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「ふわぁ…さて、つぎつぎ…。」
最初にいた教室を後にした秋は欠伸で濡れた目を擦りながら廊下をうろついていた。
「ってか、これ人探すのも面倒ッ……!?」
廊下を徘徊し始めた秋は背後からの殺気を感じ、前に飛び退き、振り向きざまに拳銃を構えた。
瞬間、秋の向けた拳銃と刃が擦れあう音が廊下に響いた。
「クッ…!」
秋は衝撃で後ろへ飛ばされたが、何とか体制を立て直した。
「…かわした奴は初めてだ。」
両手に鉤爪をはめた男子生徒‐香種千智‐は落ちかけたメガネを手首で器用に押し上げた。
「俺の後ろ取るなんざ百年早ぇよ眼鏡…。」
秋は先ほどとは打って変わった殺気だった雰囲気に息を飲んだ。
「前も後ろも関係ない。どうせ切り刻まれるのだから。」
切れ長の瞳をギラリと光らせながら秋の姿をハッキリととらえた千智は音もしない足取りで秋との間合いを一気に詰めた。
「クソッ…!」
秋は両手の拳銃で受け身の体制を取った。
「拳銃は打たなければただの鈍だぞ。俺の爪でスクラップにしてやる。」
「やれるもんならやってみな、それより早くテメェの眉間にぶち込んでやるよ。」
二人の武器がガチンッと金属音を鳴らして混じり合った。そのまま互いに譲ることなく武器同士が擦れ合う音が響いた。
「はぁーい!いっただきぃー!!!」
突然、明るい声色の声が響き、二人の丁度真ん中に銀色に光る斧が振り下ろされた。
瞬間、二人は後ろへ仰け反り距離を離した。
「あるぇー?二人ともまとめて真っ二つにしようと思ったのに。スゲェ!避けるとかハンパねぇ!!」
振り下ろした斧を肩に担ぎながら頭を掻く金髪の男子生徒‐泉蛾霧斗‐は目を輝かせ仰け反った二人を交互に見つめた。
「…なんか面倒そうなのが出てきた。」
秋は心底嫌そうな顔を霧斗に向けた。
「いやぁー!さっすが香種千智と帝秋!俺が注目してる二人にこんな早く会えるとは!」
「…は?お前、なんで俺の名前…」
「知ってんぜ?この学校の人間の基礎データは把握済み!中でもお前らはかなり要チェックしてたからなー!あ、俺泉蛾霧斗。よろしくー!」
霧斗はニッと白い歯を見せて笑った。
「あ、あぁ…よろしく。」
その場にそぐわない雰囲気にたじろく秋に対し、終始面倒くさそうに眉間にしわを寄せて険しい顔をする千智。
「あるぇ?ちぃさんシカトー?何?もしかしてコミュ症?ヒッキー?ヤッベうける!」
「ッ…貴様ッ!!」
ケラケラとお腹を抱えて笑う霧斗に千智は右手の鉤爪を突き立てた。
「ひー!不意打ち卑怯―!」
両手を上げて飛び退いた霧斗はすぐに体制を立て直すると、ギュッと斧を握り直し、千智の頭上に振り下ろした。
「チッ…!」
一瞬で頭上の斧をかわした千智は舌打ちをして霧斗との間合いを大きく離した。
「あちゃー、かわされた。さっすがちぃさん!悔しいー!」
床に深く突き刺さった斧を抜きながら自嘲的に笑い地団太を踏む霧斗。
「次は刻む。そこの鈍持ちと一緒にな。」
千智は右の鉤爪を霧斗に、左の鉤爪を秋に向けた。
「誰が鈍持ちだ。その鈍に脳天ぶち抜かれてぇのか?」
秋はピクリと眉を動かすと、右手の銃口を千智の頭に合わせた。
「いやぁー俺もさすがに刻まれたくないなー。代わりに二人そろって真っ二つになってほしいなーなんてー!」
霧斗は相変わらずニコニコと笑顔を絶やさず、大きな斧を肩に担いだ。




