第18話 異変の拡大
# 第18話 異変の拡大
## 報告
転生十九日目の朝。
セラが守護隊本部に足を踏み入れた瞬間、空気が違った。
普段なら隊員たちが三々五々集まり、昨日の訓練の話や今日の予定について話し合っている。そういう、なんてことない朝の光景だ。だが今日は違う。誰もが深刻な表情で、小声で何かを話し合っている。
(前世でいうと……「会社の雰囲気が最悪な朝」だ。役員が怒っているか、何かまずいことが起きているか、そのどちらか。どちらにせよ嫌だ)
「セラ! 君だったか」
ガトー教官が歩み寄ってくる。いつもの厳しさとは違う、真剣な表情だ。
「緊急会議だ。隊長が全隊員の招集をかけた」
「緊急会議? 何かあったんですか」
「昨夜、北側のパトロール隊が異常を報告してきた。森の深部で、これまでにない現象が確認されたそうだ」
(北側。それは森の最深部に近いエリアだ。滅多に立ち入らない場所から、異常の報告。……ホラー映画でよく見るやつだ。「深部から何か来た」系の展開。ただしここは現実だ)
集会所に着くと、すでにアリアとリリナも到着していた。二人も心配そうな表情でセラを見る。
「セラ、大丈夫?」
「ああ。でも緊急招集なんて……何かあったの?」
「わかんない。でもすごく深刻そうな雰囲気だよね」
三人が言葉を交わしていると、集会所の扉が開いた。レイナード隊長が入ってくる。数名の幹部たちがその後ろに続く。
静寂。
重苦しい、嫌な緊張感が漂う。
「集まってもらったのは、重大な報告があるからだ」
隊長の声は低く、静かに響いた。
「昨夜、北側パトロール隊が森の深部で異常を確認した」
隊長は壇上の地図を指差す。北側のエリア。普段は立ち入り禁止区域。赤い印がつけられていた。
「ここ、森の深部で魔物の活動が活発化している。そして何より憂慮すべきは——これまでの魔物とは、明らかに異なる種類の気配を感じ取ったという点だ」
会場がざわめく。
「今のところ詳細は不明だが、これまでの魔獣とは異なる、より強力で奇妙な存在だという」
「隊長」
一人の隊員が手を挙げる。
「異変の範囲は、どこまで及んでいるのでしょうか」
「現在のところ北側の深部エリア限定と見られるが——昨夜の観測では、異変の兆候が南側へも広がりつつあるという報告もある」
南側。それは村々がある方向だ。
(これはまずい。被害が村の方向へ広がる。急がないと手遅れになる)
「つまり、魔物の数が増えているだけじゃないってことですか?」
リリナが立ち上がって尋ねる。
「その通りだ、リリナ。魔物の質的変化と活動範囲の拡大が同時に起きている。単なる自然現象では説明がつかない」
「誰かが意図的に動いている可能性は?」
セラの問いに、隊長は頷いた。
「我々の知らない勢力が、この森に干渉している——その可能性はある。どちらにせよ、放置すれば村の安全は保証できない」
会場が静まり返る。
(ここで「大丈夫だろう」と楽観する奴はいない。みんなわかってる。これが本物の脅威だって)
「そこで調査隊を編成する。深部に赴き、異変の実態を調査する。これは危険な任務だ。敵の実態も不明だし、何が起きるか予測できない」
「隊長、調査隊のメンバーは決まっているんですか?」
ガトー教官が尋ねる。
「今回は公募とする。志願者を募った上で、最適なメンバーを選抜したい」
公募。
(行くしかない)
森の守護者として。守護隊の一員として。そして——アリアとリリナを守るため。
「僕、志願します」
セラは迷わず手を挙げた。
「セラ!」
「アリアも行きます! 私たち三人で一緒に!」
アリアもすぐに手を挙げる。リリナも続く。
「私も! セラとアリアと一緒なら、きっと大丈夫!」
隊長は少し驚いたような、そして誇らしいような表情を見せた。
「君たち、昨晩の闘技大会で全力を出し切ったばかりだろう」
