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神に楽しめと言われた。楽しみすぎて、神を超えた。  作者: issoh


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第17話 闘技大会

# 第17話 闘技大会


## 大会の発表


 転生十七日目の朝。


 セラはいつものように制服に袖を通し、アリアと共に守護隊本部へ向かった。三日ぶりの通常業務。……いや、最近「通常業務」って感じの日がどれだけあったか、数えるのが怖い。


「おはよう、セラ! アリアも!」


 本部への道で、リリナが駆け寄ってくる。今日も元気いっぱいだ。


「おはよう、リリナ。今日も張り切ってるな」


「当たり前でしょ! 昨日の連携訓練、楽しかったんだもん! 今日も絶対強くなる!」


(この子のエネルギーはどこから来るんだ。朝から全力すぎて、こっちの目が覚める)


「今日の訓練、何だろうな」


「さあ。ガトー教官だと何か飛んでくる可能性が」


 アリアがクスクスと笑う。事実だから笑えない。


 三人で本部へ到着すると、すでに多くの隊員たちが集まっていた。朝の集合場所よりさらに賑やかだ。何か大事なことが起きている雰囲気。


「みんな、集まってくれたな」


 レイナード隊長が正面に立った。普段の朝礼とは違う、少し弾んだ声だ。


「今日は特別な告知がある」


「特別な?」


「うん、何だろう」


 隊員たちの間でざわめきが広がる。セラも首を伸ばす。


「守護隊創設以来の伝統——『闘技大会』を開催する!」


 ……闘技大会。


(やばい。この単語だけで、条件反射みたいにテンションが上がる。なんで上がるんだ俺)


「闘技大会?」


「そうだ。隊員同士の実力を競い合う、腕試しの場だ。近年は森の異変で休止していたが——今回、新しい隊員も加わったことだし、士気を高める意味でも開催を決めた」


 隊長の視線がセラとリリナの方を向く。


「特に新人の君たちには、自分の力を試す良い機会だと思う」


「え、僕らも出るの?」


「参加は自由だが——」


 隊長がニカっと笑う。


「優勝者には特別な褒美がある」


 褒美。


(褒美という言葉にも反応してしまう俺は、育ちの問題か。ゲームで育ったので、報酬系には弱い)


「何の褒美ですか?」


「それは優勝してから聞け」


「教えてくれないのか!」


「それが楽しみというものだろう」


 隊長が楽しそうに言う。隊員たちがドッと沸いた。


## 出場の決意


「ねえ、セラ。出てみようよ!」


 リリナが目をキラキラさせる。


「えっ、僕が?」


「だって、いい機会じゃん! 自分の力、試したいし!」


「でも、まだ訓練始まって数日だよ……」


「それを言ったらリリナちゃんは入隊三日目でしょ」


 アリアが苦笑いする。


「だよね! セラくんも出るべきだよ」


「セラくんって……いつから」


「え? さっきから」


(いつの間に「くん」呼びになってた。気づいたら呼び名が変わってた系の現象だ。まあいいか)


「アリアはどうするんだ?」


「私は審判補佐を頼まれたの。観戦と応援かな」


「そっか。……まあ、出るか。自分の力を試すって意味では、確かにいい機会だ」


「やった!」


「セラくん、頑張って!」


「でも、約束してね」


「何?」


「無理しないで、絶対に勝ってくること」


(矛盾してないか? でもアリアの言葉は、なんというか……心に刺さる)


「……うん、約束する」


「そういえばさ」


 リリナが急に思い出したように言う。


「セラくん、あの……優勝者の褒美、気にならないの?」


「気になるよ、当然」


「なのに動じてないよね、表情が」


「内心ではわりとソワソワしてる」


「ふふ、正直じゃん」


(正直に言えば、「褒美」という言葉は何か根本的なものを刺激する。「何が出るかわからない」ドキドキ感。あれだよ。大人になってもそういうところは変わらないな、俺)


