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神に楽しめと言われた。楽しみすぎて、神を超えた。  作者: issoh


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第116話 クラスの結束

# 第116話 クラスの結束


## クラスの日常


 朝の教室というのは、それぞれに表情がある。


 静まり返って全員が眠そうにしているところもあれば、なぜか朝から全員テンションが高いところもある。俺のクラスは、明らかに後者だった。


 朝のHR前だというのに、教室はすでに半分以上埋まっていた。あちこちで会話の花が咲き、笑い声が響いている。


「おはよう、セラくん!」


 クラスメイトのセアラが手を振りながら近づいてきた。その後ろにもぞろぞろと人が続く。


「おはよう、みんな」


「週末はどうだった? 冒険者稼ぎ、行ってたんだよね?」


「うん、新しいダンジョンを探索してきたよ」


 答えた瞬間、周りのクラスメイトたちの目が輝いた。この学園では、ダンジョン探索は立派な話題になる。


「どんな感じだった? 怖くなかった?」


「最初はちょっと緊張したけど、慣れれば楽しいよ。魔法の実戦練習にもなるし」


「すごいなぁ! 私も将来、冒険者やってみたい!」


「まあ、まずは魔法の基礎からだね」


 苦笑いで返すと、クラスメイトたちは笑った。こういう軽口の通じる関係が、学園で少しずつ育ってきた気がする。


 ダンジョンの話が、ここでこうして普通の話題になる。最初はそれ自体が不思議だったのだが、今ではすっかり当たり前に感じている。慣れとはおそろしいものだ。


 教室のドアが開き、アリアが入ってきた。毎朝思うが、この幼馴染は何もしなくても絵になる。金髪が朝の光を受けてキラキラしている。


「おはよう、セラくん」


「おはよう、アリア。今日も早いね」


 アリアは俺の隣の席に座りながら、クラスメイトたちにも挨拶をした。


「おはよう、みんな」


「おはようアリアさん!」


「セラくんと今日も仲良しだね」


「えっ、そ、それは……えへへ」


 アリアがほんのり赤くなる。クラスメイトたちは賑やかに笑う。当の俺も少し顔が熱い。


「まあまあ、困らせないでよ」


「でも本当だよね? 二人、いつも一緒だし」


「セラくんもアリアさんのこと、大事にしてるよね」


「みんな、授業始まるよ!」


 誰かの声に、ひとしきり笑ったクラスメイトたちが席へ散っていった。


 俺は自分の席に座りながら、教室全体をぐるりと見渡した。笑顔で話すクラスメイト、真剣に予習をしている生徒、ぼんやりと外を眺めている学生。それぞれが思い思いの時間を過ごしている。


(……いいクラスだな)


 このクラスの空気感は、特別な居心地の良さがある。最初は不安もあった。でも、今では完全に自分の場所になっている。


 先生が入ってきた。今日の授業が始まる。


「おはよう、みんな。今日も始めよう」


 クラス全員が真剣に先生を見つめる。


 ノートを取りながら、窓の外の景色をちらりと見た。青い空。緑の木々。今日もいい天気だ。


 先生が黒板に魔法の式を書き始めた。今日は風と光の複合属性について。難しい分野だが、面白い。セラは集中してノートをとった。アリアも隣で熱心に書いている。


 授業中、クラスメイトが質問をした。先生が丁寧に答える。誰かが笑う。誰かが頷く。そういう空気が、このクラスにはある。学ぶことと、楽しむことが、不思議なくらい両立している。


## クラス会の話


 昼の食堂は、いつも通りの賑やかさだった。


 様々な料理の香り、学生たちの声。セラとアリアは定位置に落ち着いて、クラスメイトたちと昼食を楽しんでいた。


「ねえ、みんな、ちょっと聞いてよ」


 クラスメイトのフィーナが、突然真面目な顔をして言った。口調が改まった瞬間、周りの視線が集まる。


「何かあった?」


「実はね、クラス会をやりたいんだけど」


「クラス会?」


「そう。みんなで集まって、もっと仲良くなるためのイベント。料理を作ったり、ゲームをしたり——」


「いいじゃん!」


 すかさず別のクラスメイトが飛びついた。アリアも目を輝かせる。


「私も、みんなともっと仲良くなりたいと思ってた!」


「クラス会、楽しそう! どんな内容にする?」


「それなんだけど、学園の中庭でバーベキューとかどうかな?」


「バーベキュー!!」


 一瞬の沈黙のあと、あちこちから声が上がった。


「いいじゃん! みんなで料理できるし!」


「私、料理得意だよ、手伝う!」


「私も! 肉焼くの任せて!」


 自然と全員が乗り気になっている。こういう場で、みんなが自発的に動くのを見ると、このクラスの良さが改めてわかる気がする。


(誰かが「やろう」と言えば全員が「やろう」と動く。それがこのクラスの当たり前だ。こういうことが、本当に当たり前になっていると気づく瞬間が、ちょっと好きだ)


