。こういう関係は、崩れない気がする)
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セラは手を差し出した。
「三人で、ちゃんとやっていこう。チームとして。それぞれの気持ちも尊重して」
アリアが手を重ねた。リリナも、少し恥ずかしそうに手を乗せた。
(三つの手が重なる。それだけだ。それだけのことが、実際にここで起きている。予想よりずっと温かかった)
「じゃあ、三人でお昼でも食べよっか」
リリナが明るく言った。
「広場の干し肉の串焼き、食べたい」
「それ、リリナの好きなやつだろ」
「セラ、知ってたの?」
「入隊後の最初の訓練終わりに食べてたのを見てた。美味そうだったから覚えてた」
リリナの頬が赤くなった。
「……えへへ、セラって、こういうとこある。さらっと言うのやめてほしい」
「なんで」
「恥ずかしいから!」
アリアがくすくすと笑った。
「私より早く覚えてたのね」
「ごめん」
「謝らなくていいわ。ふふっ」
## 三人で食事
広場の屋台で昼食を取った後、三人は石畳のベンチに並んで腰を下ろした。
「うまかったな」
「でしょ! あそこの串焼き、ほんとに美味しいんだよ。肉の塩加減が絶妙で」
リリナがよく知っている通り——確かに、香辛料の効き方が絶妙だった。こっちの世界の調味料の組み合わせは、前世で食べていたものとは全然違う。その独自のうまさが、少しずつ好きになってきた。
「アリアさんは串焼き、好き?」
「ええ。でもリリナちゃんほどは食べられないわ。よく二本いけるよね」
「三本いける」
「えっ、三本!?」
「訓練の後は、四本いったこともある」
「リリナちゃん、そんなによく動くのに細いのね。不思議だわ」
「代謝がいいんだと思う!」
しばらく、他愛ない話をしていた。
リリナの兄弟の話。アリアの子供の頃の話。セラが前世ではこんなことをしていた——とは言えなかったが、幼い頃のこと(改変版)を少し話した。
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話しながら、セラはふと気づいた。
三人でこうして並んでいると、不思議と不自然さがない。ライバル同士だったはずのアリアとリリナが、普通に笑い合っている。どちらかが引いているわけでも、どちらかが我慢しているわけでも——ない、ように見える。
(本当に、そうなのか?)
疑問が浮かんだ。あまりに自然すぎて、かえって心配になる。
(どちらかが心の中で葛藤を抱えたまま、笑顔を作ってる可能性がある。それは嫌だ)
「アリア」
「ん?」
「正直に聞くけど——今日、しんどくない?」
アリアが少し驚いた顔をした。
「しんどい? なんで?」
「昨日から今日にかけて、急に色々あったから。無理してないかと思って」
アリアはしばらく考えた。リリナもアリアを見ている。
「……しんどいは、しんどい。完全に平気とは言わない」
「そっか」
「でも——これは我慢してるんじゃない。私がちゃんと考えた上で決めたことだから。しんどいけど、嫌じゃない。それは全然違うよ」
「うん」
「あと」
アリアは視線をリリナに向けた。
「リリナちゃんが変に自分を責めてないといいと思って。申し訳ないって気持ち、わかるけど——それがあり続けると、三人いる時に重くなるから」
「アリアさん……」
「私、リリナちゃんのことを「敵」とか「脅威」とか思ったことは一度もないよ。それは本当」
リリナが少し瞬いた。
「本当ですか」
「うん。セラを好きになる気持ちが本物なら、その人のことは理解できる。私にも同じ気持ちがあるから」
「……ありがとう、アリアさん。少し気が楽になった」
「よかった」
三人の間に、静かな空気が流れた。さっきの笑い声とは違う、少し落ち着いた空気だ。でも、それが重くはなかった。
(この三人で、なんかやっていけそうな気がする。不思議と、そう感じる)
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リリナがベンチの上で足を組み直しながら言った。
「ねえ。三人の関係って、今後どういう風になっていくんだろう。守護隊の他の人には、どう説明するのかな」
「あー、そういえばそこは考えてなかった」
「エルフの文化では複数のパートナーは珍しくないから、隠す必要はないと思うけど——セラはどう思う?」
「……正直、まだ整理できてない部分はある。でも、隠したくはない。嘘をつくのが一番嫌だから」
「うん、それがいい」
「ただ、自分から触れ回ることもしないと思う。聞かれたら正直に答える。そんな感じで」
「それで充分だと思う」
アリアが頷いた。
「チームとして、信頼関係はすでにある。関係性がどう変わっても、チームの機能が落ちなければ問題はないはず」
「確かに」
「リリナちゃんもそれでいい?」
「うん、全然いい。私、こういう話がちゃんとできる人たちでよかったって思う。うやむやにされるのが一番嫌だったから」
(うやむやにしないこと——それが三人で共通していた。だから、こうして話し合える)
