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霧都ヴァル・ロンドリア探偵事件簿ー怪物に戸籍のある街で  作者: 虫松
仮面夫婦

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第3話 朝の惨劇

朝。


霧がまだ薄く残る時間。


ナイトレクイエムは静かに営業していた。


「いらっしゃいませ」


キャロラインが迎える。


扉を開けて入ってきたのは――


オズワルド。


「朝からやってんだな」


席に座る。


「別にお前目当てじゃないからな」


キャロライン、少しむっとする。


「はいはい」


「料理がうまいから来ただけだ」


「それはどうも」


軽口。


だが。


オズワルドはすでにメニューを開いている。


「昨日のステーキ、よかったな」


「今日も同じので」


「かしこまりました」


店内は落ち着いている。


常連客。


そして


奥の席。


あの夫婦。


エドワードとマリア。


朝だというのに、既に座っている。


同じ席。


同じ距離感。


同じ笑顔。


(またいるな)


オズワルドは横目で見る。


料理が運ばれてくる。


肉の香り。


湯気。


「いただきます」


一口。


「……やっぱうまいな」


そのとき。


「キャーーーッ!!」


悲鳴。


店内の空気が一瞬で凍る。


全員の視線が向く。


奥の席。


夫婦。


エドワードが前に崩れている。


マリアは椅子から滑り落ちている。


テーブルの上。


食事。


そして


吐き出された血


赤。


皿の上にも。


床にも。


沈黙。


誰も動けない。


キャロラインが一歩近づく。


「……そんな……」


震える声。


オズワルドは立ち上がる。


ゆっくり近づく。


しゃがみ込む。


観察。


・外傷なし

・争った形跡なし

・椅子もそのまま


指先でテーブルを見る。


皿。


グラス。


「……同時か」


数分後。


警察到着。


扉が乱暴に開く。


ブレイブ・ロケット。


「全員、動くな」


低い声。


一気に現場が締まる。


「現場封鎖」


「関係者はその場にいろ」


ブレイブは遺体を見る。


目が細くなる。


「……争った形跡なし」


「食事中」


「同時に倒れている」


オズワルドが立ち上がる。


少し離れた場所で。


小さく呟く。


「毒殺……」


一拍。


「妙だな」


霧の外。


朝の光が差し込む。


だがこの店には


すでに“影”が落ちていた。


そして事件は動き出す。

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