 内心でそんなことを考えていると、テーブルでは急速に役割分担が決まっていった。


「じゃあ野菜は私が切る!」


「ドリンクも用意しないと!」


「準備、誰かまとめた方がよくない?」


 その発言と同時に、クラスメイトのキャルが立ち上がった。


「じゃあ私が全体まとめる! 料理班、装備班、遊び班、三つに分けよう」


「おっ、プロフェッショナルだ」


 思わず俺が言うと、笑いが起きた。


「じゃあ私、料理班!」


「私も料理班!」


「私は装備班! バーベキューセット、学園から借りられる?」


「遊び班! 面白いゲーム考えないと」


「セラくんはどの班にする?」


 アリアに聞かれた。


「うーん……装備班でいいかな。重いもの運んだり、セットアップしたり、できることはあると思うし」


「じゃあ私も装備班! セラくんと一緒なら安心だし!」


「えへへ、やっぱり二人は一緒だね」


 クラスメイトたちのからかいに、俺もアリアも少し照れた。


「で、いつやる?」


 まとめ役のキャルがカレンダーを取り出した。


「来週の週末、どう?」


「私は空いてる!」


「私も大丈夫!」


「じゃあ、来週週末に決定! 一人銀貨二枚ずつ集金して、材料と装備を用意する!」


 宣言と同時に、拍手が湧いた。


「楽しみ——!」


「うん、最高のクラス会にしよう!」


 俺は自然と笑顔になっていた。


 クラスメイトとこうして何かを計画する時間は、なんだか特別だ。みんなで目標を作って、それに向かって動く。その過程自体が、もうすでに楽しい。


 食堂のざわめきの中で、テーブルのまわりだけ別の時間が流れているみたいだった。計画が固まってから、全員がそれぞれの顔で笑っている。こういう光景が、普通にここにある。


