↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霧都ヴァル・ロンドリア探偵事件簿ー怪物に戸籍のある街で  作者: 虫松
笑うピエロ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
142/168

第2話 歪む証言

霧の夜。


サーカステントの裏。


ランプの灯りが揺れる中、

関係者が円を描くように座っている。


中央には

拘束されたピエロ役の

カルロス。


「俺じゃない……」


力なく呟く。


ブレイブ警部補が言う。


「順番に聞く」


「時間と場所を正確に言え」


オズワルドは壁にもたれ、


目だけで全員を観察している。


■証言開始


■エレナ(妻)

「午後七時五分ごろ」

「団長室の前で見たわ」

「ピエロが中に入っていった」


■リリス(愛人)

「違うわね」

「七時十分くらいよ」

「私は空中ブランコの支柱の上から見たの」

「下にいたピエロが団長室に向かってた」


■マルコ(副団長)

「七時ちょうどだ」

「舞台袖だな」

「ピエロは団長室から“出てきた”」


■トーマス(機械担当)

「……七時十五分」

「地下の昇降口付近だ」

「ピエロが降りていった」


■コウモリ男 バルトロ

天井から逆さにぶら下がりながら言う。

「七時八分……くらいだ」

「上から見た」

「ピエロは“天井近く”を移動してた」

キャロラインが震える。

「天井って……どうやって……」


■天使 アズリエル

静かに微笑む。

「七時十二分」

「私は“光の中”で見たわ」

「ピエロは舞台中央に立っていた」


その目は、どこか空虚だった。


沈黙


ブレイブ警部補が腕を組む。


「……バラバラだな」


「時間も場所も一致しない」


カルロスが叫ぶ。


「だから言ってるだろ!!」

「俺はその時間――」

「舞台にいた!!」


キャロラインが呟く。


「同じ人を見てるはずなのに……」


オズワルド


「いや」


一歩、前に出る。

「この証言」


指を折る。


「時間がズレてる」

「場所もバラバラ」

「でも――」


ニヤリと笑う。


「一つだけ共通してる」


ブレイブ警部補


「何だ」


オズワルド


「全員が開演前にピエロを見たってことだ」


「なあ、カルロス」


カルロス


「……なんだ」


「お前、団長室に行った時間」


「覚えてるか?」


「開演前だ」


「団長に呼ばれてたんだ」


オズワルド


「その時間――」

「お前、舞台にいなかったか?」


沈黙。


ブレイブ警部補が低く言う。


「記録では、そうなっている」


キャロライン


「え……?」


オズワルドが笑う。


「面白いな」

「全員が“見た”って言ってる」


「でも」

「その時間に、カルロスは舞台にいた」


「つまり――」


ゆっくり振り返る。


「“見たはずの時間”がズレてる」


空気が張り詰める。


ブレイブ警部補

「……誰かが嘘をついている」


オズワルド


「いや」


首を振る。


「違う」

「もっと厄介だ」

「“全員、本気でそう思ってる”」


キャロライン


「じゃあ……どうして……?」


オズワルドは笑う。


「分からない」

「でも一つだけ確かだ」

「この事件」

「普通じゃない」

「誰かが――」


ゆっくりとテント全体を見渡す。


「“全員の認識”を操ってる」


外。

霧が濃くなる。


テントの上。

巨大な布が、風で揺れる。


その一瞬。


また見えた気がした。

“笑うピエロの顔”

クスクス……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。