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それから、また少し他愛ない話をした。
リリナが東側の集落の話をしてくれた。春先に桃の花が咲き誇って、一面がピンク色になること。幼い頃、兄と妹と一緒に花びらで遊んだこと。水が綺麗な川があって、夏には水遊びをしていたこと。
「今度、絶対案内するから」
「楽しみだ」
「アリアさんも来てね!」
「ええ、ぜひ」
セラは二人のやりとりを横で聞きながら、ふと思った。
(三人で、東側の集落に行く日が来るんだろうか)
絵空事に聞こえなかった。この三人なら、本当にそういう日が来る気がした。
アリアが子供の頃の話もした。両親とセラと——幼い頃にあったことを、懐かしそうに話してくれた。いくつかはセラに記憶がある(この体の記憶として)。いくつかは「ああ、そんなことあったか」と曖昧に相槌を打ちながら聞いた。
「シルヴャン、昔から変わってないよね。考えすぎるところ」
「それ、昔から?」
「うん。何かあるとすぐに遠くを見て、考え込んで。それで突然「わかった」って戻ってくるの」
「……俺の考えすぎ、そんなに目立ってた?」
「ものすごく。ふふっ」
リリナが笑った。
「そうやって考えすぎるのが、また好きなとこなんだよね。ちゃんと向き合ってくれてるって感じるから」
「二人ともよく合いますね」
「えっ、私が言ったこととかぶった」
「ふふっ、同じこと思ってたから」
アリアとリリナが顔を見合わせて笑った。
セラは苦笑した。でも——悪くなかった。
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でも——
「ねえ」
リリナが少し声を落とした。
「さっき、訓練場に向かう途中で、ガトー教官と補佐の人が話してるのが聞こえちゃって」
「何を」
「「西の集落から伝令が来た」って。魔物の痕跡が増えてるって話みたいだった。「警戒を強めろ」とも」
セラは手を止めた。
(西の集落。エルフの居住区の西端にある村。ここから三時間ほどの距離)
「ちゃんと聞こえたのか?」
「そんなに大声じゃなかったから、全部は聞こえてないけど。でも「群れを確認した」って言葉は聞こえた」
「群れ?」
「うん。魔物が群れているって言ってた気がする」
アリアが眉をひそめた。
「普通、魔物は単独か少数で動くよね。群れているのは……おかしくない?」
「うん。私も気になって」
セラは考えながら立ち上がった。
「ガトー教官に直接聞こう。俺も報告しておかないといけないことがある」
「泉のこと?」
「そう。あの異常現象と、西側の動きが繋がってる可能性がある。報告の義務がある」
アリアが頷いた。
「泉の調査から時間が経ってる。その間に状況が変わっているかもしれない。今のうちに情報を合わせておいた方がいい」
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守護隊本部の報告室に向かうと、ガトー教官は書類を広げていた。
「何の用だ」
「西の集落の件を聞きました。それと——泉の調査で見た異常について、改めて報告したいことがあります」
教官の目が少し鋭くなった。
「話せ」
セラが報告した。光の螺旋。植物の異常成長。古代エルフの魔法と思われる現象。あの「時間が加速する」ような感覚。
アリアも補足した。魔力濃度の異常。遺跡の記録との一致。
教官は聞き終えると、顎に手を当てた。
「……西の集落の件。昨日の夜、斥候が戻ってきてな。魔物の群れが西側の森に集まり始めているという話だ」
「群れが確認されたんですね」
「ああ。今のところ、集落への直接的な脅威にはなっていない。が——普通じゃない。魔物が群れる理由は、食料不足か、何かに引き寄せられているかだ」
「何かに引き寄せられている——ということは、遺跡の魔力放出が原因かもしれない?」
「可能性はある。あの辺りには遺跡の記録が複数残っている。もし遺跡から何らかの魔力が放出されているなら、生態系への影響が出ておかしくない」
セラはアリアと目を合わせた。
「来週の週次巡回は、西側を重点的にカバーしろ。三人で行け」
「はい」
「ただし——」
教官の声が、少し低くなった。
「偵察が目的だ。戦闘は最後の手段。何か異常を見たら、即座に本部へ報告して増援を待て。いいな。三人では無理な状況になる可能性を頭に入れておけ」
「了解です」
「セラ」
教官が少し声を和らげた。
「泉の調査報告は良い仕事だった。一人で見極め、ちゃんと記録に残した。今回もそれをやれ。何が起きているかを正確に観察して、本部に届けること。それが今のお前たちの役割だ」
「わかりました」
報告室を出ると、三人は廊下で顔を見合わせた。
「……来週、巡回だ」
リリナが静かに言った。
「ちゃんと準備しないとね」
アリアの声は落ち着いていた。でも、その瞳の奥に緊張が走っているのがわかった。
「泉の異常と魔物の群れが繋がってるなら——かなり厄介なことになるかもしれない」
