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4の日

キューブ食を食べ終えるとオレは出かける支度(したく)を始めた。


 今日は4の日で4日前の太陽の日の熱がいくらかは残っていて寒さは凍えるほどではないが、月はまだか細く照明に電力を回している分、暖房は期待できない。ヒートウェアと発電シューズを身に着けてバッテリーパックバックに接続する。 


 大災害の時、オレは8歳だった。


 電力の自由売買は禁止され、割当制に変わった。交通機関も停止し、移動手段はモーター無しの純粋な自転車と徒歩になった。各家庭では自転車にストレイジパッテリー(蓄電池)をつないでオレも妹も暇さえあれば漕いで発電させられた。ストレイジバッテリーは小型化が進み、今では重量も1㎏ほどでカバンに収まるようになった。そして振動で発電する装置を組み込んだ発電シューズが政府から支給され街は少しだけ温かく、少しだけ明るくなった。


 だが、オレの街でもアレが始まった。


 ニュース映像で知ってはいたが目の当たりにすると純粋に怖かった。

 学校は休校になり出歩く人は減り、あらゆる店も休業。そのせいで食事もキューブ食中心になった。「まだ、原因は特定できていないが、感染症ではない」と政府から発表があったにも関わらずパニックは数カ月も続いて、学校が再開されたのは半年もたったあとだった。

 その間、皮肉にも家や硬化した人間が燃やされ街は明るくなった…


 同級生の何人かは固まったが仲のいいハルとリョウ、そしてオレが好きなササキさんは無事だった。オレたちは15歳になり小級校から中級校に進学した。

 あれから3年…ハルもリョウもササキさんも硬化して動かなくなった。お袋もユナもだ。3カ月前にお袋が固まってからオレはひとりぼっちだ。家族を失ったオレは校内のシェルターで共同生活を勧められたが固まったままの家族のことが心配で断った。


 学校への道を歩きながらオレはそんなことを思い出していた。


 今日は週に3回の登校日だ。ついでに図書室に行って「本」を探さなくては…


 題名は分からないけど、きっと「木変病」関連に違いない。それだけは確信があった。オレにも人類にも多分あまり時間は残されてない。「本」を探してどうなるのかは知らないけど何度も夢で声が聞こえるのには何か意味があるとしか思えない。いや、そう思いたいだけなのかもしれないが今日、オレは行動すると決意したんだ。


 授業が終わるとオレはすぐに図書室に行った。


 入口で司書に「本を探したいんですが」と告げるとカウンターの上にある検索端末を使うように指示された。電源ボタンを押すと端末はゆっくりと起動し『タイトル』『ジャンル』の二つの項目が現れた。画面上の『ジャンル』に触れると『入力してください』という指示が現れたので『木変病』と入力した…

 足踏みしながら待っていると1分ほどで『4Hの書架です』という表示が現れた。司書に「4Hの書架はどの辺ですか?」と尋ねたら「4列ある書架の一番右側の列の5番目です」と教えられた。「ありがとうございます」と言って歩き出そうとしたオレに司書は「リード端末は持っていますか?」と聞いてきた。「いえ、今は持っていません」と答えると「これを使ってください。退出するときに返却してくださいね」と言って端末を貸してくれた。


 端末を受け取るとオレは足早に「4H」の書架に向かった。

 自然科学に関する本が並んでる書架だった。8段あるうちの3段目の途中から4段目が「木変病」関連のものだった。50冊以上はあった。


 『木変病』『木変病─その症状』『最新・木変病とは』『木変病講座』『徹底図解・木変病』『木変病─その傾向と対策』『すぐわかる木変病』『チャート式木変病』『木変病全史』『木変病─わたしが固まるまで…』『病理研究・木変病』『燃やしてはいけない─木変病患者の声』『明日から使える木変病予防』…


 あの声が聞こえないかと待ったが何も聞こえなかったので『木片病』を書架から取り出しパッケージを開けてデータチップをリード端末に差し込んだ。

 目次が現れたので第1章をクリックして一応読んだがほとんどが知っている内容ですぐにスキップして気になる項目に移ったが驚くようなことは書いてはなかった…1時間ほどで端末のバッテリーランプが点滅し始めたので背負っているバックパックのコードを(つな)いで電気を供給した。


 閉校時間になるまでオレは書架の本を読んだがどれもあの声のいう「本」ではないようだった。


 翌日、翌々日と、市民図書館、卒業した初級校の図書室にも行ってみたが「本」は見つからなかった。


 7の日、久しぶりに、オレはまたよろめきながら荒野を歩いていた。

 頭の中では、もうダメだ、もう無理だ…という疲労からくるオレの弱った精神が誰かからの(ねぎら)いの言葉を求めて渦を巻いていた。


 寂しさと疲れから歩みを止めようとした瞬間、


「探しなさい、本を探しなさい」

「本はお前のよく知っている場所にあるから、諦めないで」

 あの声が聞こえた。いや、探したんだよ。でも、見つけられないんだよ、と呟くと


「探しなさい、本を探しなさい」

「本はお前のよく知っている場所にあるから、諦めないで探しなさい」

「そして、ページをめくるのです。本はお前に道を示してくれます。1ページ毎に道を示してくれます。だから、諦めないで探しなさい。本を探しなさい」




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