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霧都ヴァル・ロンドリア探偵事件簿ー怪物に戸籍のある街で  作者: 虫松
笑うピエロ

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第4話 再現 、光と影の亡霊

霧都の夜。

再びサーカステント。


観客はいない。

静寂。


だがテント内の舞台だけが、生きている。

ランプの灯り。


機材の影。


霧が薄く入り込み、光を歪めている。


ブレイブ警部補が腕を組む。


「本当にやるのか」


オズワルドはニヤリと笑う。


「やるに決まってるだろ」

「真相に一番近い方法は」


舞台中央へ歩く。


「“再現”だ」


キャロラインが不安そうに言う。


「でも……危なくない?」


オズワルド


「安心しろ」

「今回は“殺し”じゃない」

「“見せるだけ”だ」


■準備

舞台監督シルヴィアが指示を出す。

「照明、準備」

「魔導灯、起動」


低く唸る音。


ブゥゥゥン……


天井の照明が、一斉に淡く光る。


トーマスが装置を操作する。


「魔導カメラワイヤー、固定」


カチッ。


舞台が“整う”。


オズワルド


「いいか」

「事件のときと同じ状況を作る」

「停電」

「その一瞬の“何か”」


ブレイブ警部補


「……始めろ」


■再現実験


暗転。

音が消える。

完全な闇。


キャロラインの息遣いだけが聞こえる。


「暗くて……怖い……」


その瞬間。


“光”が弾ける。


バチッ!!


空中。

浮かび上がる。


巨大なピエロの顔。


いや

“ピエロたち”。


一体じゃない。

二体。

三体。

五体。


笑っている。


同じ顔。

同じ動き。


同時に首を傾げる。


ニィィィ……


キャロライン


「っ……!!」

「なにこれ……!」


ピエロたちは舞台の各所に現れる。


中央。

客席。

天井近く。

通路。


だが

足音はない。

影も、曖昧。


ブレイブ警部補が低く呟く。


「……映像か」


ピエロの一体が手を振る。


もう一体が転ぶ。

もう一体が笑う。

だが。


次の瞬間。


“消える”。

スッ……

何もない。


静寂。


光が戻る。

誰もいない。


キャロラインが震える。


「確かに見えたのに……!」

「そこにいた……!」


オズワルドは静かに言う。


「そうだな」

「“見えた”」


床にしゃがみ、舞台を叩く。


コン、コン。


「でもな」


顔を上げる。


「誰もいない」


ブレイブ警部補


「……どういうことだ」


オズワルドは笑う。


「簡単だよ」


天井を指さす。

無数の魔導照明。


「光だ」

「魔導照明」

「霧と反射を使って――」

「“像”を作ってる」


キャロライン


「じゃあ……あれ全部……」


オズワルド


「幻だ」

「視覚のトリック」


ブレイブ


「つまり」


「観客全員が見たピエロは」


オズワルド


「“存在してないピエロ”だ」


シルヴィアが小さく息を呑む。


キャロライン


「でも……」

「団長は……本当に死んでるよ?」


沈黙。

オズワルド


「そこだ」

「幻は作れる」

「でも――」


ゆっくり言う。


「殺しは現実だ」


オズワルドは立ち上がる。


「つまりこの事件は」

「“幻の中で起きた殺人”」


ブレイブ警部補が目を細める。


「……ふざけた話だ」


オズワルドは笑う。


「最高だろ?」


そして。

一言。


「トリックは――」

「映像と照明を使った視覚の幻覚だ」


外。

霧が揺れる。


その奥でまた、笑う。

ピエロ。

クスクス……

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