第125話 魔族の集落潜入
# 第125話 魔族の集落潜入
潜入計画
洞窟の中で、焚き火の焰が揺れている。
カズヤは地図の上に身を乗り出していた。昨夜ルナから手に入れた魔族の領域の地図。うっすらと血の匂いがしそうな紙に、集落の位置が記されている。
「……やっぱり、情報が足りない」
(ルナについて分かったことは何だ。強い、金髪、黒い炎、魔王の娘。以上。それだけだ)
「カズヤくん? 何か気になることあるの?」
アリアが心配そうに顔を覗き込んできた。
「ルナのことだよ。昨日の戦闘の最後、あえて引き上げた。なのに……なんで?」
「手薄だって言ってたじゃない。魔族の軍勢が」
ミサトが腕を組んで口を挟む。視線は地図上の、魔族の集落と記された場所に向けられている。
「そうなんだけど。だからこそ疑問なんだよ。彼女が一人で来た理由。私たちを助けた——いや、遺跡探索を許可した理由」
「カズヤくんの言う通りね。あれだけの魔力を持ってるのに、最後はわざと負けたみたいだったし」
「聖剣閃を受けた黒い炎の揺らぎ方、普通じゃなかったわ」
ミサトが自分の剣を撫でながら呟く。
カズヤは昨夜の戦闘を思い出していた。銀髪の魔姫・ルナ。黒い炎を操り、圧倒的な力で三人を追い詰めた。でも、最後の最後で何かが変わった。彼女の瞳に宿った敵意が、一瞬だけ揺らいだのだ。
(あの瞬間の感覚は、今も胸に残っている。魔力が純粋に「戦いたい」という意志から出るものなら、あんな風に揺れないはずだ。……ルナの黒い炎には、何かが混じっていた)
「……変装魔法、だよね」
アリアの静かな言葉に、カズヤは驚いて顔を上げた。
「え、どうして分かった?」
「カズヤくんの目、もう決まってるもん。それに、学園の試験でも初見で上級魔法を成功させたでしょ?」
「カズヤくんなら、できると思う」
(お見通しか。アリアのこういう察しの良さ、こちらとしては助かるのと恥ずかしいのが同時に来る)
「……あーもう、二人で勝手なこと決めないでよ!」
ミサトが頬を膨らませた。でも、その目には「まあついていくけど」という色が混じっていた。
「だって、カズヤくんの顔、もう『行くぞ』って顔なんだもん」
「……まあ、そうかも。でも、危険な作戦なんだ。本気で話してるよ」
カズヤは真剣な眼差しで二人を見た。
「魔族の集落に潜入する。失敗したら——命がない」
「分かってるわよ。近衛騎士ミサト・ヴァレンタインですから。リスク管理くらいできる」
(「近衛騎士ミサト・ヴァレンタイン」のフルネームが出る時は本気モードだ。普段は「ミサト」か「私」で済ます。このフルネームは一種の戦闘態勢宣言だ)
「私も、カズヤくんと一緒ならどこへだって行く!」
「ありがとう。じゃあ、作戦はこうだ」
カズヤは地図を指で叩いた。
「変装魔法を使って、私たちを魔族に見せる。集落に潜入してルナの情報を集める。絶対に戦闘はしない。見つかったら即撤退」
「了解!」
「分かった、カズヤくん」
(すっきり二人が頷いた。このあっさりした意思決定の速さは、いつまで経っても慣れない。嫌いじゃないけど)
「危険があったら絶対に言えよ、二人とも。俺が行くって言ったからって、無理をしなくていい」
「カズヤくんが言うことかしら」
「え」
「自分が一番無理するじゃないですか、いつも。私たちを庇って前に出て」
(……痛いとこつく。ミサトのこういうとこ、ツンデレかと思ってたら時々ものすごく的確に刺してくる。そしてそれが、まったく嫌じゃない)
「肝に銘じる」
「ちゃんと銘じてね。言うだけじゃなくて」
「はーい」
「返事が軽い!」
「変装魔法の詠唱は?」
