エピローグ 霧の朝
戦いの翌朝。
霧都ヴァル・ロンドリア。
霧はいつものように
街を静かに包んでいた。
しかし街の姿は変わっている。
焼けた建物。
崩れた塔。
割れた石畳。
それでも――
人々は歩いていた。
人間。
吸血鬼。
人狼。
魔女。
ゴーレム。
同じ道を。
同じ街を。
新聞報道
街角の新聞売りが叫ぶ。
「号外!号外!」
「霧都大虐殺事件の黒幕逮捕!」
新聞の一面には大きな見出し。
白亜党崩壊
・白亜党首 バルク議員 逮捕
・白亜党幹部議員 多数拘束
・白亜党の私兵部隊 壊滅逮捕
記事には書かれている。
「霧都警察機動隊の活躍により
議員会館突入作戦が成功」
「黒幕の陰謀は未然に阻止された」
そして小さく載っている名前。
ガルム警部補
都市を守った男。
霧都復興
港ではゴーレムが瓦礫を運ぶ。
魔女たちが修復魔法を使う。
人狼警官が交通整理をする。
吸血鬼の職人が壊れた建物を直す。
人間の子供が笑って走る。
街は
ゆっくり
確実に
復興していた。
霧都は何度壊れても
必ず立ち上がる街だった。
■■■
警察本部の会議室。
重い扉が開く。
上官が言う。
「今回の白亜党による霧都内乱騒乱事件」
「機動隊を指揮し」
「ヴァル・ロンドリア都市崩壊を防いだ功績は極めて大きい」
書類が置かれる。
「よって」
「ガルム警部補」
一瞬の沈黙。
「二階級特進」
「警視に任命する」
部屋がざわめく。
機動隊員たちが驚く。
警部を飛び越えた
異例の昇進。
ガルムは腕を組んだまま言う。
「……階級なんてどうでもいい」
窓の外を見る。
霧都。
「守るのは」
「市民だ」
上官が笑う。
「だから昇進したんだ」
机の上に新しい階級章。
【警視 ガルム】
窓の外。
霧都が見える。
守るべき街。
星霧探偵社
小さな事務所。
ドアの看板。
中では
オズワルドが書類を整理している。
「師匠!依頼が一気に三件も来ました!」
「人魚姫が泡になって姫が駆け落ちする事件」
「狼男が犬になってしまった事件」
「吸血鬼が貧血で大量病院送り事件」
「全部、おかしな怪異の事件です!」
ミレイアが苦笑する。
「この街らしいですね」
机の奥。
アレクシス・グレイヴン。
椅子に座りながら紅茶を飲んでいる。
窓の外には
霧。
ミレイアが言う。
「ドクターハロルドと白亜党たちの大変な事件が終わりましたね」
アレクシスは霧を見つめる。
静かに言う。
「いや」
「終わらない」
「この街は」
「人間と怪物の街だ」
「偏見と争いは消えない」
少し間を置く。
そして言う。
「だが」
「必ず一つの光、真実の光を見つける」
「どんな闇でも」
「論理は光になる」
ミレイアが微笑む。
「さすが師匠!全部カッコイイ!」
オズワルドが笑う。
星霧探偵社の新しい一日が始まる。
霧の中
街の外れ。
古い研究所跡地。
誰もいないはずの場所。
霧が流れる。
その中から
影が現れる。
白衣。
狂気の笑み。
ドクター・ハロルド。
彼は静かに笑う。
「素晴らしい」
「霧の都の歪んだマイナスの感情は」
「やはり面白い」
彼の手には黒い碑の欠片。
黒い石は怪しく紅く光る。
「名探偵アレクシス君、実験は」
「まだまだ始まったばかりだ」
霧の中でハロルドの姿は消える。
【最後のナレーション】
霧都ヴァル・ロンドリア。
怪物に戸籍がある街。
人間と怪物が共に生きる街。
霧の向こうでは
今日も
新しい事件が生まれている。
そして、それを追う者たちがいる。
星霧探偵社。
その探偵の事件簿はまだ終わらない。
霧都ヴァル・ロンドリア探偵事件簿
怪物に戸籍のある街で
【 THE END 】
おまけ、後日行った。
【ガルム警視の昇進お祝い写真】
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虫松から皆様へ感謝の言葉
霧の街 ヴァル・ロンドリア の物語を、ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。
人間と怪物が同じ街で生きる世界。
憎しみも、恐怖も、そして希望もすべてが入り混じる、この霧都の物語を楽しんでもらえたなら、とても嬉しいです。
この物語は終わりましたが、星霧探偵社の事件簿はまだ終わりません。
霧の向こうには、まだ見ぬ怪異、陰謀、そして新しい謎が待っています。
もしこの物語が少しでも面白いと思っていただけたなら、また次の事件でお会いしましょう。
霧都ヴァル・ロンドリアより。
星霧探偵社より感謝をこめて。




