第8話 事件の解決とその後
静寂。
サーカスの舞台。
全員の視線が、一人に集まっていた。
シルヴィア。
彼女はしばらく沈黙し
やがて、静かに笑った。
「探偵さん……さすがね」
その声には、悔しさではなく。
どこか満足が混じっていた。
ブレイブが一歩前に出る。
「観念しろ」
シルヴィアは肩をすくめる。
「最初から、そのつもりよ」
ゆっくりと語り始める。
「団長アルベルトは――」
「舞台を“支配”していた」
「役者を殴り」
「才能を潰し」
「恐怖で従わせる」
コウモリ男バルトロが目を伏せる。
天使アズリエルは拳を握る。
「芸術は、自由であるべきなのに」
シルヴィアの声が、わずかに震える。
「彼はそれを、鎖に変えた」
一歩、前へ。
「だから壊したの」
「舞台ごと」
静かに言い切る。
「舞台は――」
「誰かを支配するものじゃない」
沈黙。
ブレイブが手を上げる。
「連行しろ」
警官たちが動く。
トーマス。
裏方の団員たち。
そしてシルヴィア。
ブレイブがカルロスを見る。
「お前もだ」
カルロス
「な、なんでだよ!?」
「違法賭博」
「見逃すわけにはいかない」
カルロスは崩れ落ちる。
観客のいないテント。
灯りは消えかけている。
キャロラインがぽつりと言う。
「怖かった……」
少し間を置いて。
「でも……凄い演出だった」
オズワルドは軽く笑う。
「まあな」
天井を見上げる。
「演出は完璧だった」
「だからこそ」
「騙された」
オズワルドはポケットから取り出す。
小さなチェス駒。
指で一つ、弾く。
コトン……
「謎は解けた」
最後の駒を倒す。
「チェックメイトだ」
それから数日後
サーカスは解散した。
華やかな光は消え。
残ったのは裏方たちの恨みと。
歪められた舞台の記憶。
霧が流れる。
テントは静かに解体されていく。
その様子を見て、
オズワルドは呟く
「人は“見たもの”ではなく“信じたもの”を証言する」
霧が流れる街。
星霧探偵事務所。
机の上のチェス盤。
そして一冊のノート。
「弟子の探偵日記」
ページがめくられる。
第二事件 笑うピエロ 解決。
霧都ヴァル・ロンドリア。
そのどこかでまた、新たな謎が生まれる。