「幻術と身体変換の複合魔法。魔力を皮膚の表面に巡らせて、イメージを固める。名称は——イリュージョン・ディスガイズ」
「なるほどね。理論、本当に詳しいのね」
「学園で必死に勉強したから。魔法ってただ詠唱すれば終わりじゃないんだよ。構造を理解してないと応用が利かない」
(魔法理論の勉強は本当に面白かった。目的が明確だと、どんな勉強も真剣になれるものだ)
三人は焚き火を囲み、翌朝の作戦を話し合った。洞窟の外からは、風の音と、遠くの魔獣の鳴き声だけが聞こえていた。
変装魔法
翌昼。洞窟の外に出ると、真昼の太陽が眩しかった。
「準備はいいか?」
「はい!」
「うん、いいわよ」
(よし。落ち着け俺。変装魔法は理論上は可能だ。ただ「理論上は」というのが一番怖い言葉で、実際やってみたらどうなるかは別の話だ)
カズヤは目を閉じ、魔力を練り上げた。
幻術と身体変換の複合魔法。魔力の制御が狂えば変装は崩れる。それだけじゃない、アリアとミサトにまで効果を及ぼすとなると、三人分の魔力経路を同時管理することになる。
(三つの案件を同時進行でこなす感覚だ。……これ、難しいぞ)
(三人を同時に変装させるなど、聞いたこともない。今の俺には——たぶんできる。たぶん、な)
「カズヤくん、絶対できるよ!」
「そうよ。セラ・ウィスパーウィンドなんだから、自信を持ちなさい」
二人の声が背中を押した。
(……まあ、やるしかない。失敗したら三人で変な見た目の何かになって集落に向かうことになる。それはそれで面白そうだが、今は面白さを求める場面じゃない)
魔力を皮膚の表面に巡らせる。イメージするのは——魔族の姿。尖った耳。赤い瞳。少し色の違う肌。
「幻よ、別の姿を纏え——」
呼吸を一つ。魔力を外へ。
「——イリュージョン・ディスガイズ!」
魔力が光を放ち、三人の体を包み込んだ。
「うわっ! 体が熱い!」
ミサトが驚いた声を上げる。
「私も……魔力が体の中を巡ってる。温かい感じ……」
アリアも自分の手を見ている。
光が収まると、カズヤは近くの水場に走った。水面に映るのは——見知らぬ三人の姿だった。
尖った耳。赤い瞳。魔族だ。
「すごい……本当に魔族に見えるわ」
ミサトが自分の頬を触っている。
「耳が尖ってる……。カズヤくん、天才じゃない?」
アリアが目を丸くしていた。
(やった。成功した。……この自分の姿を、変装前の自分に見せてやりたい。絶対信じないな)
「完璧だよ。みんな普通の魔族に見える」
「ちょっと見て、私の耳!」
アリアが自分の耳を触っている。エルフの特徴的に尖った耳が、魔族風の別の形に変化していた。
「丸くなってる! 丸い耳って初めてだよ!」
「アリアはエルフだから、耳が尖ってたもんな。逆に丸くなると変な感じがする?」
「うーん、なんか……普通? これが人間の人たちの耳の感覚か」
「ミサトは普段からそんな耳だろ」
「そうね。でも今の私の目は赤いわよ。鏡で見たらちょっとびっくりした。悪役っぽい」
「魔族にとっては普通の目だ。悪役っぽいは失礼だろ」
「そうね。……ごめん、魔族のみなさん」
(ミサトが謝ってる相手は誰なんだ。でもまあ、気持ちは分かる。他の種族の姿を一時的に借りるというのは、妙な気持ちになる)
「ただ、変装が解けないよう注意が必要だ。戦闘になったり、魔力を大きく使ったりすると、効果が消える可能性がある」
「分かった。戦闘は絶対なしね」
「じゃあ、行こうか。魔族の集落へ」
カズヤが先頭に立った。
三人は、魔族の領域へと足を踏み入れた。
集落潜入
魔族の集落は、意外なほど普通だった。
