第3話 新人警部補
霧の朝。
人形屋敷の前に――
警察車両が到着する。
重々しい足音。
扉が開く。
現れたのは長身の男。
鋭い目。
灰色のコート。
そして。
わずかに覗く牙。
ブレイブ・ロケット(人狼)
新任の警部補。
ガルム警視の後任として配属された男。
冷たい視線で屋敷を見上げる。
「ここか」
短く呟く。
屋敷の中。
オズワルドとキャロライン。
グレゴール。
そこへブレイブが入ってくる。
床を踏む音が重い。
オズワルドは振り向く。
「誰?」
ブレイブは答えない。
まず周囲を見る。
人形。
窓。
床。
一通り確認してから
ようやく口を開く。
「警察だ」
キャロライン
「警察……」
少し安心した表情。
オズワルドは腕を組む。
「遅くない?」
ブレイブは視線を向ける。
そして。
一瞬で見下すような目になる。
「……なんだお前」
オズワルド
「探偵だけど?」
その瞬間。
ブレイブは鼻で笑う。
「ガキのお前が探偵?」
「冗談だろ」
空気がピリつく。
オズワルドはむっとする。
「ガキじゃないです!」
「弟子です!」
ブレイブは肩をすくめる。
「同じだ」
キャロライン
「ちょっと……」
止めようとするが。
オズワルドは引かない。
「一応言っとくけど」
「この事件、もう半分は見えてるから」
ブレイブの足が止まる。
ゆっくり振り向く。
「ほう」
「言ってみろ」
オズワルドは一瞬詰まる。
「えーっと……それは……」
ブレイブは冷たく言う。
「口だけか」
オズワルド
「違う!」
ブレイブは背を向ける。
「まあいい」
「どうせすぐ事件で泣くだろう」
オズワルドは叫ぶ。
「泣きません!」
ブレイブは止まらない。
そのまま歩きながら言う。
「楽しみにしてる泣き虫、探偵」
沈黙。
キャロラインが小さく言う。
「……大丈夫?」
オズワルドは歯を食いしばる。
「ムカつく……!」
拳を握る。
「絶対見返す」
視線は鋭い。
「この事件」
「俺が解決する」
その頃。
ブレイブは単独で屋敷を調べていた。
床を踏みしめる。
耳を澄ます。
人狼の感覚。
微かな違和感を拾う。
「……」
しゃがむ。
床を指でなぞる。
ほんの僅かな
擦れた跡。
さらに。
天井を見上げる。
「妙だな」
そして呟く。
「人形が動く、か」
その目は冷静だ。
「そんなわけがない」
だが次の瞬間。
カタ……
音。
視線を向ける。
廊下の奥。
人形が一体。
ゆっくりとこちらを向いた。
ブレイブの目が細くなる。
「……ほう」
口元がわずかに歪む。
「いいな」
「面白くなってきた」
同じ屋敷。
同じ事件。
だが。
二人の警察と探偵は
まったく違う場所から真実へ向かっていた。