「セラくん、何作る?」


「うーん、焼き鳥とかシンプルなものがいいかな」


「じゃあ私が前もって下処理しておくよ!」


「ありがとう、アリア。助かる」


「えへへ、任せてね」


 この子、本当に万能すぎる。なんでもできる。そして、こちらの手を先回りして動いてくれる。いつも助かっている。


「材料はどこで買う? 学園の近くの市場でいいかな」


「そこが安くて種類も多いよ。肉は鮮度が大事だから、当日の朝に買いに行こう」


「じゃあ当日の朝、集合ね!」


「わかった」


 日時と集合場所が決まった。あとはそれぞれが準備をするだけだ。しっかり決まった計画が、週末に向かって走り始めた感じがする。


## クラスイベント


 週末の中庭は、普段とは違う活気に包まれていた。


 朝から準備が進められていて、セラとアリアが到着した時にはすでに多くのクラスメイトが集まっていた。


「おはよう、セラくん! アリアさん!」


「おはよう! 準備、進んでる?」


「うん、バーベキューのセットはもう組み上がったよ。あとは材料を運ぶだけ!」


 まとめ役のキャルが胸を張って報告する。こういう仕切り力は、見ていて気持ちがいい。


「すごい、早いね」


「みんなでやれば早いし楽しいもん!」


 しばらくして全員が揃い、バーベキュー開始の号令がかかった。


「じゃあまず肉の下処理から!」


「野菜も切ろう!」


「ドリンクの準備!」


 それぞれが役割に就いて一斉に動き始めた。中庭がまるで小さな工場みたいになっている。


 俺とアリアはバーベキューセットの確認をしながら、火起こしの準備を進めた。


「火、おこしとくね」


「炭を並べて、火薬で点火するよ」


 俺は手に魔力を集め、炭に向けて火の魔法を発動させた。小さな炎が炭の隙間を縫うように広がり、じわじわと赤くなっていく。


「すごい、魔法便利だねえ」


「こういう時にエルフの魔力が役立つよ。着火ひとつでも、魔法があると楽でいい」


 アリアが下処理した串刺しの肉を俺が受け取り、網の上に並べた。じゅわり、という音と共に、香ばしい匂いが中庭に広がり始めた。


「うわぁ、いい匂い……」


「まだ焼けてないのに、もうお腹空いた……」


「もう少し待って」


 周りにクラスメイトたちが集まってくる。匂いにつられて近寄ってくる感じ、なんとも微笑ましい。


 中庭の木の葉が風に揺れ、その間から午後の陽光が差し込んでいた。香ばしい匂いと春の風が混ざり合い、なんとも言えない居心地の良さが中庭全体を満たしている。


「セラくん、タレは?」


「こっち!」


 アリアがタレの瓶を差し出してくる。俺は肉に刷毛でタレを塗った。香ばしい匂いがさらに強くなる。


「よし、これで完成!」


 最初の肉を網から取り上げた瞬間、歓声が上がった。


「やったー! いただきまーす!」


「わぁ、美味しそう!」


 全員が一斉に手を伸ばし、一口食べる。


「んん〜! 美味しい!」


「野外で食べるの、最高!」


「セラくん、焼き方うまい!」


「アリアさんの野菜も甘い!」


「えへへ、前もって蜂蜜で味付けしてあるから」


 称賛の声に、俺もアリアも笑顔になった。


「みんなが美味しいと言ってくれるなら、嬉しいよ」


 食事が終わると、次はゲームの時間だった。


「じゃあ、魔法ゲーム!」


「二人一組になって、魔力で風船を運ぶレース!」


「おもしろそう!」


 クラスメイトたちがペアを組んでスタートラインに並んだ。


「よーい、スタート!」


 合図と共に、各ペアが魔力で風船を浮かせながら走り出す。風船が揺れたり落ちたりしながら、笑い声が中庭に響く。


「あっ、落ちた!」


「助けて!」


「わあ、待って待って!」


 俺とアリアのペアも走り出した。二人の魔力が自然と共鳴して、風船が安定して浮いている。幼馴染補正というか——魔力の相性が抜群なのは確かだ。


「セラくん、足元気をつけて!」


「大丈夫、アリアの魔力があるから」


 息を合わせながら進む。ゴールが近づく。


「よっしゃ、ゴール!」


「やったー、一番!」


 拍手が来た。


「二人の魔力、完璧な連携だね!」


「幼馴染だもんね!」


(幼馴染という言葉が、この世界では強い絆の証明として通じる。言葉にするとシンプルだが、その分だけ積み重ねてきたものがある)


 一緒にゴールした瞬間、アリアが「やったあ!」と飛び跳ねた。その笑顔が眩しかった。


 ゲームはそれからも続いた。魔法的当てゲーム、魔法ビンゴ、風船割り大会。様々な催しが続く中、中庭には笑い声が絶えなかった。


 魔法ビンゴでは俺が最後まで一枚も揃わず、クラスメイト全員に笑われた。「セラくんって、こういうゲーン弱いの!?」と言われると、反論のしようがない。強くないのは事実だ。風船割り大会ではアリアが速攻で全部割って優勝し、「えへへ」とはしゃいでいた。


 俺はその様子を見ながら、心の中で温かいものが膨らんでいくのを感じた。


 みんなとこうして笑い合えること。それが、当たり前のようで、当たり前ではない。この学園に来るまでの日々を振り返ると、答えは明白だ。


## 夕焼けの交流


 夕方のテラスには、黄金色の陽光が差し込んでいた。


 クラス会も終わりに近づき、クラスメイトたちは夕焼けを眺めながらのんびりと交流していた。


「疲れた〜! でも楽しかった!」


「本当に、みんなでバーベキューして、ゲームして……最高だった」


「またやろう、こういうの」


 俺とアリアはテラスのベンチに座り、夕焼けを眺めていた。茜色の空に、鳥が一羽横切る。


 こういう時間を、こういうふうに過ごせるようになったのは、最近のことだ。学園に来て、このクラスに入って、だんだんと積み上がってきた時間がある。


 茜色の光が、テラス全体をオレンジ色に染めている。疲れた顔のクラスメイトたちが、それでも笑っている。一日一緒に動いた後の、この空気感は特別だ。


「セラくん、今日ありがとう。焼き方うまかったよ」


「えへへ、またいつでもやるよ」


「アリアさんも、野菜の味付け最高だったよ!」


「ありがとう、嬉しい」


 クラスメイトたちが感謝の言葉を次々と伝えてくれた。


「セラくんの肉の焼き方、本当に絶妙だったよ。プロみたい」


「えへへ、私の野菜のタレも好評だったよ!」


「アリアさんって料理も上手なんだね、全部できるじゃん」


「当たり前でしょ?」


「アリアさん、その自信どこから来るの(笑)」


「生まれつきです!」


(こうすっきり言えるのは才能だと思う。俺には少々難しい。「まあ、少しは……」という感じになってしまう。アリアにはそれがない)


