第6話 消えた客の正体
薄暗い路地。
怪人喫茶
ナイトレクイエムの裏。
霧が低く漂っている。
ブレイブ警部補が言う。
「リストの一人が見つかった」
その声は低く、重い。
建物の奥。
簡易的な保護室。
そこに“彼”はいた。
■リュカ 怪人(種族不明)
やせ細っている。
目は虚ろ。光を避けるように縮こまっている。
キャロラインが一歩近づく。
「……大丈夫?」
反応はない。
オズワルドがしゃがむ。
目線を合わせる。
「名前は?」
リュカの唇が動く。
「……リュカ」
キャロライン
「ほかには何か覚えてる?」
「……」
沈黙。
リュカの服。
胸元に残っていた“黒ずんだ染み”
がある。
ブレイブが腕を組む。
「まともに話せないのか」
オズワルド
「記憶は?」
リュカは頭を押さえる。
苦しそうに。
「……暗い部屋……」
「……声……」
「……笑ってた……」
体が震える。
キャロラインが思わず手を伸ばす。
「もういい、無理しなくて――」
その瞬間。
リュカがビクッと反応する。
「やめろ!!」
叫び。
部屋の空気が凍る。
「……来るな……」
「……選ばれる……」
オズワルドの目が鋭くなる。
「誰に?」
リュカは答えない。
ただ。
震え続ける。
ブレイブが小さく呟く。
「……拷問でも受けたか」
オズワルドは首を振る。
「違う」
「もっと質が悪い」
キャロライン
「え……?」
オズワルドはゆっくり言う。
「人を“壊す”やり方だ」
視線をリュカに戻す。
「記憶を曖昧にする」
「恐怖だけ残す」
「逃げても証言できない」
キャロラインの顔が青ざめる。
「そんな……」
オズワルドは立ち上がる。
静かに言う。
「失踪者」
「共通点」
「夫婦との接触」
一つずつ指を折る。
「そして」
「戻ってきた“壊れた客”」
振り返る。
「もう十分だろ」
ブレイブ警部補
「何がだ」
オズワルド
「構図だよ」
「見えてきた」
キャロライン
「……どういうこと?」
一拍。
オズワルドは低く言う。
「夫婦は被害者であり加害者だ」
「そして――」
「被害者がいる」
カメラのように視点が引く。
震えるリュカ。
霧の外。誰かが笑った気がした。