「でも、このまま待っているだけじゃ状況は変わりません」
セラは真っ直ぐに隊長を見返す。
「三人で連携すれば、何とかなります」
「……君のその勇気は認める。だが、選考は私の判断に委ねてほしい。今日中に発表する。それまでに体の状態を整えておくように」
## 調査隊結成
昼食が終わった後も、本部の食堂は重苦しかった。
「……ねえ」
リリナがフォークでサラダを突き刺しながら言った。
「みんな選ばれるかな……」
「リリナ、心配しすぎだよ」
セラは自分の皿のパンをちぎりながら答える。
「昨日の大会を見れば、三人の力はわかったはずだ」
「でも、他にもすごい隊員さんはたくさんいるし……」
リリナの視線が、食堂の向こう側にいるベテラン隊員たちに向く。テイオをはじめ、何年も守護隊で活躍してきた者たち。
「問題はそれだな」
低い声が近くから聞こえた。テイオだ。三人のテーブルに近づいてきていた。
「君たちは昨日全力を出したはずだ。今日の状態はどうだ? すぐにまた動けるのか?」
「うっ、それは……」
リリナが詰まる。確かに、昨日の大会は全力を出し切った。
(マラソンの翌日に全力ダッシュを求められる感じだ。いや、それより過酷か)
セラは自分の掌を見る。まだ少し痺れのような感覚が残っている。だが、アリアが隣にいる。
「僕は大丈夫です」
セラははっきりと言う。
「魔力は少し減っていますが、アリアがいれば回復も早いです。それに、三人の連携は他の誰よりも強い」
「セラ……」
アリアがセラの腕を握る。
「セラがそう言うなら、私も全力で支えます」
「二人がそうなら、私も! 負けてらんないし!」
リリナが拳を握りしめる。
テイオは三人の様子をじっと見つめ、やがて短く微笑んだ。
「いい気概だ。だが忘れるな。相手は未知の敵だ。昨日の大会とは違う」
「はい、わかっています」
その時、本部の放送が流れた。
『調査隊メンバーに選抜された隊員は、直ちに隊長室に来てください』
食堂がざわめく。セラは立ち上がった。アリアとリリナも続く。
「行こう、二人とも」
「うん!」
「もちろん!」
隊長室の前には、すでに数名が並んでいた。ガトー教官、テイオ、そして他のベテラン隊員たち。
「入るといい」
隊長に促され、三人は部屋に入った。
調査隊のメンバー名簿が、机の上に置かれていた。
「今回の調査隊は、少数精鋭で行く。深部での調査となる以上、大人数では逆に目立つ。個人の戦闘能力と、未知の事態に対応できる柔軟性が求められる」
隊長は名簿を手に取り、読み上げ始めた。
「隊長代理、ガトー」
「はっ」
「前衛、テイオ」
「了解しました」
「中衛、セラ・ウィスパーウィンド」
セラの名前が呼ばれた。
「はっ!」
(選ばれた。……喜んでいいのか複雑だが、選ばれた)
「後衛、アリア」
「はい!」
「遠距離支援、リリナ」
「やった!」
リリナが小さくガッツポーズをする。その自然な動作に、部屋の空気が少し緩んだ。
「以上、五名だ。セラ、君は中衛として状況に応じて前後の支援も担ってほしい。アリア、魔力供給と回復担当だ。リリナ、遠距離からの索敵と狙撃だ」
「はい!」
「任せてください!」
「了解です!」
隊長は全員を見渡し、真剣に語りかけた。
「君たちは最強のメンバーだ。だが、相手は未知の敵だ。状況が悪ければ、すぐに撤退する勇気も持ってくれ。命が何より重要だ」
「はっ!」
五人が声を合わせる。その声は隊長室の壁に反響し、窓の外の森へと届いていくようだった。
その夜、装備室で支給品を確認した。特製の魔力強化布の防護服。魔力伝導率の高いベストと補助グローブ。セラがグローブをはめると、掌に心地よい感覚が広がった。
「これ、魔力が扱いやすい」
「セラの制御力が上がれば、連携もさらにスムーズになるね」
アリアがセラの手を握る。グローブ越しに体温が伝わってくる。
