第7話 劇場の大広間にて大演説
劇場の大広間。
重い緞帳の前に、関係者全員が集められている。
ざわめきが天井へと吸い込まれていく。
・オリバー・グラント(若手俳優)
・ヴィクトリア・ヘイル(主演女優)
・ドミニク・ショウ(マネージャー)
・チャールズ・ウィットモア(監督)
・ アレク・サンドルス(大道具)
前列にはガルム警部補。
その隣にミレイア。
中央へ、アレクシスが進み出る。
静寂。
「レオナルド・アシュクロフトの死は、自殺ではありません」
空気が凍る。
「レオナルドは屋上から自ら身を投げた。しかしその転落への一歩は、
意図的に誘導されたものでした」
視線が一人の男へ向く。
アレクシスは封蝋の欠片を掲げる。
「事件前夜、レオナルドの元へ“支配人名義”の手紙が届いた」
ざわめき。
「屋上で話がある、と」
「しかし支配人は書いていない。封蝋は本物だが、便箋は別の紙質」
ガルム警部補がうなずく。
「手紙は焼却されたが、灰から封蝋が回収された。
支配人の印章は事務所から一時的に持ち出されていた」
アクレクシスが事件経緯の話をはじめる。
「犯人は、自由に出入りできる立場があった」
「事件の発端はヴィクトリア・ヘイルへの強姦」
息を呑む音。
ヴィクトリアが目を伏せる。
「妊娠。認知拒否。堕胎の強要」
アレクシスの声は冷たい。
「犯人は彼女を守ろうとした」
拳が震える。
布が外される。
押収された巨大看板。
「屋上に設置されたこの看板は二重構造でした。」
https://kakuyomu.jp/users/mushimatsu/news/822139846367521722
アレクシスは指で裂け目を示す。
「ここの裂け目から、レオナルドの毛髪が検出された」
ざわめきが広がる。
「レオナルドはここを突き破った。本物の隣のビルの景色だと信じて」
ミレイアが息を呑む。
「遠近法は計算されていた。隣のビルに渡れるように見える構図」
視線がアレク・サンドルスへ向く。
「この看板の制作・設置を行ったのはあなただ」
アレクが崩れ落ちる。
「頼まれたんだ……」
「誰に」
沈黙。
目を閉じる。
ガルム警部補が証拠袋を掲げる。
「盗まれた警備室の拳銃。一発発射。弾道は真上」
アレクシスが続ける。
「殺意があれば水平に撃つ。これは威嚇」
チャールズ・ウィットモアが、重く口を開く。
「……拳銃を持ち出したのは犯人だ」
どよめき。
「私は止めなかった」
監督の声は低い。
「レオナルドは限界だった」
アレクシスはゆっくりと告げる。
「犯人は偽の手紙で屋上へ誘導し、拳銃で威嚇し、レオナルドが逃げる性格を知った上で、だまし絵を設置させた」
静寂。
「そして、計画通りレオナルドは逃げた。そして屋上から落ちた」
一歩、前へ。
「これは自殺ではない。逃走を計算に入れた殺人計画だ」
視線がドミニクを射抜く。
「ドミニク・ショウ。あなたが首謀者です」




