13の日
司書のカツイさんはオレに「5つの材料『暗く湿った大地に生まれる白い粉、木々の根本に眠る白い塊、大地の中に城を築きその中に蠢く白き虫、濡れた大地や木々をゆっくりと渡り歩く殻をもった柔らかい蟲、そして湿った大地に広がる緑の敷物を食べるものの体から出てくる塊』の内、初めの2つは菌類、3つ目はシロアリ、4つ目は陸生の貝類ではないかと思います。キビタキさんは自宅の端末で『菌類』を検索して、その生息地を調べてください。私はシロアリの生息地と採取法、陸生の貝類について調べます。紙の本と貴方のお母さんの残した資料も参考にしながらお互い手分けして頑張りましょう」と言ってくれた。
カツイさん曰く「5つ目は現時点はまだ特定が難しいので、出来ることから始めよう」とのことだった。
かなり明るくなった月明かりに照らされながらオレは家に戻った。
供給電力の残量にはまだ余裕があったので、すぐに自室の検索端末を起動して「白い菌類」について調べた。
菌類には「カビ」と「キノコ」そして単細胞の菌類がいるのは学校の授業で知っていたが「白い粉」は「カビ」「白い塊」は「キノコ」の菌糸体か菌床、土の中にできる白トリュフという珍しいキノコの可能性が高いと分かった。白トリュフは「幻のキノコ」と呼ばれていて見つけるのは困難らしい。もし、2つ目の材料が白トリュフならばアウトだ。オレはもう一度情報を確認するため、検索端末の電源を切り、リード端末を起動した。
旅人は「白い塊」を4番目、「白い粉」を最後に森の中で手に入れたと書いてあった。そして、お袋のメモ書きには「白い粉は木の幹や落ち葉の上、土の上に広がる綿埃」「白い塊は土の中で芽を出す準備をしている」と記されている。最初に読んだときは何のことだか分からなかったが『菌類』の説明だと思って読むとイメージできる。
検索データと照らし合わせると「白い粉」は「白いカビ」、「白い塊」は「キノコの菌糸体か菌床」の可能性が高いと思った。オレはリード端末にメモ書きを挿入して、それらの詳しい生息地を再び検索端末で調べた。
翌日、13の日になった。
月は明るさを増し、少しだけ眠たそうな形をしている。
少し薄暗いが、月明かりだけで十分なので街灯は消えている。街路にはたくさんの影がうまれていた。
オレは学校に急いだ。始業前に図書室に寄ってカツイさんの姿を確認すると「放課後に来ます」と告げた。
授業が終わるとオレは小刻みな早歩きで図書室に向かった。
カウンターには生徒が1人いて検索端末を操作していたが、カツイさんが左手でカウンターの反対側を指したのでオレは生徒の後ろを通りすぎてカウンターの奥に進んだ。カツイさんが「成果はあがりましたか?」と聞いてきたのでオレは頷いてカバンの中からリード端末を取り出し、昨日のメモ書きを表示した。彼女はそれに目を通すと「情報を共有しましょう」と言ってオレのリード端末を持って奥の部屋に消えた。
検索端末を操作していた生徒はどうやら目当ての本が見つかったらしく書架に移動して本を取り出し、閲覧席でリード端末にデータチップを差し込んでいた。数分してカツイさんが戻って来た。
オレにリード端末を返すと「私が調べた情報もコピーしてあります。4つ目の陸生の貝類は『カタツムリ』だと思われます。5つ目は『緑の敷物』が指すものが『コケ植物』なのか『シダ植物』なのか『種子植物』なのか分かりません。そこで司書仲間の友人とアカデミアにいる友人に相談したいと思っているのですが『紙の本』のことも併せて話してもよいですか?」と言った。
オレは迷わずに「はい、お願いします。オレには、いや僕たちには時間があまり無いと思います。だから力になってくれる人は多ければ多いほど良いと思います」と答えた。
彼女は「では相談してみます。進展があれば端末に連絡します。あなたは『本』を読み返して、なにか新しく気付いた事あればメモしておいてください」と優しくオレを勇気づけるようにオレを送り出した。
もう少し彼女と話していたかったが、心の中で「よし」と気合を入れて図書室を後にした。
あと2日で15の日がやって来る。




