第6話 凶器の正体
屋敷の朝。
霧が屋敷を包み込んでいる。
ベルヴェット邸・二階。
ブレイブ、オズワルド、キャロラインの三人は
並んだ部屋の前に立っていた。
ヴィオラの部屋。
マルグリットの部屋。
隣同士
ブレイブ警部補が低く言う。
「偶然か?」
オズワルド
「いや」
首を横に振る。
「“選ばれてる”」
部屋の中へ。
まずはヴィオラの部屋。
オズワルドは壁へ向かう。
ゆっくりと手を滑らせる。
止まる。
額縁
「これだ」
キャロライン
「また……それ?」
オズワルドは額縁を外す。
裏側。
微細な穴
針の先ほどの大きさ。
キャロライン、息を呑む。
「こんな小さい……」
ブレイブも覗き込む。
「貫通しているな」
オズワルドは壁を叩く。
コン、コン。
空洞音
「やっぱりな」
三人は隣の部屋へ移動する。
同じ位置。
同じ高さ。
同じ額縁。
オズワルドが言う。
「繋がってる」
ブレイブ
「壁の中が通路か?」
オズワルド
「いや」
一拍。
「“射線”だ」
沈黙。
キャロライン
「射線……?」
オズワルド、ゆっくり説明する。
「ここから――」
穴を指す。
「針を飛ばす」
「隣の部屋にいる人間を撃つ」
キャロラインの顔が青ざめる。
「そんなこと……」
ブレイブ
「可能だ」
「細い針と圧力があればな」
オズワルド
「しかもこの距離なら」
「ほぼ無音」
キャロライン
「じゃあ……」
オズワルド
「犯人は隣の部屋にいた」
ブレイブ
「密室は成立するな」
オズワルド、さらに続ける。
「針は極細の金属」
「毒は即効性の神経毒」
ブレイブが頷く。
「検視結果とも一致する」
キャロライン
「でも……」
一番の疑問。
「凶器は……?」
沈黙。
部屋の中には何もない。
針も、装置も。
オズワルドが静かに言う。
「いや……回収されてる」
キャロライン
「回収……?」
その瞬間。
彼女の脳裏に浮かぶ。
白い影。
小さな口。
何かを咥えていた。
「……猫」
オズワルド、頷く。
「ああ」
「凶器は撃たれた後」
「すぐに回収される」
「人間の手じゃない」
「もっと小さくて、速い存在」
ブレイブ警部補
「怪人の使い魔か」
静寂。
オズワルドの目が鋭くなる。
「犯人は――」
一拍。
「“使い魔を持つ怪人”だ」
ゆっくりと続ける。
「そして」
「それは“女王蜂”だ」
霧の屋敷。
支配者は、すでに姿を現していた。