黒い石で作られた家々が不規則に並んでいる。街道には魔族たちが行き交っている。子供たちが路地で遊んでいる。女性たちが市場で野菜を売っている。男たちが酒場に入っていく。
(……え、普通だ。めちゃくちゃ普通だ。魔族の集落というからもっと殺伐としたものを想像していたが、ここの方がよっぽど平和じゃないか)
「……予想と違うわ」
ミサトが小声で呟く。
「ただの町だな。よく見ると角が生えてたり耳の形が違ったりするが、それ以外は——人間の王国と変わらない」
「でも、気をつけて。バレたら終わりだ」
門番の魔族が二人立っていたが、三人の姿を見ても何も言わなかった。
「……通過したわね」
アリアが小さく安堵の息を漏らした。
「指先が冷えてた」
「俺もだ。さて、これからが本番だ。自然に振る舞え」
(自然に。実は「自然に振る舞え」が一番難しいことだったりする)
集落のメインストリートを歩く。石畳の道は整備されていた。通りの両側には道具屋、食材屋、服屋が並んでいる。魔族たちが視線を向けてくるが、特に怪しむ様子はない。
「あの子たち、可愛い——」
「アリア」
「あ、ごめんなさい」
アリアが慌てて口を手で覆う。
(研修中の後輩が「お客様、こちら——」って言いかけた時の感覚に似ている。止めた。セーフだ)
「でも、本当に可愛いわよね。魔族の子供って」
「声は小さく」
「分かってる。でも可愛いの」
(アリアの「でも」の使い方が一本調子じゃないのが面白い。かわいい。……ここで「かわいい」と思うのは状況を考えると緊張感がなさすぎるが、事実だから仕方ない)
子供たちは黒い石で作られた広場でボール遊びや鬼ごっこをしている。どこかの国の子供と変わらない。
「意外と、生活してるんだな。魔族も」
「殺伐としてると思ってたのに、平和だわ」
(でも、気は抜けない。この人たちは俺たちが人間だと知ったら、変化するはずだ。この平和な日常は、「人間ではない者への態度」だ。差別というのはそういうもんだ)
「ねえ、カズヤくん。あの露店」
ミサトが小声でそっと指差した。露店には、黒くてつやのある石が並んでいた。
「……魔力石だな。魔族の集落だから、魔力素材の店が多いんじゃないか」
「人間の宝石市場と変わらないわね。売ってるものが違うだけで」
「そうだな」
(それが面白いんだよな。人間と魔族の違いは外見と魔力の質で、あとは大体似たようなものだ。商売するし、子供は遊ぶし、飯を食うし。ルナも、そういう当たり前の生活の中にいる人間——いや、魔族のはずだ)
「油断しないで。素性が割れたら、迷わず攻撃してくる」
「分かってる、分かってる」
通りを進むと、大きな建物が見えてきた。集落の中心に位置する酒場だ。看板には「闇の杯」とある。
「……変な名前」
「まあ、魔族だし」
「そこで情報を集よう。酒場なら誰も顔を詳しく見ない」
ルナの情報
酒場の中は、煙と騒音で満たされていた。魔族たちがテーブルを囲み、酒を飲み、大声で話している。
(……うわ、居酒屋と同じ匂いがする。煙と酒と汗。異世界でも変わらないんだな、飲みの場の雰囲気は)
「席、空いてるかな」
「あそこ、空いてるわ」
隅の小さなテーブルに三人は座った。
「いらっしゃい。何にする?」
ウェイトレスが来た。尖った耳と赤い瞳の魔族だ。
「水と、食べ物を」
「水? 酒は?」
「……明日早いから」
(苦しい言い訳だ。酒場に来て水を頼む奴の言い訳としては五十点以下だが、他に思いつかなかった)
ウェイトレスは少し怪しむような顔をしたが、何も言わずに去っていった。
「危なかった……」
「まあ、なんとかなった。静かに周りを聞いてろ」