「セラ、出ると決めたなら今日のうちに申請してね。締め切り夕方らしいから」


 アリアが念押しする。


「わかってる。昼休みに行く」


「昼はみんなで一緒に行こう! 私も応援申請がある」


「応援申請? そういうのもあるの?」


「公式の応援団みたいな制度があるんだって。試合中に声援を送る人の名前を登録するやつ」


(エルフの守護隊、意外とシステムが細かい。百年以上続いてる伝統行事だもんな。細部まで練り込まれてるわけだ)


「なんか……すごくちゃんとしてるな、この大会」


「伝統だからね。百年以上続いてるって聞いたよ」


 百年。エルフの時間感覚は人間のそれとはまるで違う。百年でも「最近のこと」に入る。この世界では、それが普通だ。


 午前中に参加申請を出すと、ガトー教官に「おう、新人が言うとはな。面白い」と太鼓判を押された。褒め言葉なのか試されてるのか、全くわからん。


 昼休み。三人で訓練場の休憩所に集まった。


「参加者は何人?」


「ガトー教官に聞いたら約三十人だって」


「三十人。全体の半分くらいか」


「予選はトーナメントじゃなくてリーグ戦らしい。全員が最低三回は戦う」


「へえ、そうなんだ」


 リリナが詳しく説明してくれる。東側の集落でも毎年武闘会が開かれていたらしい。経験者だ。


「予選の上位八名が、明日の決勝トーナメントに進む」


「八名か。テイオさんは確実に上に行きそうだな」


「だよね。二十年のキャリアは伊達じゃないし」


「ねえ、セラくん。誰と戦いたい?」


「えっ、具体的に?」


「やっぱ、気になる相手いるでしょ? 決勝とかで、最後に強いやつ同士で戦うっていうのがドラマチックじゃない?」


(……このリリナ、少年漫画の読みすぎだな。でも気持ちはわかる)


 セラはリリナの真剣な眼差しを見た。特Aクラスの才能。昨日の連携訓練で見せた手際の良さ。本物だ。


「……うん。戦いたいな。リリナとも」


「よかった! じゃあ決勝で会おう!」


「待って、まず予選を突破しないと」


「突破するでしょ! 当たり前じゃん!」


(自信満々だな。でも……俺も、負ける気はしない。不思議と)


「セラくん、全力出してね。リリナちゃんも強いから、油断しないで」


 アリアが真剣に言う。


「分かってる。リリナ、強いもんな」


「えへへ、東側の集落では子供の頃から修行してたから。でも、セラくんには全力で来てほしい」


「もちろんだ。遠慮しない」


「よし! 決勝で勝負だ!」


(決勝戦が確定した空気になってるけど、予選はどうする。まあ行ける気はする。転生して魔力が爆発した俺が、今さら予選で負けたら格好がつかない)


## 予選突破


 転生十八日目の昼。守護隊の闘技場で、予選が始まった。


 闘技場は守護隊本部の北側、約二十メートル四方の土俵だ。周囲には観客席が設けられていて、村の人たちも見物に来ている。


「お、見に来てくれたんだ」


 セラが視線を向けると、パン屋の店主が手を振っていた。子供たちもたくさん来ている。


(地域の運動会的な雰囲気だ。祭りの空気が体に染み込んでくる。これはこれで燃える)


「第一回戦! テイオ対ルーク!」


 テイオが土俵に上がる。二十年のベテラン隊員。落ち着いた立ち姿は、実戦をくぐり抜けてきた者特有の風格がある。


「よゆーだよ、テイオ!」


「负けるなよ!」


 隊員たちから声援が上がる。


「始めーっ!」


 テイオは動かない。ルークが仕掛ける。風刃を飛ばす。テイオは紙一重で避け、土の障壁で残りを受け止める。反撃の土の槍。ルークが跳んでかわすが——テイオはすでに追撃を用意していた。