「そうかもな」
セラは外を見た。今日の空は青くて、穏やかだ。でも来週この空の下で、何が起きるかわからない。
(三人で行く。それなら——心強い。でも、絶対に無事で帰ってこなきゃいけない。三人全員で)
「シルヴャン」
リリナが小声で言った。
「来週、一緒に行けてよかった。一人で行くのは——怖いから」
「怖いのは当然だ。怖くない方がおかしい」
「うん。でも、三人なら怖くても行ける。それが大事なんだと思う」
「そうだな」
## 夜の整理
夕方、セラは自室で古い地図を広げていた。
エルフの村と周辺の森の地図。泉の位置、西の集落の位置、守護隊の巡回ルート。それをトレースしながら、頭の中を整理しようとした。
(魔物の群れ。泉の異常。古代エルフの遺跡。この三点が、何かで繋がっている気がする)
ガトー教官は「可能性」と言った。でもセラには、もう少し確信に近い感覚があった。
泉で見た光の螺旋。あれは美しかった。同時に——何か大きなものを呼び寄せているような不気味さがあった。
(あれが「呼び寄せ」ているなら……魔物の群れが西に集まってきているのも、説明がつく)
地図の上を指でなぞりながら、セラは考え続けた。
そこに——
(ふと、あの声が記憶の端を掠めた気がした)
転生のあの瞬間に聞こえた声。「楽しめ」と言った声。それとは別に——もう一つの声があったような気がした。
(なんだったか。「忘れるな」——そんな言葉だったような。記憶が朧げで、はっきりしない)
額に軽く手を当てた。もやのかかった記憶を掬い上げようとしたが、すり抜けていく。
(今は考えても仕方ないか。来週の巡回で、何か見えてくるかもしれない)
地図をたたんで、セラは部屋を出た。
「シルヴャン、ごはんできてるよ」
アリアの声が廊下から聞こえた。
「今行く」
リビングには、温かいスープの香りが満ちていた。
「どうしたの? 難しい顔してたよ」
「ちょっと来週の巡回のこと考えてた」
「そっか」
アリアはスープを椀に盛りながら、静かに言った。
「心配してるんでしょ、三人のことを」
「……わかる?」
「わかるよ。セラは必ず「守りたい」という顔をする。あの顔になってたから」
(アリアには、顔で読まれてる)
「来週、ちゃんと準備して臨む。無茶はしない」
「うん、信じてる」
「アリアも、準備しておいてくれるか。魔法の体力温存と——回復魔法が必要になるかもしれない」
「うん。昨日から少し追加の練習してた。浄化魔法も、回復魔法も、ちゃんとかけられるように」
「さすがだ」
「シルヴャンにも言われると、ちょっと照れるな」
アリアが少し笑った。
「リリナちゃんからさっき連絡が来た。今夜、剣の素振りを追加でやるって」
「あいつ、来週の巡回を気にしてるんだろうな」
「そうかもね。私も同じ気持ちだから、気持ちはよくわかる」
「あいつ、元気だな」
「元気なのはいいことよ。私も少し魔法の練習しようかな、今夜」
「ほどほどにな」
「シルヴャンにも言われたくないよ」
二人が笑った。その笑い声が、リビングに広がった。
(今この瞬間、家の中で笑っている。来週のことを考えると不安で、でもここに帰る場所がある。それが——転生して、この世界に居場所ができた証拠だ)
セラはスープを一口飲んだ。
窓の外から、夜風が入ってきた。
来週の巡回のことは、考えすぎてもしょうがない。今できる準備をして、三人でちゃんと臨む。それだけだ。
前世の自分には——三人で笑い合える場所なんて、なかった気がする。記憶の端を探っても、出てくるのは一人で残業した夜の景色ばかりだ。
(この温かさが、今の俺の「楽しむ」理由だ)
窓から星が見えた。
今夜のアリアの手は温かかった。いつも通りの温かさで、それが今日という日の全部を包んでくれる気がした。
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しばらくして、セラは自室で古文書を一冊取り出した。
守護隊の資料室から借りてきたもので、森の西側に関する過去の記録が書かれているものだ。
ぱらぱらとページをめくる。古いエルフ語で書かれていて、完全には読めない。でも、挿絵のような地図が随所にある。そこには——泉の近くに遺跡らしき記号が描かれていた。
(やっぱり繋がってる)
地図の上の遺跡記号と、西の集落の位置を線で結ぶ。泉も経由する。三点が、ほぼ一直線上に並んでいた。
(何かが、この直線上を流れているんじゃないか。魔力の流れか、あるいは——古代の何かが活性化しているのか)
答えは、来週の巡回で見えてくるかもしれない。
古文書を閉じて、セラはベッドに横たわった。
天井を見上げながら、今日一日を反芻した。朝食のスープの温かさ。三人で笑い合った昼。ガトー教官の真剣な顔。リリナの「三人なら怖くても行ける」という言葉。
全部が、今日という日に起きた。
(三十三日目。まだそれしか経ってない。転生してから、この世界が少しずつ自分の世界になっていく)
転生三十三日目が終わっていく。
【第28話 了】