 アリアがそう言った後、しばらく笑い声が続いた。


 あるクラスメイトが立ち上がり、全体に向かって声をかけた。


「今日のクラス会、大成功だったよね!」


「ほんとほんと!」


「でも、これで終わりじゃないよね。これからももっと仲良くしよう!」


「うん!」


 全員が頷いた。


「私、このクラスに入れてほんとに良かった。みんな、優しいし面白い」


「セラくんとアリアさんのおかげで、クラスがもっと楽しくなったよ」


 突然そう言われて、俺は目を瞬かせた。


「えっ、僕たちのおかげ?」


「そうだよ。セラくんは誰にでも優しいし、アリアさんはいつも明るいし。二人がいるから、このクラスが居心地いい」


「えへへ、そんなふうに言ってもらえると照れちゃう」


「でも本当だよ。二人が中心になって、みんなを繋げてくれた気がする」


 クラスメイトたちから感謝の言葉が続いた。


(……これは、恥ずかしい。でも、嬉しい。こういう言葉をもらえるようになったのは、このクラスのみんながいてくれるからでもある)


「こちらこそ、みんなに出会えて良かった」


「私も。このクラスのみんな、大好き!」


 アリアが素直に言うと、「うわぁ可愛い」「私もみんな大好き!」という声が上がった。


「じゃあ、ここで誓いをしようよ!」


「誓い?」


「いつまでもこのクラスの絆を大切にしようって」


「賛成!」


「みんなで手を繋ごう!」


 クラスメイトたちが円を作り、手を繋いだ。俺もアリアも輪に加わった。


「せーの!」


「このクラスの絆、永遠に!」


「友情、永遠に!」


「いつまでも仲良し!」


 夕焼けの空に、声が響き渡った。


(こういうことを照れずにやれる。それが、今の自分の変化かもしれない。輪の中で、繋いだ手が温かい)


 繋いだ手から温かさが伝わってきた。


 円が解けた後も、しばらくみんなは笑い合っていた。声が重なる。笑いが溢れる。夕焼けが消えていくにつれ、テラスの空気がゆっくりと穏やかなものに変わっていった。


 「またやろうね」「次は何する?」という声があちこちから出ていた。計画の話はもうすでに始まっている。このクラスは終わりを惜しむより、次を楽しみにするのが得意だ。


## 一日の終わり


 夜の寮の部屋は、静寂に包まれていた。


 月明かりが窓から差し込んでいる。俺はベッドに座り、アリアも自分のベッドで落ち着いていた。


「……今日、楽しかったね」


「本当に。みんなと一緒に過ごせる時間、改めて大事だって思った」


「バーベキュー美味しかったし、ゲームも面白かったし」


「うん。セラくんの肉の焼き方、プロみたいだったよ」


「そんなこともないけど」


「私も野菜の味付け、もっと研究しようっと」


「十分美味しかったよ」


「えへへ、ありがとう」


 二人は微笑み合った。


「ねえ、セラくん」


「ん?」


「このクラス、本当にいいよね」


「うん。みんな優しいし、面白いし」


「最初はどうかな、と思ったけど。今ではみんなが大好き」


「……僕も」


 アリアの言葉に、俺も頷いた。


 この魔法学園での日常が、積み重なってきた。不安が薄れて、代わりに信頼できる人たちとの時間が積み上がっている。


(このクラスに来られて、本当に良かった。今ここにいる全員に、そう言いたい気分だ)


「明日からまた通常の学園生活だね」


「授業も宿題もクラブ活動も」


「でも、また週末が来る。次の週末も、みんなで何かしよう」


「いいね!」


 二人は再び笑い合った。


 本を取り出して読み始めるアリア。俺は明日の授業の予習を開いた。ページをめくる音、ペンが紙を走る音。それが夜の部屋に静かに響いていた。


「……おやすみなさい、セラくん」


「おやすみなさい、アリア」


 互いに良い夜を願い合い、それぞれの眠りについた。


 俺が眠りに落ちる直前に思ったのは——感謝だった。


 このクラスに出会えたこと。アリアやクラスメイトたちと笑い合えたこと。


(良かった、本当に)


 そんな言葉を心の中で呟きながら、セラは深い眠りへと落ちていった。


 窓の外では、星が美しく瞬いていた。月明かりが二人の寝顔を優しく照らしている。クラスのみんなの笑顔、中庭に響いた笑い声、繋いだ手の温もり——それらすべてが夢の中でもくっきりと輝いていた。


 今の俺の財産は、目に見えないが確かなものだ。


 それで十分だった。十分すぎるくらいに、十二分に。


(本当に良かった。このクラスに来られて、本当によかった)


# 第116話 完


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