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霧都ヴァル・ロンドリア探偵事件簿ー怪物に戸籍のある街で  作者: 虫松
人形屋敷の呪い

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第5話 動く人形

夜。

霧がさらに濃くなる。


人形屋敷は、昼とは別の顔を見せていた。


灯りはわずか。


廊下は長く、暗い。


そして


並ぶ 不気味な人形たち。


まるで息を潜めているように。


オズワルドとキャロライン。


その少し後ろにブレイブ。


三人で夜の見回りをしていた。


キャロラインはオズワルドの袖を掴む。


「やっぱり……怖いです」


オズワルドは軽く笑う。


「大丈夫だって」


その時。


カタ……カタ……


音。


三人が止まる。


廊下の奥。


一体の人形が――


ゆっくり歩いている。


ギ……ギ……


キャロライン


「うそ……」


足が震える。


ブレイブの目が鋭くなる。


「……」


オズワルドはじっと見ている。


「……いいね」


キャロライン


「よくないです!」


次の瞬間。


バン!!


窓が揺れる。


全員が振り向く。


ガラス越し。


外。


そこに――


人形の顔。


ぴたりと張り付いている。


キャロライン


「きゃあああ!!」


後ずさる。


しかし。


次の瞬間には消えている。


風だけが吹いている。


さらに。


ギシ……


天井のきしみ。


ブレイブが顔を上げる。


「上か」


その直後。


ドン!!


上から人形が落下。


床に叩きつけられる。


破片が飛び散る。


「危ない!」


オズワルドがキャロラインを引き寄せる。


ギリギリで回避。


静寂。


重い空気。


キャロラインは震える。


「もう……無理です……」


オズワルドは人形の破片を拾う。


じっと見る。


指でなぞる。


「……やっぱり」


立ち上がる。


「幽霊じゃない」


キャロライン


「え……?」


オズワルド


「全部、人間の仕業だ」


ブレイブが低く言う。


「証拠は?」


オズワルドは一瞬黙る。


「まだない」


間。


ブレイブは冷たく言い放つ。


「それじゃ犯人は捕まえられないな」


空気が凍る。


キャロラインも不安そうにオズワルドを見る。


オズワルドは悔しそうに歯を食いしばる。


「……」


ブレイブは続ける。


「現象は見た」


「だが“証明”がない」


「それではただの妄想だ」


オズワルド


「妄想じゃない!」


ブレイブ


「なら示せ」


静かだが重い言葉。


「仕組みと犯人を」


オズワルドは拳を握る。


何も言い返せない。


その時。


廊下の奥。


また音。


カタ……


全員が見る。


人形が。


また一歩。


前に出る。


だが今回は違う。


オズワルドの目が動く。


床。


壁。


天井。


何かを追っている。


「……あれか」


小さく呟く。


ブレイブ


「何だ?」


オズワルド


「いや」


首を振る。


「もうちょいで分かる」


ブレイブはため息をつく。


「曖昧だな」


だが。


オズワルドの目は確実に変わっていた。


遊びではない。


本気の目。


(見えた)


(この事件の謎が)


(もうすぐ解ける)


霧の夜。


人形は動き続ける。


だがその裏で。


真実もまた、動き始めていた。

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