(最新鋭の装備を渡されて「明日これで戦え」と言われる感覚だ。気合が入るし、怖い。両方ある)
## 出発
翌朝、夜明けと共に調査隊は出発した。
北の門の前、五人が集合する。息が白く見える朝の冷気の中、レイナード隊長が見送りに来ていた。
「無理するなよ。状況が変わったらすぐに報告しろ」
「はい、隊長」
ガトー教官が頷く。テイオの合図で、調査隊は北門をくぐった。
森の深部へと続く道。これまでで最も深い場所だ。
「警戒態勢で行くぞ」
先頭はテイオ。後ろにセラ、アリア、リリナの順。
森の様子は、これまで見てきた景色とは明らかに違っていた。
木々の色が褪せている。緑色がくすんでいる。まるで生命力が抜けかけているかのような風情だ。風が運んでくる空気は冷たく、鉄の匂い——血の匂いのような、微かな不快な感覚が混じっている。
「雰囲気、おかしくないか?」
リリナが小声で呟く。彼女の弓には、既に矢がつがえられている。
「ああ。魔力の流れも乱れてる」
セラも感じていた。森全体から、何か異常な波動が発せられているような感覚。
(目には見えないが、確実に何かおかしい。空気の質が変わってる。植物が訴えている感じ)
「セラ、大丈夫?」
アリアがセラの腕をしっかりと握る。
「うん、大丈夫。アリアがいてくれるから平気」
「何かあったら、すぐに言ってね」
「二人とも、余計な話はするなよ。警戒を怠るな」
ガトー教官が低い声で注意する。
道中、五人は会話を最小限にし、周囲の警戒に集中した。木々のざわめき、風の音、鳥の鳴き声——すべての音が普段とは違って聞こえる。
一時間ほど進んだところで、リリナが止まった。
「待ってください。何かの気配が……」
「どっち?」
テイオが低く尋ねる。
「右前方、百メートル先。複数の気配です。三匹……いや、四匹かな。動きが素早い。魔獣です」
「先頭の私が受け止める。セラ、中距離からの援護だ。アリア、リリナは後方で索敵と支援」
「はっ!」
「了解です!」
その時、茂みから四つの影が飛び出してきた。
魔獣だ。だが——
(これまで見てきた魔獣とは違う。体が大きい。皮膚が硬質化してる。目から赤い光が……嫌な光だ)
「強化された魔獣だ! 警戒しろ!」
一匹がテイオに向かって飛びかかる。
「ふんっ! 寄越せ!」
テイオは盾で受け止める。重い衝撃音。だがテイオはびくともしない。
「セラ、今だ!」
「はっ! ライト・アロー!」
セラが光弾を放つ。テイオがガードした隙を見て、魔獣の側面を直撃。
「ガアアッ!」
魔獣が後退する。
「他の三匹、左右から包囲しようとしています!」
リリナの警告。狡猾な動きだ。一体を囮に、背後から奇襲しようとしている。
「チッ、連携攻撃か。アリア、セラ、左を! リリナ、右を!」
「右なら任せてください! 風刃!」
リリナが詠唱なしで風刃を放つ。右側の魔獣の一匹が足を負傷する。
「アリア、連携するよ!」
「セラ、魔力供給します!」
アリアの手がセラの背中に当たる瞬間、魔力が湧き上がる感覚。
「ありがとう! いくぞ——ウィンド・エッジ!」
風刃が左側の魔獣に向かって突進する。
「ガアッ!」
一匹が風刃をくらって倒れる。残りは二匹。
「残り二匹! やれる!」
テイオが前へ踏み出し、ガトー教官が盾で魔獣を殴り飛ばす。最後の一匹が逃走を試みる。
「逃がすか! リリナ!」
「はい! 光弾!」
リリナの光弾が背中を直撃。魔獣はそのまま倒れた。
「……全頭、撃破確認」
テイオが静かに告げる。
全員無事。ただし、全員が緊張で顔を硬くしている。
(やった。でも……これは始まりに過ぎない気がする)
## 未知の魔物
小休憩の後、五人はさらに深部へと向かった。
道中、異変の兆候はますます明らかになっていた。木々の色はさらに褪せ、地面からは異様な熱が感じられる。空気中には鉄錆のような匂いが漂い、風が完全に止まっていた。