カズヤは周囲を見渡した。隣のテーブルに、二人の魔族が座っている。
「ねえ、姫様のこと聞いた?」
「ああ、ルナ姫のことか。また変なことしてるのか?」
「聞いたら……人間と関わりたいらしいよ」
「嘘だろ、あの姫様が?」
「本当らしい。この前も人間の冒険者と戦ってたが、倒さずに逃がしたんだって」
カズヤの耳がその言葉を捉えた。
指先が冷えていたはずなのに、今は胸の中に何かが灯った感じがする。
(……ルナの話だ)
「姫様、変わったねえ。昔は人間間違いなく殺してたのに」
「そうそう。あの姫様、孤独なんだよ。魔王様は忙しいし、他の魔族たちは姫様を恐れてる。話し相手もいなくて」
孤独。
(誰にも本当のことが言えない孤独というのがある。それがどんな感覚か、俺には分かる気がする。アリアがそばにいたのに、それでもずっと「ここは本来の自分の場所じゃない」と感じていた時期があった。あの感覚と——重なる)
「……可哀想ねえ、魔族の姫君だって」
「まあ、そんなこと言うなよ。姫様に聞かれたら殺されるぞ」
二人の魔族は笑いながら酒を飲み続けている。
カズヤはアリアとミサトを見た。二人も同じ話を聞いていたようだ。
「……カズヤくん」
「ルナさん、一人なの?」
「……どうやら、そうみたいだ」
別のテーブルからも話が聞こえてきた。
「姫様、また遺跡に行ってるらしいな」
「ああ。人間の遺跡になぜか興味を持ってる。魔法学園の図書館にも、こっそり行ってたって噂だよ」
「え、本当に? 魔族が人間の学園に?」
「本当らしい。身を隠して本を読んでたって」
(……俺たちがいた場所に、ルナも来ていたのか。俺たちが気づかないうちに同じ場所にいた——それは偶然じゃない気がする)
「彼女、私たちと同じ学園に来てたのか」
「見かけなかったけど……」
「ルナさん、人間の文化に興味があるのね」
(孤独で、人間と関わりたくて、人間の学園に通って、人間の本を読んでた——敵のはずの人間に、何かを求めてた)
ウェイトレスが水とシチューを持って戻ってきた。
「お待たせ。今日のスペシャル・シチューよ」
「ありがとう」
水を一口飲んだ。冷たい水が喉を通る。
(さて、情報は集まった。でも正直、作戦情報というより——ルナという人間の話を聞いてしまった)
「そろそろ戻るべきか」
ミサトが小声で言う。
「うん。これ以上いるとバレる危険がある」
シチューを少し食べると、席を立った。
酒場を出ると、外はもう暗くなり始めていた。
集落の通りを戻っていく。魔族たちの日常の風景が、夜を楽しんでいる。
(平和な夜だ。魔族の夜。人間の夜と、どう違うんだろう)
集落を出て、街道に入った。あたりは暗くなってきている。夜の魔界の空は、人間の世界と色が違う。深い紺ではなく、少し紫がかっている。
(この色の空を、ルナも毎日見ているのか。孤独に。……一人で見る夜空は、その色に関係なく、少しさびしい。そのさびしさは、体験した者にしか分からない)
「カズヤくん」
アリアが服を軽く引っ張る。
「ルナさん、敵じゃないかもしれないね」
「……そうかも。でも、彼女は魔王の娘だ。私たちの敵であることは事実だ」
(事実ではある。でも——「常識」をそのまま全部受け入れてばかりいると、大事なものを見落とす。そういうことが、この世界に来てから分かってきた)
「でも、カズヤくん。彼女の孤独、分かってあげられる気がする」
「……そうだな。分かる気がする」
「私もね。理解されない孤独って、本当に辛いから」
ミサトも、少し遠い目をした。
「帰ろう」
三人は洞窟へ向かう道を、黙々と歩いた。星空が広がっている。遠くで魔獣の遠吠えが聞こえる。
