木々の魔法と冒険者の話(前編)
1・始まり
大地には森と湖と人がいた。
人は森と湖から食べ物を分けてもらっていた。
ある日、人は別の人に出会い、共に暮らすようになった。
共に暮らし始めた人は、だんだんと増えていった。
すると、森と湖から分け与えられていた食べ物だけでは足りなくなってしまった。
人は道具を作り、森と湖に住む他の生き物を捕まえて食べるようになった。
他の生き物たちは人に食べられて、姿を消した。
また、食べ物が足りなくなった。
人は道具を使って、食べ物を与えてくれない森の木々を倒していった。
森にはところどころ、隙間が生まれた。
その隙間に人は食べ物の種を植えた。
だが、食べ物は急には増えなかった。
人はいつもお腹をすかしていた。だから、森から与えられた食べ物以外のモノを食べてみた。毒のあるものや美味しくないものがほとんどだったが甘くておいしい草の種を見つけた。
その草は森の外れの日当たりのよい場所に生えていた。
人はその草の種をもっと食べたいと思い、森の外れの方から木々をどんどん倒していった。日当たりが良くなると草はどんどん成長して種がたくさんできた。
草の種のおかげで、人はまただんだんと増えていった。反対に、森の木々はだんだんと減っていった。
そして、森は無くなり、何本かの木だけが残った。
残った木は自分を守り森を復活させるために花粉と木の実に魔法をかけた。
花粉を吸い込んだり木の実を食べた人は足元から徐々に硬くなり全身が木のようになった。
そして人は動かなくなり、もう、森の木を倒す事も無くなった。
しばらくして、動かなくなった人の頭や手の先からはキレイな緑色の葉っぱが生まれた。
大地から人が姿を消し、森と湖が残った。
2・冒険者
長い時が過ぎた。森の木々は元が人だったのかどうかさえわからなくなっていた。
森に旅人が訪れた。
旅人は大きな荷物を背負い、歩いてやって来た。
旅人は湖のほとりで立ち止まると手のひらで水をすくい口に含んだ。しばらくしてからその水をごくりと飲み込むと腰の水袋を手に取り、湖の水を汲んだ。それから、森の外れまでやってきて落ちている小枝と倒木のカケラを拾い集め、火を起こした。
炎が落ち着くと荷物の中から金属製の器と棒を取り出した。棒は3本が金属製の紐でまとめられており、旅人はそれを開いて炎の上に立てた。器に水袋から水を注ぎ、開いた棒の上に置いた。
旅人は荷物の中から袋を取り出し、中に入っている丸い植物の種をふたつかみ器の中に入れた。
しばらくすると器の水は湯に変わり植物の種は柔らかく膨らんでいった。
旅人は別の袋を取り出し、乾燥した生き物の肉を器に入れた。旅人は乾燥した生き物の肉が解けた頃合いを見計らって、器を炎から外した。
別の袋から木製のさじを取り出すとそれを使って器から直接、膨らんだ植物の種と柔らかく解けた生き物の肉が混ざった良い香りがするものを食べ始めた。
食事が終わると旅人は器とさじを湖の水で洗い、器に再び水を入れて湯を沸かした。
湯が沸くとまた、荷物の中から別の袋を取り出し、良い香りがする粉を湯の中に入れた。
先ほどとは違う良い香りが辺りに拡がった。
良い香りのする湯を飲み干すと旅人は全ての道具を片付けて、また大きな荷物を背負い森の中に入っていった。
森の中は、木々が生い茂り月明かりもまばらにしか入ってこれず、暗かった。
旅人はちょうどよい木を見つけると荷物を置き、中から布を取り出し敷いた。
そして横になった。荷物の端に頭を乗せ目を閉じるとすぐに眠りに落ちた…
「助けてください…助けてください…お願いです。声が聞こえたのなら、どうか私を助けてください…お願いです」
(続く…)