「そこまでっ!」


 テイオの勝ちだ。


「テイオさん、強い!」


「二十年、伊達じゃないな」


「第二回戦! リリナ対ハイン!」


「いってきまーす!」


 リリナが軽やかに土俵に上がる。火魔法が得意な中堅隊員、ハイン。


(リリナ、頑張れよ)


「始めーっ!」


 ハインが先手。火球を放つ。リリナは動かない。


「あっ、大丈夫?」


 セラが思わず声をかけると——


「大丈夫だよ。見てて」


 リリナはにっこり笑ったまま、火球の寸前で回避した。紙一重どころか、紙三枚分くらいの薄さだ。


「なっ!」


 ハインが驚いた隙にリリナが反撃。風刃がハインの足元をかすめ、バランスを崩したハインが土俵の外へ。


「ハイン、アウト! リリナの勝ち!」


「やったー!」


 リリナがガッツポーズした。観客から拍手が沸く。


「すごいな、リリナ」


「だよね! 東側の集落の修行がいきてる!」


(さらっとやってたけど、あの回避精度は普通じゃない。ギリギリを意図的に狙ってる。見せ方まで計算してたのか? やばい)


「第五回戦! セラ対ミラード!」


 セラの番が来た。


「いってきます」


「頑張ってね!」


「負けないでよ!」


 アリアとリリナの声援を背に、セラは土俵に上がった。水魔法使いのミラード。落ち着いた立ち居振る舞いが、実力者の証だ。


「始めーっ!」


 ミラードが先手。水流を放つ。セラは動かない。


(まずは相手の出方を見る。水流は牽制だ。直接攻撃じゃない。……どこが狙いどころだ)


 ミラードの魔力が水流に乗って走る感覚。セラは魔力の流れを感知する。


(風で制圧が良さそうだ)


 掌に風の魔力が集まる。詠唱が唇から出た。


「風よ、刃となれ——ウィンド・エッジ!」


 風刃を放つ。ミラードが驚いて水流で防御しようとするが、風刃は水を切り裂いて進む。急いで回避——しかしセラはすでに第二弾を準備していた。


「ふたつ目!」


 二発目の風刃がミラードの足元をかすめる。バランスを崩したミラードが土俵の外へ。


「ミラード、アウト! セラの勝ち!」


「やった!」


 セラが小さくガッツポーズする。観客から拍手が上がる。


「すごかった、セラくん!」


「いやあ、緊張した……」


「でも勝てたね!」


「まだ予選だしね」


(手のひらに残る風の感覚。詠唱したら制御が段違いだ。使えば使うほど、魔力の精度が上がっている。これが積み重ねというやつか)


 予選は続く。リリナも順調に勝ち進んだ。テイオも負けなし。セラは残り二試合も勝利した。


 夕方、予選終了。


「上位八名が決定した! 決勝トーナメントに出場するのは以下の者だ! 一位テイオ! 二位リリナ! 三位セラ!」


(三位。リリナより下か。……いや、いい。決勝で勝てばそれでいい)


「おめでとう、セラくん!」


「おめでとう、リリナちゃん!」


「ありがとう、アリア!」


「えへへ、三位だよ!」


 三人で喜びを分かち合う。


「明日が本番だね」


「うん。テイオさんが一番の壁かも」


「でも负けないよ!」


 リリナが握り拳をする。


 帰路。三人は並んで歩いた。夕日が森を黄金色に染める。


「明日の決勝、楽しみだね」


「うん! セラくん、頑張って!」


「リリナちゃんもね!」


「ふふん、もちろん!」


 アリアが真ん中で二人の手を繋いだ。


「二人とも、负けてたらんないよ」


「……約束したもんね」


「絶対、勝つ!」


(アリアの手が温かい。この手の感触が、なぜかひどく心を落ち着かせる。大事な戦いの前に「頑張れ」と言ってくれる人がいる——それだけで、体の芯から力が湧く気がした)