(静かすぎる。嵐の前の静けさだ。何かが来る前触れ。嫌だ。嫌な予感しかしない)
「ここから先、特に警戒が必要だ」
テイオが低い声で告げる。
「魔力の乱れが激しくなっている」
セラも感じていた。森全体から、何かが発せられているような感覚。そしてそれは——決して良いものではない。
その時だった。
突然、森が揺れた。地面が大きく振動し、木々がざわめく。
「何かが来ます! 距離、三百! 規模、大型!」
リリナが叫ぶ。彼女の顔色が変わっている。恐怖と集中が入り混じった表情だ。
「大型!? なにこれ、気配がすごい……!」
セラも感じていた。今までの何倍も大きな存在が、近づいてくる。
「全員、防御態勢!」
テイオの叫びと同時に、森の木々がなぎ倒された。
そこに現れたのは、これまでの魔獣とは比べ物にならないほど巨大な怪物だった。
体長十メートルを超える。四本の腕、二つの頭、全身が黒い殻に覆われている。その姿は——
「な、なにこれ……!」
(嘘だろ。見た目が完全にラスボスだ。ゲームで「こんなの序盤に出てくるか!?」って言うやつだ。でも、ここは序盤だぞ)
「未知の魔物だ! 警戒しろ!」
怪物の二つの頭が同時に目を開き、赤い光を放つ。
「ターゲットされた! 散れ!」
怪物の口から黒い光線が放たれる。
「うわっ!」
セラがアリアを庇うようにして倒れる。光線は二人のすぐ横を通り過ぎ、背後の木々を粉々に砕いた。
「すごい威力……!」
(一発食らったら死ぬ。断言できる。これ、死ぬやつだ。どんな状況だろうと、直撃したら終わりだ)
「大丈夫? アリア、リリナ!」
「はい、無事です!」
「私も! でも、これどうやって倒すの!?」
「連携だ! 三人の力を合わせれば、きっと何とかなる!」
(自信満々に言ったが、根拠はない。でも、三人でなら——なんとかなる気がする。根拠はないけど確信はある。なんだそれ)
セラは掌に魔力を集中させる。アリアが背中から供給してくれる。
風刃光弾を放つ。全力で。
だが——怪物の黒い殻は弾き返した。
「効かない!?」
「硬い殻で守られている。弱点を探す必要がある!」
「あの怪物、二つの頭があるけど……」
アリアが怪物を見つめながら言う。
「何か連携してる気がする。右の頭が攻撃してる間、左の頭が警戒してる。逆もそう」
「じゃあ、両方の頭を同時に攻撃したら!?」
リリナの提案に、セラはひらめいた。
「そうだ! 同時に攻撃すれば、どちらも防御できない!」
「作戦、了解!」
「私もやる! セラと一緒なら、絶対できる!」
「リリナ、左の頭を遠距離から牽制して。アリア、右の頭に光弾を連射して。その隙に俺が中心の殻を風刃光弾で割る」
「了解!」
「はい、任せて!」
「リリナ、いけ!」
「はっ! 風刃!」
リリナの風刃が怪物の左の頭を狙う。怪物は左の頭で受け止めようとする。
「今だ、アリア!」
「ルーメ・ルーメ・フラーレ! ルーメ・ルーメ・フラーレ! ルーメ・ルーメ・フラーレ!」
アリアが連続で光弾を放つ。右の頭が光弾に気を取られる。
そして、怪物の両方の頭が注意を逸らした瞬間。
「風刃光弾!」
全魔力を込めて放つ。風の刃と光の融合弾が、怪物の胸元の殻に直撃。
ガンッ!という音と共に、殻にひびが入る。
「いけた! もう一発!」
追加で風刃光弾を放つ。ひびが入った部分をさらに深く切り裂く。
「ガアアアッ!」
怪物が初めて痛みの叫び声を上げる。
「効果があった! そこが弱点だ! やれ!」
テイオも再び立ち上がり、怪物の足を払う。体勢を崩す怪物。
「今のうちに!」
アリアが追加で光弾を連射。リリナも風刃を放ち続ける。
「セラ! とどめ!」
アリアの叫びと共に、セラは最後の風刃光弾を放つ。残りの魔力すべてを込めて。
ドォォンッ!