(美しい夜空だ。人間界では都市の光で、こんな星は見えなかったと思う。……ルナも、毎日この夜を見ているんだろうか。一人で)
洞窟が見えてきた。焚き火の明かりが入り口から漏れている。
「帰ってこれたわね」
アリアが安堵のため息をついた。
洞窟に入り、変装を解く。魔力の光が消え、元の姿に戻った。
「やっぱり、自分の姿が一番」
「でも、変装も悪くなかったわ。カズヤくん、天才だよ」
「……まあ、うまくいったから良かった。失敗してたら今頃どうなってたか」
(考えたくない。三人で変な姿のまま魔族の集落で「よっ近所の者です」みたいな顔をしてた可能性がある)
「カズヤくん、疲れた?」
アリアが心配そうに覗き込んできた。
「ちょっとな。三人分の変装を同時に維持するのは、なかなか集中力がいった」
「ありがとう。私たちの分まで魔法を使ってくれて」
「構わないよ。チームなんだから」
ミサトが腕を組みながら、焚き火に近づいた。
「今日の成果、整理しましょうか。ルナは孤独で、人間の文化に興味があって、私たちを逃がした。これだけのことが分かった」
「十分だ。動きやすくなった」
「次の作戦は?」
「遺跡の調査を続けながら、ルナが現れるのを待つ。今度会ったら——話す」
「それだけ?」
「それだけだ。まず話す。そこから先は、話してみないと分からない」
(計画ばかり立てて動かないより、まず話してみる方が早い。そういうことは、身をもって経験してきた)
カズヤは焚き火のそばに座った。炎が三人の顔を照らしている。
「……カズヤくん、ルナさんのこと、どうするつもり?」
「次に会う時、話したい。彼女の本音を」
「敵なのに、話すの?」
「敵だけど、孤独なんだ。それなら——分かり合えるはずだ」
「……まあ、カズヤくんがそう言うなら。付き合うわよ」
「ありがとう、ミサト」
「照れくさいこと言わないでよ!」
ミサトが顔を赤くして背を向けた。アリアがクスクスと笑う。
「二人、本当にいい感じね」
「それとなく言うな」
カズヤが苦笑する。
(こうして焚き火を囲んで、二人とくだらない話ができる。この温度が、今の俺には何より大事だ)
「ルナさん、今頃何してるんだろう」
アリアがぽつりと言った。
「魔界の城で、一人で夜を過ごしてるんじゃないか」
「……それ、想像したら切ないね」
「敵だけどね」
「敵だけど切ない。そういう感情ってあるんだな」
(あるんだよな。孤独を感じてる奴に「頑張れよ」と思う——それは種族関係なくある感情だ)
「次に会う時、俺は話す。ルナと」
「その時、私たちも一緒にいていい?」
「当然だろ。三人で行くんだから」
「えへへ、そうだね」
「ふん、私も行くわよ。カズヤくんが変なことしないように見張らないといけないし」
「見張りって何だ」
「ちゃんと見張るわ。真剣に」
「ミサトの真剣なツン顔好きよ」
「アリア!」
ミサトが顔を真っ赤にした。カズヤは声を立てないように笑った。
「さて、寝よう。明日はまた遺跡探索だ」
「うん、おやすみ、カズヤくん」
「おやすみなさい、カズヤくん」
「おやすみ。二人とも」
寝袋に身を横たえる。焚き火の明かりが揺れている。外の風が洞窟に吹き込んでいた。
眠りに落ちる寸前、カズヤの頭に浮かんだのは——銀髪の、孤独な魔姫の姿だった。
(敵で、孤独で、人間に会いに来て、図書館で本を読んでた。そんな奴が本当に「純粋な敵」のはずがない。次に会う時は——ちゃんと話そう。お前の言いたいことを、俺は聞く。それだけは約束する)
三人の静かな寝息が、洞窟に響き始めた。夜が更けていく。明日の朝、新しい冒険が待っていた。