## 決勝戦


 翌日、転生十九日目の夕方。


 準決勝が終わり、決勝戦の時間になった。


「決勝戦! セラ対リリナ!」


 ガトー教官の声が響き渡る。


「これが最後だね」


「うん。ここまで勝ち進んだ二人」


「楽しんで、戦おう」


「えへへ、もちろん! でも、负けないよ!」


 リリナが真剣な眼差しで見る。その瞳には闘志が宿っている。


「見てて、二人とも!」


 アリアが審判補佐として土俵の脇に立つ。


「始めーっ!」


 試合開始。


 リリナが先手を取る。風刃を三連射で放つ。


「うおっ!」


 セラは回避行動を取る。土俵の端へ移動し、間合いを取る。


(速い……! 精度が高い。コースも完璧だ)


(でも、読める)


 リリナの魔力が風に乗って走る感覚。セラは魔力の流れを感知する。


(風対風。なら制御で勝負)


 セラが反撃に転じる。風刃を放つが——リリナはすでに次の位置に移動していた。


「なっ、動ける!」


 リリナが笑う。その笑顔には、戦いの楽しさが滲んでいる。


(リリナ、楽しんでる。……俺も、楽しんでる。風を読み、魔力を制御し、相手の意図を先読みする——知的格闘だ。これは本物だ)


 リリナの風刃が少しずつ精度を増してくる。セラの回避範囲を狭めていく。


(ここからが本番だ)


 セラが深呼吸をする。アリアが見守っている。その事実が、彼を安心させる。


(風を感じる。リリナの風、俺の風。どちらが強いか——試してやる)


 セラが魔力を全開にする。掌に風の刃が集まる。リリナも同様に魔力を高めた。


「そこっ!」


「もらった!」


 二人が同時に風刃を放つ。二つの風刃が空中で衝突する。


 ドン、と音がした。衝突点で魔力が打ち消し合い、微細な風の波紋が広がる。


「すごい……」


「だよね!」


 土俵外から観客の声が聞こえる。


(リリナ、同等以上の魔力量だ。なら制御と経験で勝負)


 セラが動く。風を纏った加速移動。リリナも同様の動きで追ってくる。


(速い!)


 二人は土俵の中を疾走する。風の魔法で加速し、回避し、反撃する。


(落ち着いて。感じろ)


 リリナの次の動きが、魔力の流れから読める。


(そこだ!)


 セラが突然急停止する。リリナが一瞬、間違える。その瞬間を見逃さない。


「今っ!」


「風よ、刃となれ——ウィンド・エッジ!」


 反撃の風刃がリリナの衣の裾をかすめる。


「あっ!」


 リリナが土俵の端に出る。あと少しでアウトだ。


(いけ!)


 追撃の風刃を用意するが——リリナはすでに反撃の構えを取っていた。


(読まれた!)


 リリナの風刃が、セラの進路を塞ぐ。緊急回避。セラも土俵の端に出る。


「互角、か……」


 セラは息を整える。リリナも同様だ。


「セラくん、すごい!」


「リリナちゃん、頑張って!」


 観客からの声援が響く。


(もう一度。今持ってる全部を出す)


 セラが魔力を高める。掌に光を宿す。風と光、二つの魔力を重ねる。


(風刃光弾……!)


 風の刃に光を纏わせる。アリアとの練習で編み出した、オリジナル魔法だ。


「そこっ!」


「光よ、刃となれ——風刃光弾!!」


 光の風刃が放たれる。リリナの目が見開かれる。


「なっ、光!?」


 慌てて防御魔法を展開するが、光の風刃は防御を貫く勢いで迫る。


「うわっ!」


 リリナが土俵の外に出た。


「リリナ、アウト! セラの勝ち!」


 ガトー教官の宣言が響く。


「やった……」


 セラが土俵に膝をつく。全身の力が抜ける。全力を出し切った感覚がある。


## 認め合う二人


「すごかった、セラくん!」


 アリアが駆け寄ってくる。


「いやあ、やばかった。リリナ、強かった」


「えへへ……でも、负けたー」


 リリナが土俵から上がり、セラの前に立つ。少し悔しそうだ。でも——


「……でも、楽しかった!」


「うん、俺も楽しかった!」


 セラが手を差し出す。リリナがその手を握る。


「また、戦おう」


「うん! 次は私が勝つからね!」


「あはは、頼むよ。その方が俺も燃える」


(いいライバルができた。職場に仕事のできる同期がいると本気で頑張れる——あの感覚が今、魔法の世界で起きてる。最高じゃないか)