怪物の胸元が吹き飛び、巨大な体が崩れ落ちた。
## 激戦と撤退
「……やったか?」
リリナが息を切らして言う。
「やった……!」
アリアがセラの肩を抱く。
でも、セラの体内では、魔力が底をついていた。残り魔力ほぼゼロ。セラはその場に膝をつく。
「セラ!?」
「大丈夫……ちょっと、魔力が……」
視界が暗くなりかける。手足が鉛のように重い感覚。
「急いで回復させる! アリア、魔力供給!」
ガトー教官の指示で、アリアがセラを抱きしめる。温かい魔力がセラの体内に流れ込む。
「ふぅ……ありがとう、アリア」
意識が少し戻る。だが、まだ完全ではない。
「これ以上戦うのは無理だ。撤退する」
ガトー教官が冷静に判断する。
「怪物は倒した。だが、奥にはまだいる。これ以上は危険だ」
「そうだね。僕の魔力もないし、リリナも消耗してる。一度戻りましょう」
テイオも頷く。
「俺も足への衝撃で少し怪我してる。撤退が賢明だ」
(正しい判断だ。生き残ることが最優先。それだけは間違いない)
「セラ、歩ける?」
「うん、大丈夫。アリア、大丈夫?」
「なんとか。魔力、少し残ってるから」
「リリナは?」
「うん、歩けますよ。ちょっと疲れたけど」
リリナは強気に答えるが、その声には力がなかった。
帰り道。五人は警戒を怠らなかった。テイオが先頭、ガトー教官が最後尾を守る。傷ついた仲間を守りながら、安全に帰還する隊形だ。
「怪物のあの殻、すごかったね……」
リリナが振り返りながら言う。
「ああ。普通の魔法じゃ傷一つつかない。あれが深部の異変と関係してるなら、さらに強いのがいる」
テイオの言葉に、セラは胸の奥に緊張を覚えた。あの怪物一体でこれほど苦戦するなら、複数現れたら——
(考えない。今は帰ること。情報を持って帰ること。それだけだ)
「でも、倒せたじゃないですか。私たちで」
アリアが前向きな言葉を紡ぐ。
「そうだね。三人の連携が、最大限に発揮された」
夕暮れ時、守護隊本部に戻った五人は、隊長に報告を行った。
「強化された魔獣、そして未知の大型怪物。事態は予想以上に深刻だな」
レイナード隊長の眉間には、深い皺が刻まれている。
「君たちの調査で、異変の実態が少しはわかった。だが、これで終わりではない。今後、さらに調査と対策が必要になる」
「セラ、君の魔力は回復するまで休め。アリア、君も魔力管理に気をつけること。リリナ、今日はよく頑張った」
「はい、隊長」
三人は頷いた。
夜、セラの家。ベッドに横になると、アリアが隣に座った。
「今日、大変だったね」
アリアの手がセラの髪を撫でる。その手は、まだ少し震えているようにも感じられた。
「うん。でも、みんな無事に帰れてよかった」
「アリア、今日はありがとう。魔力供給のおかげで何とかなった」
「ふふ、当然だよ。セラのパートナーだからね」
アリアは微笑むが、その瞳には少しの不安が見える。
「あの怪物……また現れる。次はどうする?」
「三人なら絶対大丈夫。アリアとリリナと一緒なら、どんな敵だって倒せる」
(根拠はないが確信はある。根拠のない確信って、転生前の俺には全然なかったやつだ。でも今は——ある)
「そうだね。私たち最强チームだから」
「ああ。そして、これからもっと強くなる」
セラはアリアの手をしっかりと握りしめた。窓の外、夜空には星が輝いているが、森の深部の方角には不穏な気配が漂っていた。
異変は続いている。だが——
(仲間と一緒なら、必ず乗り越えられる)
(第18話 了)




