第3話 遺書公開と密室
屋敷の大広間。
重厚な空気が沈んでいる。
長いテーブルの中央。
蝋燭の炎が揺れ、壁の影を歪ませる。
顧問弁護士ヴァン・クロウ(吸血鬼)が前に立つ。
「……皆様」
低く、静かな声。
「昨日、大旦那様アレクサンダー・ベルヴェット様が急死されました」
ざわめき。
キャロラインの指先が震える。
「よって本日、遺書を公開いたします」
封筒が取り出される。
黒い封蝋。
蜂の紋章⚜️
その瞬間。
バンッ!!
廊下の奥から、扉を叩く音。
「開けて!!」
女性の声。
全員が立ち上がる。
エルナが叫ぶ。
「ヴィオラの部屋よ!」
廊下。
足音が響く。
重い扉の前。
内側から鍵がかかっている。
「ヴィオラ!?」
反応はない。
オズワルドがドアノブを試す。
「内鍵だな」
一瞬で判断。
「壊すぞ」
ドンッ!
ドンッ!!
二度目の体当たりで扉が破られる。
部屋の中。
冷たい空気。
そしてコウモリ
バサバサと飛び交う黒い影。
天井、壁、カーテン。
異様な数。
キャロラインが息を呑む。
「なに……これ……」
その中央。
ヴィオラ。
床に倒れている。
動かない。
首元に噛み跡
二つの小さな穴。
血はわずか。
だが。
オズワルドがしゃがみ込む。
指で首筋に触れる。
「……冷たい」
一拍。
「死後、数分」
キャロライン
「そんな……」
オズワルドの視線が動く。
部屋全体を確認。
窓が親指くらい
わずかに開いている。
カーテンが揺れる。
鍵は内側からかかっていた
侵入経路
存在しない
そのとき。
足元を白い影が走る。
スッ――
白猫が窓へ。
窓の隙間から一瞬で外へ飛び出す。
キャロライン
「猫……?」
オズワルドの目が細くなる。
「……今の」
コウモリが一斉に窓から飛び去る。
静寂。
残るのは。
死体と、開いた窓。
キャロライン、震える声。
「密室……だよね……?」
オズワルド、ゆっくり立ち上がる。
「いや」
一拍。
「“密室に見せかけた”可能性がある」
だが。
状況は異様すぎる。
・鍵は内側
・窓は開いている
・コウモリが大量
・噛み跡
・毒死
キャロライン
「噛み跡、吸血鬼……?」
オズワルドは答えない。
ただ、窓を見る。
そして。
小さく呟く。
「犯人は――」
間。
「“使い魔”か?」
だがその目は“人間を疑っていた”。