 二人の笑顔が夕日に輝く。観客から盛大な拍手が湧いた。


「優勝者、セラ! 見事な勝利だった! 褒美を用意してあるぞ」


 レイナード隊長が土俵に上がる。


「副賞、リリナ! 堂々たる準優勝だ!」


「三人とも、おめでとう!」


「ありがとう、アリア!」


「えへへ、次は一位になるからね!」


 褒美は守護隊内の秘密の書庫への特別入室権だった。本来は隊長以上にしか開かれない、古い文書や魔法書が収蔵された場所だ。


「本当に、これを?」


「ああ。優勝者への特典だ。好きな本を一日借りられる」


「すごい……」


(最初は拍子抜けしたが、改めて考えると最高の褒美だ。金より知識の方が価値が高い世界だ、ここは。前世でいうと「会社の機密ファイルへのアクセス権」——いや、それより遙かに価値がある)


 書庫の扉を開くと、古い紙と羊皮紙の匂いが広がった。天井まで届く棚に、所狭しと本が並んでいる。


「うわ、すごい量だ……」


「見て、これ! 百五十年前の守護隊の記録!」


 リリナが目を輝かせて隣の棚を覗いていた。……なぜリリナもいるのかは謎だが、準優勝者へのおまけ特典らしい。


「準優勝者も入れるの?」


「準優勝者は時間制限付きで入れるって! すごいでしょ!」


(細かく設計されてる。エルフの伝統行事、侮れない)


「セラ、何を借りる?」


 アリアが尋ねてくる。


「そうだな……この古代魔法の系譜について書いてある本が気になる」


 セラは重厚な装丁の一冊を手に取った。ページをめくると、見慣れない魔法式が並んでいる。


(難しすぎて一日じゃ読めないが、持ち出せるだけで貴重だ。知的財産へのアクセス。この感覚は純粋に嬉しい)


 転生十九日目の夜。セラは闘技大会の優勝トロフィー——木製の、質素だが凛とした作りのもの——と借り出した古書を手に、家路につく。


「優勝、おめでとう、セラくん」


「ありがとう、アリア」


「リリナちゃんも、準優勝で凄かったね」


「えへへ、でも次は絶対勝つよ!」


 三人は手を繋いで歩く。夜の森が、静かに三人を見守る。


「明日からまた、訓練だね」


「うん。でも今日で自信がついたよ」


「セラくん、強くなったね」


「リリナちゃんも強かった。東側の集落の修行、すごいんだ」


「ふふん、感謝感謝!」


 三人が笑い合う。


(こういう「全力で戦って、お互いを認め合う」経験が、ここにある。前世でいうと決して持てなかった種類のものだ。転生した意味が、少しわかった気がした。……なろう系の転生主人公が「この世界に来てよかった」と思う瞬間って、きっとこういう感じなんだろう。俺も今、まさにそう思ってる)


「ねえ、セラ」


「うん?」


「負けて悔しかった?」


「……悔しいというより、やりがいがあった。やっと「ここが本番」って感じがした」


「セラくん、何笑ってるの?」


「あ、なんでもない。ただ……幸せだなって」


「ふふ、私も」


「私も! 三人で頑張ろうね!」


「うん、三人で!」


 夜空に星が瞬く。三人の影が長く伸びて、重なり合う。


(楽しめ——そういうことだな。この世界には楽しめる理由が揃っている。存分に楽しむとしよう)


(それにしても、美形エルフに転生して仲間も強くて。……なろう系だよ確実に。でもいい)


(第17話 完)


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